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2019.04.25

さいとうちほ『輝夜伝』第2巻 月詠とかぐや、二人の少女の意思のゆくえ

 かぐや姫伝説を巡り、様々な人々の思惑が絡み合う『輝夜伝』の第2巻では、いよいよかぐや姫が帝のもとに入内。かぐや姫から特に警護のために指名された月詠は、様々な危険に晒されることになります。そしてかぐや姫が語る、驚愕の真実とは……

 謎の「血の十五夜」事件で兄を喪い、真相を知るために男を装い、帝を守る滝口の武者の見習いとなった少女・月詠。彼女が女だと知る滝口の先輩・大神ととも事件の謎を追う月詠は、都で話題のかぐや姫の入内のために、姫のもとに赴くことになります。
 そして自分を求めるのであれば天の羽衣が欲しいと語るかぐや姫を満足させるため、帝の命で、羽衣を探し求めることになった滝口たち。月詠もその中で奔走するのですが、そこに謎の西面の武者・梟が接近してきて……


 「血の十五夜」の謎と、かぐや姫の謎と――二つの謎が織りなす物語である本作。その待望の続刊であるこの第2巻では、前者はひとまず置いて、かぐや姫を巡る物語が展開していくことになります。
 その絶世の美で世の男たちを引きつけながらも決して靡かず、帝に対しても不遜とすらいえる態度を見せるかぐや姫。彼女はしかし、瞬間移動能力を持ち、そして月詠と共鳴して体から光を放つなど、常人とは思えぬ異能の持ち主であります。

 果たして彼女は何者なのか、果たして伝説のとおり天から来たのか――それはまだわかりませんが、伝説とは大きく異なるのは、単に求婚者を阻むだけでなく、一人の人間として自分の意志をはっきりと示すことでしょう。
 帝であれ上皇であれ決して折れず、不敵なまでの自由奔放さを見せる。そんな彼女の素顔は、帝との思わぬ因縁の中でも描かれるのですが――しかし今のところ彼女に最も近い場所にいるのは、月詠であります。

 上で何度か述べたように、かぐや姫とは不思議な共鳴現象を起こした月詠。それ以外にも、不可思議な共通点を持つ月詠のことを、かぐや姫は自分と同類と呼びます。
 なるほど、その名前をはじめとして、月とは不思議な因縁を持つ月詠。正直なところ、本人が登場するまでは、彼女こそがかぐや姫なのでは、という印象もあっただけに、それも頷けるところではあります。

 しかしかぐや姫とは(おそらく)異なるのは、月詠が兄や師から十五夜の月を見ることを禁じられていること。
 月を見上げて涙をこぼしたという伝説のかぐや姫とはむしろ正反対の姿ですが――それは果たして何故なのか、それがこの巻においてついに描かれることになります。

 そしてそんな彼女につきまとい――いやむしろ、彼女を見守るような行動を取るのは、帝と対立する怪人・治天の君こと上皇の忠実な配下と思われた仮面の男・梟。
 あたかも月詠の正体を知り、そして彼女を大切に想っているかにかに見えるその言動からは、やはりその正体は――と想わされるのですが、それはまだ早計と言うべきかもしれません。

 かぐや姫、月詠、治天の君、そして梟と、本作はまだまだ正体不明の人物だらけなのですから……


 そんな非常にシリアスな物語が展開していく一方で、月詠と梟と大神の関係が、端から見ると男が男を取り合ってるように見えたり(そして妙に理解のある大神の親友の凄王)、かぐや姫の愛犬・太郎丸が可愛いらしい上に大活躍したり……
 と、緩急の付け具合も非常に楽しい本作。先に述べたようにかぐや姫が、そしてもちろん月詠が、謎の渦中にありながらも決して流されない、強い意志を持った女性であるのも好感が持てます。

 しかしそんな月詠も、自分自身に秘められた秘密を知った時、どうなるのか――いよいよ先が気になる物語であります。


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