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2019.05.16

『どろろ』 第十八話「無常岬の巻」

 イタチたちが財宝を探しに出た間に、鬼神と化した二郎丸に襲われるどろろ。間一髪駆けつけ、二郎丸を倒した百鬼丸は左足を取り戻す。しかしそこに多宝丸率いる醍醐の兵が襲来、盗賊たちは次々と斃れていく。そんな状況でも財宝に執念を燃やすイタチと、多宝丸と激突する百鬼丸。そしてどろろは……

 中一回おいて、再び舞台は白骨岬に戻った今回。前々回、どろろの秘密を知ったイタチはついに二つの地図を手に入れ、配下の盗賊たちと岬の上を目指します。残されたどろろは海辺の樹に縛り付けられたままですが――そこでどろろが目撃したのは、しらぬいの呼びかけに答え、二郎丸がその姿を変えていく様でありました。体色は白く変わり、手足と幾つもの角を生やした怪物と化した二郎丸は、手始めにどろろに食らいつく――のは体の小ささが幸いして避けたどろろですが、追いつめられるのは時間の問題です。
 が、そこに飄然と現れたのは、見覚えのある急拵えの義足――どろろを追ってきた百鬼丸であります。って、前回ラストの流れから、新しい義足をもらったものとばかり思っていたら、「おかあちゃん」呼びにデレただけか!? というのはさておき、そんな身でも陸に上がった鮫には負けない百鬼丸。突進を躱して平成ウルトラ怪獣チックに生えた角に刀を突き刺してその身によじ登ると、脳天に一撃――二郎丸を案外あっさりと倒すのでした。

 しかし、再会を喜ぶまもなく、真の敵が現れます。それは百鬼丸を追ってきた多宝丸と陸奥・兵庫、そして数多くの醍醐兵――よくこれだけの舟を持っていたものだとも思いますが、この場にいるものは一人残らず討ち取れと言う多宝丸の下知に、次々と上陸した醍醐兵が盗賊たちに襲いかかります。不意を突かれた上に数にも勝る相手を前に、次々と殺されていく盗賊たち。そんな中、ようやく地図の場所にたどり着いたイタチは、しかし仕掛けられた罠にも怖じ気付くことなく、財宝を探し始めます。
 その一方で、再び多宝丸と対峙することとなった百鬼丸。以前とは異なり、明確に百鬼丸を醍醐の敵と見なし、襲いかかる多宝丸を迎え撃つ百鬼丸ですが、しかしそれに加えて大力の兵庫と、遠距離から弓を放ってくる陸奥には、さしもの百鬼丸も大苦戦。ついに片手の刃をへし折られてしまうのでありました。

 そんな各所で繰り広げられる死闘の最中、イタチのもとにたどり着いたどろろ。醍醐兵の猛攻に盗賊たちは皆やられってしまった中、偶然、岬の中腹のお地蔵様に仕掛けられていた罠を作動させて醍醐兵に打撃を与えたどろろですが、しかし頼みの綱の百鬼丸も多宝丸たちに追いつめられている状況では、どろろもイタチも、その命は風前の灯であります。
 が――そこで思わぬ者が状況をひっくり返すことになります。それは三郎丸、そして二郎丸を殺されたしらぬい――自棄になってこの場に集まった者たちを皆殺しにしようとした彼は、自分が吹き飛ぶのも構わず、積み上げられた火薬に点火! 大爆発と土砂崩れに皆が巻き込まれてはもはや戦いどころではなく、多宝丸は撤退を宣言――いつの間にか爆発の中で深手を負っていた兵庫を連れて去って行くのでした。

 ……やがて爆発の瞬間にイタチに庇われたどろろが意識を取り戻した時、目の前にあったのは爆発で露わとなった洞窟の所狭しと積み上げられた財宝の数々――自分が探し求めてきた財宝を目の当たりにしたイタチは、喜悦の笑みを浮かべたまま、息を引き取るのでした。
 そして迎えにやってきた百鬼丸とともに、その場を離れるどろろ。この財宝をどのように使えばいいのか、財宝が自分にとってこの先どのような意味を持つかはわかりませんが――いまはここに残して、再び百鬼丸と旅に出ようと、どろろは心に誓うのでした(まあ、ちょっぴり懐に収めましたが……)


 中盤のクライマックスにふさわしい激しい戦いが繰り広げられた今回、波乱が予想された二郎丸との戦いに序盤であっさりと決着が着いたのには少々驚きましたが、その後に待ち受ける多宝丸主従との戦いは迫力十分であり――そしてそれだけに、理不尽に追いつめられる百鬼丸の叫びが胸に響きます。
 もっとも、それもこれもヤケを起こした猟奇サメ男の自爆テロで水入りとなってしまうのですが……(しかしこの調子だと醍醐を滅ぼす戦犯はサメ男なのでは)

 そしてやはり今回最も印象に残ったのはイタチの姿でしょう。初登場以来、悪党ながらどこか憎めない姿を見せてきた彼もついに退場することになりますが――最後まで改心するわけでもなく財宝への執着を見せつけ、しかし爆発の瞬間にどろろを庇う姿は、誰よりも「人間」臭かったと言えます。

 そんな「人間」たち一人一人が必死に生きようとした末に引き起こされた戦いと、その結末――ここに描かれたものは、まさに無常と言うべきでしょうか。


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