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2019.04.14

響ワタル『琉球のユウナ』第3巻 ややこしい琉球の、ややこしい人間関係


 15世紀の琉球、後に伝説の王となる尚真王・真加戸の若き日を題材に、不可思議な力を持つ朱色の髪の少女・ユウナの成長を描く『琉球のユウナ』の第3巻であります。互いに惹かれ合いながらも、何かと邪魔が入るユウナと真加戸の前に現れた新たなるキャラクターとは、そしてユウナの想いの行方は……

 その力のために忌避されてきた自分を受け入れてくれた真加戸に思慕の念を抱くユウナと、若き王としての孤独感を受け止めてくれたユウナに惹かれる真加戸と――ほとんど両思い状態の二人の前に現れた思わぬ障害。
 それは、真加戸の父である第二尚氏の初代王によって王位を簒奪された、先代王家・第一尚氏の生き残りを名乗る男・ティダでありました。

 ユウナと同じ、いや彼女を遙かに上回る力を持つ謎の男・白澤とともに、第二尚氏への復讐を企むティダの手に落ちたユウナ。決して悪人ではないにもかかわらず、しかし真加戸とは決して相容れないティダを前にして、彼女の心は千千に乱れることになります。

 ティダの手からは、真加戸とシーサーたちの奮闘によって救い出されたユウナですが――しかし相変わらずコミュ障気味の彼女は、妙に意識してしまって真加戸との間もぎこちなくなるばかり。
 そんなところに、真加戸の許嫁だという破天荒な先王の娘・居仁が登場し、いよいよますますユウナの気まずさは増すことになります。

 そんな中で明らかになる琉球の聖地・琉球開闢七御嶽の異変。御嶽の力が失われたことは、すなわち王家にその資格がないとされかねない状況で、御嶽のことを調べようとするユウナは、思わぬ形でティダと再会することに……


 (薩摩に攻められるまでは)平和な王国というイメージがあるものの、決してそんなことはない琉球王国。
 真加戸が王の座を次いだ第二尚氏は、第一尚氏の王位を簒奪したものであり、そして真加戸自身、先王であった叔父を結果として追い落とす形で王となったものであり――古今東西を問わず、何処の国でも変わらぬ、権力を巡る争いがそこにあります。

 そしてそんな第二尚氏の王国も決して一枚岩ではなく、なおも王に服さぬ諸侯たちの存在が――と、これはいずれもこれまでの物語で描かれてきたことではありますが、いずれも若い二人の微笑ましさとは対極にあるような、血なまぐさく生々しい状況であることは間違いありません。
 そしてその状況を象徴するように、第二尚氏の真加戸、第一尚氏のティダに加えて真加戸に追われた先王の娘・居仁まで登場して――と、この巻ではそんな琉球のややこしい状況が、そのまま人間関係に落とし込まれたような展開が描かれることになります。

 この辺りのシチュエーションは、よく考えてみれば(韓流・華流のドラマではお馴染みの)歴史ロマンスの定番中の定番であります。
 しかし本作においては、純情すぎる、そして不安定な力を持ったユウナを中心に置くことで、不思議なバランス感を生み出しているのが面白いところでしょう。

 とはいえ、そんな状況の中でユウナに何ができるのか――というところで、琉球開闢七御嶽の存在が描かれるのもまた面白い。少年漫画であれば、一カ所ずつ巡って番人を倒していく展開になりそうですが、もちろんそうなるはずもなく、本作では思わぬ形でユウナと絡んでいくことになるのですが……


 この巻から登場する居仁も、単純な恋敵などではなく、むしろ真加戸を実力でぶちのめして自由になろうとする男前だったり、琉球音楽史上伝説の人物・赤犬子が思わぬ形で登場したりと、新キャラクターたちの造形も楽しい本作『琉球のユウナ』。
 決して馴染み深い題材というわけではありませんが、それだけに、このややこしい状況を、如何にユウナと真加戸が乗り越えるのかが楽しみになる――そんな物語であります。


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