百地元『黒狼』第2巻 「馬賊」原田左之助、本格始動?
あの新選組の原田左之助が、上野戦争から40年後にタイムスリップ、中国大陸で大馬賊・張作霖と出会って――という奇想天外な大活劇『黒狼』待望の第2巻であります。紆余曲折の果てに作霖の下で馬賊に加わった左之助ですが、しかしまだ見習い扱い。そんな中で始まった敵との戦いの中で左之助は……
上野寛永寺で新政府軍と死闘を繰り広げた末、壮絶に散った――と思いきや、意識を取り戻してみれば40年後の満州にいた原田左之助。
そこで訳が分からぬまま、伝説の宝玉「龍の瞳」の欠片争奪戦に巻き込まれた左之助は、なりゆきで欠片の一つを飲み込んだことから、満州に覇を唱える大馬賊・張作霖に拾われることになります。
その破天荒な暴れぶりを気に入ったのか、左之助を馬賊に加えた作霖。左之助もまた、今の日本には未練はないと、不思議なカリスマを持つ作霖一党に身を投じるのですが――しかし馬賊は超身分社会、まだまだ見習いの左之助は、彼を快く思わない幹部にこき使われる羽目に……
というわけでついに本格的に始まった左之助の馬賊生活――なのですが、見習いの彼がやることといえば馬の世話や雑用ばかり。
それでも、元々が中間出身の上に規律が厳格だった新選組にいたためか(?)、意外にも早々に見習い生活に馴染む左之助ですが、しかしいざ戦いにという時に加われないのは、彼にとっては苦痛でしかありません。
折しも作霖のライバルであり、左之助とも因縁がある大馬賊・金寿山の一党が、作林の武器庫を襲撃。やりたい放題の狼藉を働いたことで、ついに作霖は全面対決を決意することになります。
しかし、そこに加わることを許されない左之助。そんな彼に、作霖配下の小隊長・トカゲは、戦いに加わる手段があることを語ります。しかしそれは文字通り決死の任務で……
と、左之助を通じて、前半は馬賊の普段の(?)生活を描き、そして後半は馬賊流の苛烈な戦いを描く第2巻。その落差には驚くほどですが――しかしその両方にきっちりと違和感なく適応してみせるのが、左之助という男であります。
いやもちろん、それはあくまでも「左之助」という人物に我々が抱くイメージに過ぎないのですが、しかしそのイメージを忠実に、いやそれ以上に魅力的に描いているのですから、それに文句があろうはずがありません。
特にこの巻のクライマックス、「ナニ物めずらしくもねぇ 要は○○だろ」(○○は敢えて伏せさせていただきます)と平然と死地に踏み込んでいく姿には、こちらはもうニコニコするしかないのであります。
それでこそ左之助、と……
そしてそんな左之助が、その美しい容貌とは裏腹に――あるいはそれに相応しく――冷酷非情な作霖にある表情を浮かべさせるのも、また痛快・爽快なのです。
しかしここで白状すれば終盤のある描写には、ちょっと引くものがあったのも事実であります
これは全く個人的な趣味の問題ではありますが、実は第1巻の時点で、非常に苦手だったあるある台詞。よりによってこの巻ではそれがよりクローズアップされ、その上、終盤では何だか想像を絶する展開に繋がっていくのですから、いやもうこれは一体――と大いに混乱させられました。
しかし――そこからさらにひっくり返し、汚濁の極みから至純の愛の形を描いてみせるのが、本作の凄まじいところであります。
ここに至るまでの数々の悪趣味な描写は、このためであったか!? と舌を巻くようなこの展開は、あたかも美と醜の間を行き来し、その間に君臨する作霖のよう――というのはさすがに言い過ぎかと思いますが、些かならず唸らされた次第です。
(犬と猫の違いがもう少しはっきり描かれてもよかったような気もしますが、それはそれで……)
何はともあれ、並行して描かれる直情な左之助の活躍と、複雑な作霖の暗躍の姿が何ともユニークな本作。伝奇的な題材のみならず、この先の展開が気になる物語なのであります。
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