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2019.06.08

小神奈々『つくもがみ貸します』 漫画版つくもがみ貸します、ここに完結


 既にアニメ版は放映終了して半年が経ちますが、そのアニメ版のコミカライズである漫画版の『つくもがみ貸します』が全2巻で完結しました。ボリュームの関係もあってかなり大胆にアニメ版をカットしつつも、物語の骨格は踏まえた作品であります。

 付喪神たちが棲みついた深川の損料屋兼古道具屋・出雲屋を舞台に、お紅と清次の姉弟が様々な事件に巻き込まれ、付喪神の力を借りて(利用して)解決していく連作『つくもがみ貸します』。
 原作は言うまでもなく畠中恵の小説ですが、この漫画版は、冒頭に述べたとおり昨年7月から10月まで放映されたアニメ版をベースとした内容であります。

 エピソード的には単行本第1巻にアニメの第一幕・第二幕の前半が、第2巻に第二幕の後半と、第六幕・第九-十一幕をベースとしたエピソードを収録――というと非常にわかりにくいのですが、簡単に言ってしまえば第二幕該当部分のみがアニメオリジナルエピソード、それ以外は全て原作由来のエピソードとなっています。
 すなわち、婿入りを控えた武士のもとから逃げ出した根付けの謎、夜毎古美術商の蔵で掛け軸の付喪神たちが繰り広げる騒動、そしてお紅と清次が探し求める蘇芳の香炉の行方と二人の過去と未来――と描かれていくことになります。

 正直なところ、第1巻の部分はあまりにもアニメ版に忠実すぎる内容だったのですが(第1巻単独で紹介しなかったのはこの理由によります)、しかし第2巻は良い意味でかなり展開が盛り込まれているため、適度にエピソードがアレンジされている印象であります。
(ちなみに、第1巻にアニメの冒頭エピソードを収録して第2巻で一気にラストまで描いてしまうというのは、いかにもアニメのコミカライズという印象がいたします)

 もちろんアレンジといっても、アニメ版、ひいては原作の展開を踏まえているのですが――しかしここで一種ダイジェストされている内容を見ると、作品のエッセンスというものが感じられるのが実に面白い。
 特に大店の若旦那・佐太郎から想いを寄せられたお紅が、彼の母から櫛一つで大金を作ってみせるよう迫られるくだりや、消えた蘇芳を巡るある人物の心理、そして清次に怒りを爆発させるお紅といった辺りは、こうしてみると実に原作者である畠中恵「らしさ」が詰まっている――そしてそれこそが本作の魅力なのですが――と、今更ながらに再確認させられた次第であります


 と、いささかひねくれた楽しみ方になってしまいましたが、アニメ版に続き、無事漫画版も完結したのはめでたいお話。さすがに、漫画版だけでも続編を――というのは難しいとは思いますが……


『つくもがみ貸します』(小神奈々&畠中恵 KADOKAWA B's-LOG COMICS 全2巻) 第1巻 Amazon/ 第2巻 Amazon
つくもがみ貸します 1 (B's-LOG COMICS)つくもがみ貸します 2 (B's-LOG COMICS)

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