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2019.04.24

『どろろ』 第十五話「地獄変の巻」

 一夜明け、百鬼丸が鯖目を見張る間に村に聞き込みに出かけるどろろ。しかし村の倉に忍び込んだどろろは村人に捕らえられ、幼虫たちの犇めく地下に落とされてしまう。一方、この村を守るために鬼神を受け入れたという鯖目に対し怒りを爆発させた百鬼丸は、襲いかかるマイマイオンバに挑むが……

 一夜が明けて、お互い何事もなかったかのように朝餉の膳を囲むどろろ・百鬼丸と鯖目。鯖目を見張るという百鬼丸を残し、村に聞き込みに出かけたどろろは、これまでに登場した貧しく殺伐とした村とは正反対の、物だけでなく心も豊かな――ちょっと過剰なくらいに和気藹々と暮らす――人々の姿でした。
 見ず知らずの自分にまで団子を振る舞ってくれる老婆に感心するどろろですが、しかしあの廃寺について尋ねた途端に老婆の態度はよそよそしくなり、周囲の村人たちも剣呑な視線を向けてくるようになります。そんな中で更に奧に足を踏み入れたどろろは、村はずれの林の中に蔵を見つけて忍び込むのでした。

 そこに収められていたのは米俵(さりげなくルパン三世のようなことを言うどろろ)だけかと思いきや、床に隠し扉を見つけてその中を覗き込んだどろろ。その彼を待ち構えていた村人たちは下に突き落とし、閉じ込めてしまうのでした。そして闇の中に取り残されたどろろの周囲に無数に光る、あの巨大な幼虫たちの赤い目。襲いかかる幼虫たちから必死に逃げ出すどろろですが――しかしついに追い詰められて絶体絶命のその時、妖しげな光とともに現れたのは――あの妖怪小僧!
 どろろは自分に優しくしてくれたから助けるという妖怪小僧の頭が割れると、そこから飛び出したのは、幾人もの子供の姿をした光。幼虫たちを抑えるその光の一人を通じて、どろろはあの寺で起きた出来事を知ることになります。尼僧は鯖目によって殺された末に寺は焼かれ、そしてマイマイオンバの餌にされた子供たち。無惨な過去に涙するどろろは、やけに説明口調で語る子供の霊に導かれて、地下からの出口に向かうのでした。

 一方、館を出て村を見下ろす高台に向かった鯖目を追う百鬼丸。彼を待ち受けていた鯖目は自分のことを語り出します。祖先が代々守ってきたこの地に生まれ、今に至るまで、この村の中で生きてきた鯖目にとってはこの村が全てであること。しかし戦乱の中で落ち武者や獣たちに荒らされ、村が無惨な状態となったこと。そして村に現れたマイマイオンバの言葉に従い、彼女とその眷属が村に居着くことを許し、外敵は彼女たちの餌食となり、村は平和と豊かさを取り戻したことを(そしてマイマイオンバと結ばれたことを)。
 そして村を守るためと、羽化したばかりのマイマイオンバの眷属を百鬼丸にけしかける鯖目。しかし鬼神に縋り周囲を犠牲にして生きる鯖目の姿が、醍醐景光や多宝丸、母の姿と重なり、思い切りトラウマを刺激された百鬼丸の怒りが爆発します。次々と眷属を叩き斬る百鬼丸は、邪魔だと鯖目を山から蹴り落とし、自分を捕らえて飛び上がったマイマイオンバ(の眷属?)にも斬りつけるのですが――百鬼丸を落として飛び去ったその一匹が、夕刻迫る中、櫓の上で見張る村人の松明に直撃し、櫓は大炎上。そのままよくわからないくらいの勢い(どろろが油の壺をひっくり返しておいたせい、ではないか……)で村に火は燃え移っていくのでした。そして業火の中に村の繁栄が消え去っていく中、呆然と立ち尽くす鯖目の前で、あれほど和気藹々としていた村人たちは醜い争いを始めるのでした。

 そんな村を置いて、どろろが子供の霊から聞いたマイマイオンバの居所――湖に単身向かう百鬼丸。水中から出現し、自分を掴んで飛び上がったマイマイオンバに対し、百鬼丸は壊れた自分の片足に仕込んだ油の袋から放った油に火をつけ、マイマイオンバを焼き払うのでした。
 そして百鬼丸は背骨を取り戻すのですが――しかしその代償に焼け落ちた村の惨状に心を痛め、自分たちのせいではないかと悩むどろろと、関係ないと言い放つ百鬼丸。そんな百鬼丸と文字通り距離を置いてしまったどろろの前には、あのイタチが現れます。どろろの持つ宝の地図を見せろと言いながら……


 子供たちを生贄にして自分たちの繁栄を望む村と、その繁栄が失われた途端に本性を剥き出しにして争う人々。まさに「地獄変」と呼ぶに相応しいものが描かれた今回ですが――しかし結局プチ醍醐景光、プチ醍醐領が描かれただけという印象がないでもありません。
 もちろん、醍醐領では状況を客観的に見れなかった二人が、同様の場所である鯖目の村を訪れその顛末を目にすることで、改めて百鬼丸の所業の是非を問うという意味はあるのですが――その分、鯖目とマイマイオンバの(異常な)関係性がスルーされてしまったのはちょっと惜しいな、という気がします。

 また、鬼神に子供たちを生贄にした村人たちに怒っていたと思ったら、その鬼神を滅ぼしたことで村をも滅ぼしてしまった百鬼丸に怒るどろろも、何だかすっきりしないところであります。これはこれで非常に人間らしいといえばその通りなのですが……


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