« 8月の時代伝奇アイテム発売スケジュール | トップページ | 鳴神響一『凶嵐 おいらん若君徳川竜之進』 クライマックス目前!? 立ち塞がる思わぬ「敵」 »

2019.07.09

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第16巻 哀しき巨人・岩柱の過去 そして最終決戦の幕上がる!


 このブログでも毎週何だかんだ言いつつ取り上げているようにアニメも好調に放送中の『鬼滅の刃』ですが、原作の方は鬼殺隊総出の柱稽古を経て、この巻からいよいよ最終決戦に突入することになります。鬼舞辻無惨たち鬼の本拠地である無限城で、絡み合う因果因縁とは……

 禰豆子がついに日の光を克服したことで、鬼殺隊と鬼、それぞれにとって新たな局面に入った戦い。いよいよ決戦が近いことを予感した鬼殺隊は、柱たちを中心とした大特訓・柱稽古を開始することになります。
 義勇さんのコミュ障ぶりが明らかになったり、不死川兄弟の兄弟喧嘩に皆が迷惑したりと、色々と賑やかに(キャラの掘り下げが)展開していった末――次に炭治郎と善逸は、岩柱・悲鳴嶼行冥のもとに向かうのですが、しかし……

 と、この巻の冒頭で描かれるのは、滝行に丸太背負い、岩押しと、ある意味最も修行らしい岩柱の特訓。しかし強烈なビジュアルだらけの柱たちの中でも一際目立つ風体の悲鳴嶼がそこに加わると、異次元の風景という感があります。
 さらに久々に登場した感のある伊之助も加わって、賑やかな(しかしやる側は笑い事ではない)特訓風景を楽しんでいたものが、しかしここで一転、シリアスで重い物語が語られることになります。

 それは悲鳴嶼の過去――かつては僧として孤児たちと寺に暮らしていた彼が、何故鬼殺隊に加わり、柱にまでなったのか? ここで描かれるのは、他の柱(恋柱とか例外もいますが)――いや炭治郎たち同様、鬼によって運命を狂わされ、辛酸を舐めた者の悲痛な叫びなのであります。

 先に述べたとおりその強烈なビジュアルといい、ことあるごとに数珠を爪繰りながら涙を流すその言動といい(あと玄弥が弟子だったり)、他の柱が評する通りどうにも得体の知れなかった悲鳴嶼。
 しかしたった一つのエピソードで、キャラクターのイメージをマイナスからプラスに変えてみせるのは本作の最も得意とするところであり――ここでも、悲鳴嶼が一気に哀しくも頼もしい勇者に見えてきたのですから、さすがと言うべきでしょう。


 しかし(衝撃の不死川兄の秘密暴露を挟んで)ここから一気に物語は展開していくことになります。
 ついに鬼殺隊の長・産屋敷の居場所を突き止め、その前に現れた無惨。実は同族の出だったという二人の対話によって、鬼と人間の違い――それはこれまで物語の中で語られてきたものの延長線上にあるのですが――が語られるのもイイのですが、まさかここから決戦の烽火が、あまりに思い切った形で上がるとは!

 懐かしいあのキャラクター(ここに来てさらりと語られるあまりに重い過去に涙)、意外なキャラクターの起用に驚きつつ、ついに長かった戦いもここで決着かと思えば――待ち受けていたのは別の意味での決着戦であります。

 無惨の本拠・無限城を操る存在であり、そして空席となった上弦の肆の座に就いた鳴女の力によって、その無限城に引きずり込まれた鬼殺隊の隊員たち。そして無惨に至る道において彼らの前に立ち塞がるのは上弦の鬼たち――これぞジャンプに脈々と続く死亡遊戯パターン(の変形)と言うべきでしょうか。
 かくて、迷宮という言葉すらも生ぬるい無限城の内部で待ちかまえる下弦クラスの力を持つ無数の異形の鬼と上弦の鬼vs岩・霞・風・蛇・恋・水・蟲の各柱、そして炭治郎や(何故か非常に覚悟を決めた表情の)善逸をはじめとした鬼殺隊の隊士たちの決戦がここで始まるのであります

 敵も味方も役者は揃い、幕開けとなる第一番勝負は蟲柱・胡蝶しのぶ対上弦の弐・童磨――あの猗窩座殿を手玉に取る得体の知れぬ男であり、そして何よりもしのぶの姉・カナエの仇であります。
 奇しくも自分が鬼殺隊に入ったその理由を作った相手と対峙したしのぶですが、全力を尽くした彼女にとっても、相手はあまりに悪い。果たして……

 というところで引きとなるこの第16巻。ここから先は全てが死闘であり名勝負(でも突発的にギャグは入る)、今から次の巻が待ち遠しいのであります。


 ちなみに単行本のおまけページは、これまで以上にキャラの掘り下げや補足が多い印象。去就が気になっていたあのキャラクターにもきちんとフォローが加えられていて、少しだけ安心しました。


『鬼滅の刃』第16巻(吾峠呼世晴 集英社ジャンプコミックス) Amazon
鬼滅の刃 16 (ジャンプコミックス)


関連記事
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第1巻 残酷に挑む少年の刃
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第2巻 バディであり弱点であり戦う理由である者
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第3巻 ついに登場、初めての仲間……?
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第4巻 尖って歪んだ少年活劇
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第5巻 化け物か、生き物か
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第6巻 緊迫の裁判と、脱力の特訓と!?
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第7巻 走る密室の怪に挑む心の強さ
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第8巻 柱の強さ、人間の強さ
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第9巻 吉原に舞う鬼と神!(と三人組)
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第10巻 有情の忍、鬼に挑む!
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第11巻 遊郭編決着! その先の哀しみと優しさ
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第12巻 新章突入、刀鍛冶の里での出会い
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第13巻 物語を彩る二つのテクニック、そして明らかになる過去
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第14巻 死闘の中に浮かぶ柱二人の過去と現在
 吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第15巻 二つの勝利の鍵、そして柱稽古開幕!

|

« 8月の時代伝奇アイテム発売スケジュール | トップページ | 鳴神響一『凶嵐 おいらん若君徳川竜之進』 クライマックス目前!? 立ち塞がる思わぬ「敵」 »