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2019.07.10

鳴神響一『凶嵐 おいらん若君徳川竜之進』 クライマックス目前!? 立ち塞がる思わぬ「敵」


 尾張徳川家のご落胤ながら、故あって吉原の花魁・篝火として暮らす徳川竜之進の冒険もこの第4弾でいよいよ佳境に入りました。娘の生き肝を食らう河童の跳梁に怒りを燃やし、黒幕に迫る竜之進。しかしその先に待ち受けていたのは、思いも寄らぬ大陰謀で……

 生まれ落ちてすぐに藩の政争に巻き込まれて命の危険に晒された末、五人の甲賀忍びによって救い出され、吉原に潜んで成長した徳川竜之進。
 木を隠すには森の中――その身を隠すために花魁・篝火に身をやつした竜之進は、決して客とは同衾しない花魁として名を馳せつつ、裏では江戸を騒がす許せぬ悪を成敗してたのであります。

 そんな七夕の晩、気に染まぬ花魁稼業の憂さ晴らしに吉原を抜け出し、いつもの仲間たちが集う煮売り屋に向かった竜之進。そこで、娘たちが河童によって無惨に殺され、生き肝を奪われているという噂を聞いた竜之進は、あまりにも無惨な所業に激しく怒りを燃やすのでした。
 そして町娘に扮し、自らを囮に河童が出没するという赤坂の溜池近くの山王社に向かった竜之進。果たして現れた悪党たちに、破邪顕正の刃を振るう竜之進ですが……


 もはや第4弾ともなればシリーズのスタイルも固まったというべきでしょうか、仲間たちと飲んでいるところで江戸を騒がす怪異じみた事件の存在を聞きつけ、竜之進が成敗に乗り出す――という展開を今回も敷衍する本作。
 誰かから依頼されたわけでも、犠牲者に関連があるわけでもなく、直接竜之進には関連のない事件に正義感のみで乗り出すのは、世を忍ぶご落胤としてはいかがなものか――という気もいたしますが、それがヒーローというものでしょうか。

 それはさておき、「河童」の目的を察知した(ここで登場するゲストキャラがなかなかの存在感)竜之進は、悪党成敗に向かうのですが――ちょっと展開が急なのでは、と思いきや、ここから物語は思わぬ方向に走り始めることになるのです。


 ここから先の展開について、未読の方の興を削がぬように紹介するのはなかなか難しいところであります。
 しかし、事件の背後に潜んでいたものが思わぬ存在であり、そしてそれがまた、さらに思わぬ形で、竜之進自身の存在に繋がっていく――と述べることは許されるかと思います。

 冒頭に述べたとおり、尾張徳川家の御家騒動の中で危うく命を奪われかけ、江戸に逃れた竜之進。その彼がいまだに吉原に潜み、こともあろうに花魁に身をやつしているのは、彼の身に迫る危険がいまだ去っていないことを意味します。
 だとすれば、いずれは尾張徳川家を
向こうに回した物語を――と予想できるのですが、いやはや、それを思わぬ、それも絶妙な形でひねった展開が待ち受けているとは……

 これも詳細を述べられないのが非常に心苦しいのですが、ここで竜之進の前に立ちはだかるのは、ちょっと意外な、しかし史実を見ればまさしく彼の敵とするに相応しい存在であります。
 実は時代物では比較的メジャーな人物ではあるのですが、この時期に登場するのはかなり珍しいのでは――というのは語り過ぎかもしれませんが、定番の物語かと思えば、この落差十分の変化球には、大いに唸るしかありません。

 そして繰り広げられる、シチュエーション的にもスケール的にもシリーズ屈指の大殺陣だけでも楽しいところに、さらに「えっ!?」というような展開から「ええっ!!」という結末に――いやはや、完全に作者の掌の上で転がされました。


 はたしてこの先に竜之進を待ち受けるものは何か。はたして彼は己の正義を貫き、そして平穏な日常を手に入れることができるのか――クライマックスは目前であります。


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