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2019.04.11

『どろろ』 第十三話「白面不動の巻」

 醍醐領を離れ、妖怪狩りの旅を続ける百鬼丸とどろろ。滝の裏にそびえ立つ巨大な不動明王像の近くで、おかかという女の家に厄介になった二人だが、どろろは彼女に母の匂いを感じる。しかし彼女は二人に薬を盛ると、百鬼丸の顔を不動明王――顔を持たない妖怪・白面不動に捧げようとするのだが……

 滝の裏に彫られた巨大な不動明王像の下に、一人の女によって引きずられていく男。抵抗空しく像の下に引き据えられた男に対し、像が手にした巨大な剣が動き出し、振り下ろされると、哀れ男の顔のみがそぎ落とされて……
 と、そんな惨劇も知らずに今日も旅を続ける百鬼丸とどろろ。鬼神・九尾を倒したにもかかわらず体の一部が戻ってこなかったのはともかく、実の親兄弟とのあまりに酷い出会いと別れは、百鬼丸の心を深く傷つけたか、百鬼丸はこれまで以上に妖怪との戦いに没頭している様子であります。そんな彼の姿に心を痛めたどろろは、彼を温泉に連れて行こうとするのですが――その途中、滝の近くの小屋で出会ったのは、そこに住むという、おかかという女性であります。

 滝にやってくる行者たちの世話をして暮らしているというおかかに食事を振る舞われ、二人はこの滝にまつわる話を聞かされることになります。かつて腕は良かったものの世に容れられず、何とか世の人を唸らせる不動明王像を彫ろうと思い定め、滝の裏に不動像を彫ったという仏師。しかし仏師はどうしてもその顔を満足いくように彫ることができず、失意のうちに亡くなったというのです。
 そんな恐ろしくも哀しい話を聞かされながらも、おかかの姿形や声に、亡き母の姿を感じてしまったどろろは、彼女をおっかちゃんと呼んで甘えるのですが……

 しかし食事の中に入れられていた薬によって眠りこけているうちに、おかかに縛り上げられ、不動の下に引きずられていく百鬼丸。縛られなかったどろろは、遅れて意識を取り戻すと、よろめきながらも二人を追うことになります。そして不動の下でようやく追いついたどろろに、真実を語るおかか。実は彼女は、妖怪が取り付いた不動像――白面不動によって蘇らされた仏師その人。見る相手によって姿を変える彼女は、白面不動に顔を与えるため犠牲者を連れてきていたのです。
 衝撃を受けながらも、おかかのことを止め、百鬼丸を救おうとするどろろ。その間に何とか戒めから抜け出した百鬼丸は、白面不動に挑みかかります。それを阻むべく、再び妖術によって百鬼丸を捕らえるおかかですが、しかしどろろの訴えの前に、とどめをさすことができなくなるのでした。

 そんな彼女を制裁するように振り下ろされる白面不動の剣。その隙に不動の顔まで駆け上った百鬼丸の刃、そして彼を狙ったものの躱された自分の剣を受けて、白面不動は滅びるのでした。
 再びの死の間際に、人間の心を取り戻して逝くおかか。そんなどろろの想いを汲んでか、百鬼丸の心も、少し和らいだように見えます。そしてようやく本来の目的地であった温泉にたどり着いた二人は、そこで(また先回りしていた琵琶丸と出会ったりしながら)ようやくお湯に浸かることができた二人。久々にゆっくりとした時間を過ごす二人ですが、一緒に入っていた土地の子供が、どろろの背中を見て声を上げます。どろろの背中に、地図が書かれていると……


 いよいよ今回からOPEDも変わって後半戦、登場するのは原作でも印象深かった妖怪・白面不動であります。巨大な仏像が実は怪物、自分では動かずに獲物を配下に集めさせる、そして何よりも自分の顔を持たず、それ故に人を襲う――と、実にキャラの立った白面不動ですが、今回はちょっと今一つの印象。
 原作では普通に(?)死人の女だったおかかが、今回は仏師の変じたものであったというのがどうにもすっきりしないところで(別に女仏師というわけでもなさそうですし)、肝心の白面不動も、黒バックに一部しか攻撃できない/攻撃しない巨体と、何だかファミコン時代のアクションゲームの巨大ボスのような存在感でありました。
(そして毒に強そうな割りにはあっさり薬を盛られて捕まる百鬼丸……メンタル不調とはいえ)

 そんな中で取って付けたように温泉シーンが――と思いきや、ここで描かれるどろろの背中。果たして本作でも同様の秘密が隠されているのか、だとしたらそれが本作で持つ意味は、原作以上に大きいのではないか――などと考えてしまうのはもちろん気が早すぎるのですが、やはり楽しみな展開であることは間違いありません。


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