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2019.05.10

『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』 決戦! 大幻術 しかし……


 ツイ・ハークの判事ディーシリーズが帰ってきました。唐の則天武后の時代に実在した官僚・狄仁傑(判事ディー)が、皇帝から授かった無敵降龍杖を手に、奇怪な術師集団や、唐王朝に怨念を抱く妖術師一族に敢然と立ち向かう、伝奇ミステリ武侠アクション映画の最新作であります。

 日本で言えば大岡越前や遠山の金さん的な存在である狄仁傑。
 前作・前々作にあたる『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』は、その彼の活躍を(題材としたロバート・ファン・ヒューリックのミステリをそのまた題材に)豪快な伝奇武侠アクションミステリ映画として甦らせたものであります。

 そして本作はその五年ぶりの続編――第二作の直後の物語であり、時系列的にはシリーズ二番目に当たる作品であります。

 ディーのトレードマークであり、万物を破壊する力を持つ降龍杖。前作の功績で皇帝からディーに与えられたこの杖が、手にした者に皇帝や皇族をも諫める力を持つという証でもあったことが、本作の発端となります。
 この降龍杖――というよりディーの存在は、王朝の権力を奪取することを狙う則天武后にとっては、目の上のたんこぶ。かくて彼女が、市井の異能者たちを集めた「異人組」に杖の奪還を命じたことから、壮絶な攻防戦が始まることになります。

 しかしこれはほんの序の口――則天武后に取り入って国師の座に就こうとした異人組のリーダー・幻天道士が皇帝に拝謁し、宮殿の中で風雨を起こしてみせた時に、大異変が発生します。
 単なる彫像であったはずの宮殿の柱の龍――これが突然動き出すや、その鋭い牙と口からの炎で道士をはじめとして異人組に次々と襲いかかったのであります。

 皇帝の眼前でのこの怪異の捜査を命じられたディーは、事件を引き起こしたのが、天竺からやって来た強力な催眠術「移魂術」を操る瞻波伽なる民であることに気付きます。
 かつてその術で高祖を助け、封魔族の名を賜ったものの、謀叛の疑いをかけられて弾圧・追放された彼らの復讐の刃が皇帝と則天武后に向けられていることを知ったディー。

 二人を守るべく奔走するディーと仲間たちですが、しかし移魂術を打ち破ることができるのは、三蔵法師の弟子・ユエンツォー大師だけで……


 というわけで奇怪な術師たちとの対決がメインとなる本作ですが、開幕早々からシビれるのは、異人組の勢揃いシーンであります。
 四本の腕を持ち嵐を起こす幻天道士、幾つもの巨大なブーメラン刀を操る幻刀門の幽冥覇刀、火術を操る怪老婆・千手門の花火鬼夜、奇術と毒・暗器の遣い手である仙器門の妙手飛煙、影に潜んで襲いかかる女剣士(ツンデレ)・薊山符隠派の水月――名前も技もビジュアルもグッとくる連中が次々と登場する場面は、好きな人間にはたまらないものがあります。

 一方、封魔族の方は、個々のキャラクター性はさほどでもないものの(刺青を入れられて追放されたという設定故か、全員が奇怪な仮面とフードを身に着けているのがイイのですが)、幻術使いだけあって問答無用にド派手な技が次々と繰り出されるのが楽しい。
 というより終盤の大決戦は幻術合戦というよりもはや怪獣召喚大会(これがまた個性的なビジュアルの連中!)で、ツイ・ハークの趣味の大暴走を、今回もまた存分に楽しませていただきました。


 ……が、正直に申し上げて不満が残るのは、本作にミステリ要素が非常に少なかった点であります。
 もちろん前二作においても、ミステリというのは味付けに近い部分は多かったのですが、しかし全体の世界観を締める役割でディーの推理が用意されていたのに対し、本作は本当に申し訳程度という印象があります。(幻術というのは何でもありになってしまうだけに、ミステリとは元々非常に食い合わせが悪いのですが……)

 これは最初からミステリ抜きの伝奇武侠アクションファンタジーとして楽しめばよいのかもしれませんが、ラストの決戦でディー判事と仲間の活躍を期待していると――というのもあって、釈然としないものが残ります。
 こうして続編が――メインキャラは皆続投で――見られただけでも非常にありがたいのですが、しかしそれだけに勿体ないなあ、という気持ちは否めないのであります。

(ちなみにタイトルの「闇の四天王」はダブルミーニングだと思うのですが、全く「闇」ではないという――中国映画の邦題に今更何を、ではありますが)

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