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2019.06.14

賀来ゆうじ『地獄楽』第6巻 怪物二人の死闘、そして新たなる来訪者


 謎の孤島で繰り広げられる死罪人/浅ェ門たちの死闘もいよいよ佳境。島を支配する「てんせん様」を、死闘の末にようやく一人倒した死罪人と浅ェ門たちですが、しかしその状況は決して好転したわけではありませんそして画眉丸に起こった恐るべき異変が、事態をさらに混沌とさせることに……

 不老不死の仙薬が眠るという孤島に、無罪放免と引き換えに送り込まれた死罪人たちと、監視役の山田浅ェ門たち。しかしその島は異形の怪物たちが徘徊する魔境――そしてその中でも桁外れの力を持つ「てんせん(天仙)様」たちとの戦いの中で、彼らは次々と命を落としていくことになります。

 そして迷い込んだ島の中心部で、てんせん様の一人・不空就君ムーダンと交戦することとなった佐切・杠・仙汰そしてヌルガイと士遠。「タオ」に目覚めた佐切たちは、巨大な怪物と化したムーダンに対して死力を尽くして挑み、ついにこれを倒すのですが――その最中で仙汰が命を落とすのでした。
 一方、佐切たちとはぐれた画眉丸とめいは、巖鉄斎・付知と合流したものの、うち続く激戦の中でタオを消費した画眉丸の記憶は混濁し、かつて殺人機械「がらんの画眉丸」だった頃の人格が甦ってしまうのでしたことになります。

 そんな状況で遭遇したのは、「賊王」亜左弔兵衛とその弟・桐馬。共闘も念頭になく、いきなり襲いかかってきた弔兵衛を迎え撃つ画眉丸ですが……


 というわけでこの巻の冒頭で描かれるのは、島の異形に寄生されて半ば化け物と化しつつある弔兵衛と、歯止めの効かなくなった画眉丸という、怪物二人の死闘。
 元々、ともに作中の人間の中では最強クラスの戦闘力・生命力の持ち主ではある上に、それぞれ理性の箍が外れかけた状態とあって、展開されるのは凄惨とも壮絶とも言うべき戦い――いや潰し合いであります。

 しかし一方の画眉丸がこの島で手に入れた力は、「強さ」のみで発揮できるものではありません。「強さ」の種となる「弱さ」――陰と陽が一つとなって円を描くように、強さと弱さの二つが対になって、初めて得られるものであります。
 それを失った画眉丸が、更なる怪物化をみせる弔兵衛に勝てるのか? その答えは残念ながら明らかではありますが、しかし……


 と、意外な展開が連続した末に、ようやく合流/再会した画眉丸サイドと佐切サイド。両者が合流して一行は九名、一気に戦力が増強された感がありますが――しかしそれでもてんせん様を倒すにはまだまだ足りないことは言うまでもありません。
 てんせん様を打倒し、この島から脱出するために、ある者は力を求め、ある者を知識を求め――その果てに明らかになるのは、この島を作り出したのが、歴史上に名を残すあの人物であることであります。

 蓬莱をはじめとする東方三神山の名が時点でその名が登場するのは半ば約束されたようなものだとは思っていましたが、なるほど、こういう形で関わってくるとは――と、ここでの登場には思わずニヤリ。
 この先、本当に本人が登場することになるのか――その可能性は非常に高いと思われますが、だとすればその役割はどうなるのか。さらに物語は予想もしない方向に転がっていく予感があります。

 そしてこの巻のラストでは、ついに巻末組――と、言いたくなるようなこれまでの出番だった――の浅ェ門追加チームがついに島に上陸。
 殊現・十禾・清丸・威鈴と明らかに尋常ではない使い手四人が、そしてさらに画眉丸を狙う石隠れ衆たちが島に現れたことで、再び人間同士の死闘が繰り広げられることになるのか――? 一つだけ間違いなく言えるのは、この先ますます戦いは激化するであろうということであります。


 ちなみにこの巻では、再会した佐切と画眉丸が、プラトニックな、しかしちょっとドキドキするような絡み方をするのですが――その直後に別のキャラクターが、本来敵である相手と全然プラトニックではない絡みを見せるのがちょっと面白い。
 しかもこの二つの場面、回復のためという点では共通していて――なるほど、画眉丸と彼はある意味対になる存在であったかと、今更ながらに感心しました。


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