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2019.08.24

川原正敏『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』第18巻 陸奥狛彦再び! 激突、本多忠勝!


 本編が完結(?)したこともあり、あるいはもう読むことができないのか――と思っていた『修羅の刻』久々の登場であります。様々な時と場所を舞台に描かれてきた本作ですが、今回は「陸奥狛彦の章 東国無双編」。かつて「織田信長編」で活躍した陸奥が、あの最強の戦国武将・本多忠勝に挑むことに……

 千年不敗を誇る古武術・陸奥圓明流――現代に至るまで、歴史の陰で活躍してきたその時代の伝承者を描く連作『修羅の刻』。
 これまで平安時代から昭和に至るまでを舞台としてきた本作ですが、今回の舞台となるのは戦国時代――と、ここでシリーズのファンであればすぐに気付くかと思いますが、実は戦国時代は本作では(宮本武蔵の章は除くとして)二度目。本作はその戦国時代を舞台とした「織田信長編」の続編と言うべき物語なのです。

 本能寺の炎に織田信長が消えて二年――天下人の座を巡り小牧・長久手の戦いで秀吉と家康が激突する中、主君の窮地を救うため、わずか五百騎で数万の秀吉軍の前に立ち塞がった本多忠勝。
 秀吉曰く「花実兼備の張飛」――すなわち花も実もある真の勇士、日本の張飛とも称された忠勝は、名槍・蜻蛉切を手にしたその気迫で、単身秀吉軍を押しとどめるのでした。

 しかしその忠勝に、単身、しかも無手で近づく男が――それこそは、かつて信長と行動を共にし、やがて袂を分かった当代の陸奥袁明流伝承者・陸奥狛彦であります。
 ただ強い兵とやりたいだけの鬼を自称する狛彦にとって、忠勝は己が挑むに値する相手。そして忠勝にとっても、狛彦は無視できぬ相手――かくて、生涯無傷の猛将と、千年不敗の修羅が激突することに……


 と、戦国が二度目の舞台となることも意外であれば、その相手も意外であった本作。というのもこれまで同じ時代が再び舞台となることは基本的になく、そしてその時代の陸奥のライバルとなるのも、基本的には個対個の武術を用いる相手だったのですから。
 そのために戦国武将、すなわち兵を統率し、集団対集団の場で活躍する将である忠勝というのは意外に感じたのですが――しかし、こと強さという点では、なるほど納得の人選ではあります。

 本作はその忠勝の生涯を、三方ヶ原の戦いから小牧・長久手の戦い、そして関ヶ原の戦いといった歴史に名高い合戦を舞台に活写。その姿は、格闘と合戦、両方の戦いの描写を自家薬籠中の物とする作者だけに、納得の一言であります。
 特に蜻蛉切について、槍の穂先に留まっただけの蜻蛉が二つに切れたという逸話を、実に本作らしいさらりと、しかし凄みのあるアレンジで再話してみせたのが面白い。力の将というイメージで、比較的触れられてこなかった印象のある忠勝の「業」を、このような形で描いてみせたのに痺れます。


 が――忠勝の描写については満足できるものの、本作は『修羅の刻』としてはいささか食い足りないものが残るというのが正直なところであります。

 これはもう、単行本わずか一巻で、忠勝の生涯を――そしてそれにまつわる歴史の流れを語り、その上で狛彦との再三にわたる戦いを描くには分量的に苦しいものがあった、というほかありません。
 実に本作で描かれるのは約40年間の歳月――もちろんその間が全て描かれているわけではないとはいえ、それを語るにはかなり駆け足にならざるを得ないのですから。

 そして既に「織田信長編」でその人となりは描かれてきたとはいえ、狛彦の出番が相当に少なく、忠勝の敵役という位置づけに留まっている――もっとも、これまでのシリーズでも陸奥のそういう位置づけは少なくなかったのですが――印象があります。
 もちろん、それを見越しての狛彦の再登板だったのかな、という気がしないでもありませんが……

(ちなみに本作のラストの対決が行われた年は、シリーズ第1作「陸奥八雲の章 宮本武蔵編」の第1話と同年。息子が主役を張っていたのと同時に父親も戦っていたのですから、狛彦頑張ったなあ、という気もいたします)


 さて、そんな本作は、実は東西で対になる内容。次の巻では狛彦の双子の兄であり、史上最初の不破圓明流の遣い手・不破虎彦が、西国無双・立花宗茂と対決することになります。

 果たしてそちらではどのような戦いが描かれることとなるのか。忠勝よりも遙かに後まで生きた宗茂だけに、本作のような展開は難しいと思いますが――色々と申し上げつつも、ファンとしてはやはり非常に気になってしまうのです。


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修羅の刻(18) (講談社コミックス月刊マガジン)

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