士貴智志『どろろと百鬼丸伝』第1巻 忠実で、そして大きなアレンジを加えた名作リメイク
現在TVアニメが好調に放送中の『どろろ』ですが、ほぼ時を同じくして「チャンピオンRED」誌上で連載されているのがこの『どろろと百鬼丸伝』。しかし本作はアニメの漫画化ではなく、原作漫画のリメイクというべき作品――原作の内容を忠実に踏まえつつも、本作独自の要素も加えてみせた作品です。
殺伐とした室町の荒野の中を一人流離う非情の剣士・百鬼丸と、泥棒として強かに生きるも意外と人のよいどろろ。そんな二人が偶然出会い、化物に挑む……
本作は、様々な媒体・バージョンの違いこそあれど、原作以降ほとんどの版で共通するこの要素を、もしかしたら最も忠実に踏まえて描かれる作品であります。
もちろん、作者の画風の違いから、本作の百鬼丸はかなりワイルドで大人びている――というより年齢的にも原作よりも上を想定しているとのことですが――という見た目の違いはあるのですが、それを除けば、現代描かれる作品として、順当なアップデートを重ねた作品、という印象があります。
そして構成的には、この第1巻で描かれているのは原作の「百鬼丸の巻」の前半部分と、「金小僧の巻」「万代の巻」「人面疽の巻」(の前半)に当たる部分。どろろと百鬼丸の出会いと泥状の死霊との対決、そして金小僧との遭遇と万代の村での怪物との激突、万代の正体……と描かれていくことになります。
ここで原作の熱心な読者であれば、上記で抜けている部分に共通点があることに気付かれるかもしれません。そう、本作のこの第1巻では、百鬼丸の過去編――彼の生まれと背負った宿命、死霊たちと戦う理由、そして哀しい過去の出会い――が丸々省かれているのであります。
もちろんそれがこの先描かれないはずはないことを思えば、この構成は計算の上なのでしょう。この先、どのような形でこの過去編が描かれることになるのか、気になるところです。
と、いきなり結論めいた話から入ってしまいましたが、大きく本作の独自性が出ているのは、この巻の後半、万代にまつわるエピソードの部分であります。
野宿の最中、不気味な金小僧に出会った百鬼丸たちが、それがきっかけで女領主・万代が治める村で村人たちに捕らえられ、不気味な怪物に襲われる――その物語の流れ自体は変わりませんが、後半部分で語られる万代の真実に、大きなアレンジが加えられているのであります。
その内容の詳細に触れるのは伏せますが、原作で描かれていた人間の無情さや身勝手さというものを、ある人物の存在を新たに加えることで、より強調してみせるのは、なかなか面白い試みであり、本作ならではの独自性と言えるでしょう。
そしてそれが同時に、どろろの中の情と百鬼丸の中の人間らしさをも浮かび上がらせてみせるのもまた……
その他にも、このエピソードで琵琶法師がほとんど出ずっぱり(しかもチラッと描かれたところによれば何やら大きな秘密がありそうな……)だったりと、アレンジの存在とその意味を考えてみるのも面白い本作。
ちょっと展開のペースが遅めなのがもったいないところですが、この先どのような独自性を見せてくれるのか、気になるところであります。
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