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2019.06.26

『どろろ』 第二十四話「どろろと百鬼丸」

 燃えさかる炎の中、最後の死闘を繰り広げる百鬼丸と多宝丸。ついに多宝丸を追いつめる百鬼丸だが――その時、これまでのどろろたちの思い出が頭をよぎり、刀を止めるのだった。負けを認めた多宝丸から両目を返され、現れた最後の鬼神も倒した百鬼丸。しかし炎に巻かれて倒れた彼の前に現れたのは……

 開幕早々、超絶作画で猛烈な剣戟を繰り広げる百鬼丸と多宝丸。死闘の最中、これは自分の城だ、自分の部屋などと百鬼丸に子供じみた言葉を叩きつける多宝丸ですが――戦いの中で百鬼丸は、多宝丸に欠けたものがある――百鬼丸には胸の部分が黒くぽっかりと空いて見える――のを感じ取るのでした。
 それでも互いの刃が止まることなく、いよいよ激しくなる火勢の中、ついに決着の時を迎える二人。百鬼丸のとどめの一撃が振り下ろされようとした時――百鬼丸の脳裏をよぎったのは、何故かどろろや、彼女との旅の中で出会った人々の姿でありました。

 そしてそれに止められたかのように、刀を下ろす百鬼丸。訝しげな多宝丸に、俺たちは人だと百鬼丸は告げ、多宝丸もついに負けを認めるのでした。そして百鬼丸に最後の身体の一部――両目を返すべく、己の目を抉りだした多宝丸。それと呼応するかのように、崩れつつある城の中に現れたのは十二番目の鬼神――植物とも鉱物ともつかぬような巨体の中核と覚しき部分を百鬼丸の刀が貫き、ついに百鬼丸は全き身体を取り戻したのでした。

 しかし返ってきたばかりの目を開けられぬ百鬼丸の上に落ち掛かる、燃え崩れた城の一部。そこから彼を救ったのは、既に城の中に入り込んでいた寿海と、抜け穴を抜けて戻ってきた縫の方でありました。ついに目を開けた百鬼丸と見つめ合い、母子の名乗りを交わす縫の方と、百鬼丸に最後の授け物として仏像を――人の心を与える寿海。百鬼丸を抜け穴から逃がし、その場に残った二人、いや、ようやく母の心からの愛を受け止めて心の隙間を埋めた多宝丸も入れて三人は、従容として崩れ落ちる城と運命を共にするのでした。
 一方、抜け穴の途中まで追ってきたどろろと出会い、共に外に出た百鬼丸。その目に映るのはどろろの顔と、美しい夕焼けの空……

 そして戦いが終わり、焼け出された人々の村の再建を、青年三人組に提案するどろろ。武士の力ではなく、金の力を使うというどろろに怪訝な表情の青年団ですが、どろろは心当たりがあると――もちろん、父の残した財宝であります――笑ってみせるのでした。

 一方、ただ一人地獄堂に向かった百鬼丸。そこには、朝倉との戦いで数多くの兵を失い、満身創痍で堂の中に端座する醍醐景光の姿がありました。事ここに至っても自分の所業を恥じることなく、今ここでお前に討たれても魂魄ここに留まって鬼神となると嘯く景光。しかし百鬼丸の刃が貫いたのは景光ではなく、傍らに置かれた兜でありました。
 百鬼丸が選んだのは、父を殺してこの先も修羅の道を行くのではなく、人の道を行くこと。そしてあんたも人として生きろと告げて去る百鬼丸の器と生命力の大きさを前に、初めて景光は己の失ったものの大きさを知り、心から慟哭するのでした。そう、百鬼丸を己の欲望の生贄にしなければ手には入ったかもしれないもう一つの未来――父と子で手を取り合って作り上げる国を失ったことを……

 そしてそのまま一人飄然と何処かへ旅立つ百鬼丸。しかしどろろはいつの日にか必ず百鬼丸が自分のもとに帰ってくることを信じて、村を再建するために走り始めます。そして数年後、美しく成長したどろろの前に、凛々しく成長した百鬼丸が……


 まさに大団円と呼ぶに相応しい内容となった最終回。多宝丸も縫の方も寿海も、悲しい結末ではありますが、しかしそれぞれ最後には己の行動に、己の生に満足することができたと言うことができるでしょう。
 景光が最後まで生き残ったのに不満を覚える方もいるかもしれませんが、しかし己以外の全てを失い、そしてその時になって初めて自分の欲望のために失ったものの大きさを知ったのは、彼にとっては何よりも残酷な罰と言うべきではないでしょうか。景光を怪物としてではなく、一人の人間として――そしてそれを百鬼丸の成長を通じて――描いたこの結末、私は大いに感心しました。

 そしてどろろと百鬼丸ですが――すっかり母親似の美人となったどろろと、家族の良いところだけ集めたようなイケメンとなった百鬼丸。二人にとっては最高の結末でしょう。
 最高と断言して良いかって? その理由は、景光が仕えた富樫家が一揆勢に追われ、加賀はその後100年近く「百姓の持ちたる国」となったという史実を掲げれば足りると――私はそう思います。

 そして原作においても景光が富樫家の家臣であったことを思えば、原作の描けなかった結末に、ここでようやくたどり着くことができた、というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが……


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