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2019.06.01

速水時貞『蝶撫の忍』第4巻 「斑猫」半坐、本領発揮! しかし……


 本能寺から失われた信長の首を巡る甲賀と伊賀の争奪戦から始まった、昆虫の異能を持つ忍者たちの十対十のトーナメントバトル。『蝶撫の忍』第4巻においてもそのバトルは、いつ終わるともなく続くことになります。そしてその渦中に巻き込まれた鱗と半坐の運命は……

 本能寺から信長の首を守って落ち延び、仲間であった甲賀も、敵対する伊賀も向こうに回し、一人孤独に戦う甲賀忍・「胡蝶」鱗。
 そして師・服部半蔵に騙される形で鱗に接近し、一度は彼女を捕らえた伊賀忍・「斑猫」半坐もまた、鱗を助けるために伊賀と甲賀の双方を敵に回すことになります。

 死闘と逃避行の連続の末、色里に身を潜めた二人。しかし甲賀最強の甲賀十忍衆、伊賀の精鋭・伊賀忍十座もそこに集結、かくして始まるのは、甲賀と伊賀の全面戦争……
 というわけで、鱗と半坐の戦いが拡大する形で、前巻から始まったのは、みんな大好き異能の忍者同士のトーナメントバトル。そこに参加するのは、以下の二十名であります。

甲賀十忍衆
「鬼ヤンマ」鬼多川無法・「噛斬蟲」天牛・「百足」蓮柔郎・「泡吹」伊呂波・「華潜」厳臓・「御器噛」巡魅・「ヤゴ」彦左衛門・「羽衣」嘉納菊之介・「鞭蠍」更紗・「蛍」灯

伊賀忍十座
「螻蛄」服部半蔵・「蟻地獄」獅子丸・「蝉」服部針蔵・「蜘蛛」綾乃・「糞転」蘭・「田鼈」燕・「刺椿象」亀十郎・「蠅」旻七・「米搗虫」鵯・「大蚊」百地丹波

 鵯を除いては既に前巻までに名前と姿が登場していたところですが、この巻でついに全員の二つ名が登場。もちろんいずれも昆虫の名から取られたものであります。

 これまでの巻の紹介でも述べてきたとおり、本作の最大の特徴は、登場する忍びの能力・忍法・戦法が、いずれも実在する昆虫の、実在する能力をモチーフにしたものであること。 そしてその昆虫たちの名が全て登場したということは、その能力もまた登場したということにほかなりません(正確にはまだ能力を見せてない者も何人かおりますが……)。

 忍たちの奇想天外な能力が登場するたびに解説される、昆虫たちの恐るべき生態。昆虫がその能力を持つからといって人間が持つとは限らない――などというのは野暮の極みで、もうこの解説が来るたびに「来た来た!」と嬉しくなってしまうのであります。
 ちなみにこの巻では、齢二百歳とも言われながら外見は幼女という甲賀の首魁・「蛍」灯のその姿までも蛍になぞらえて解説されていたのですが――まさかそんなところまで昆虫モチーフになるとは、ただただ驚くほかありません。


 さて、そんな最強クラスの面々の潰し合いになっては、鱗はともかく半坐は見劣りするのでは――などと思ってしまいそうになりますが、この巻において彼の本領がついに描かれることになります。

 以前にも描かれた彼の「斑猫」たる由縁――それは比較的「静」の部類に属する内容でしたが、ここで甲賀でも屈指の腕利き・「鞭蠍」更紗を向こうに回して発揮されるのは、その「動」の力。
 その能力の凄まじさ・格好良さは、そしてこの巻を含めて作中の随所で描かれる彼の好漢ぶりと相まって、本作のもう一人の主人公と呼ぶに相応しいものなのですが――それが大変な事態を招くことになります。

 半坐の戦いぶりに、彼を喰いたくなった――性的な意味で――灯。その術中にまんまと陥った半坐は、こう、ついに……

 こんな形で念願を叶えてよいのか――いやそれどころではない大変な状態になってしまった半坐。そして鱗もまた、強敵を前に苦戦を強いられることになります。
 さらに秀吉が動き、忍びたちの内部もきな臭い状況となってきたいま、物語のクライマックスは、いやカタストロフィは遠くないように感じられます。

 その時に生き残るのは誰か――いよいよ正念場であります。


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