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2019.08.02

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第1巻 集結、御家人衆 しかし……?


 というわけで(前日参照)『アンゴルモア 元寇合戦記』の新章『博多編』のスタートであります。対馬での地獄を戦い抜いた朽井迅三郎の次なる戦いの行方は、そして博多を守る全国の御家人の戦いぶりは――蒙古と日本の全面衝突が始まることになります。

 蒙古の日本侵攻の矢面に立つこととなった対馬で、宗家の武士たちや古来からこの地に拠る刀伊祓たちとともに戦った迅三郎ら流人たち。しかし衆寡敵せず、蒙古に蹂躙された対馬は多大な被害を受けることになります。
 迅三郎はただ一人、蒙古軍の副元帥・劉復亨に一騎打ちを挑んでその顔色をなからしめ、また宗家の輝日姫も生き延びたものの――しかし対馬に残された爪痕はあまりに大きいものであります。

 全てが奪い尽くされた対馬に残された人々にとって、来るべき冬はあまりに厳しい状況。頼みの綱であった援軍は――援軍のもたらす物資は――来る気配もない中、博多攻撃へと引き上げていく蒙古軍に対して、迅三郎が取った行動とは……

 と、あれだけ壮絶な負け戦を経験してもなお、まだまだ闘争心は尽きせぬ迅三郎の姿が嬉しいこの冒頭部分。劉復亨の前に立ちふさがってフェードアウトしたものの、そういえば死ぬ場面も描かれなかった鬼剛丸もしっかり生き残って登場するのも嬉しいところであります。
 しかし対馬の戦いは終わったとはいえ、ここで座して待つのは性に合わない、とばかりに迅三郎が(そして鬼剛丸が)とった行動は実に「らしく」、これから始まる更なる激戦に向けて期待は高まるのです。


 が、この巻での迅三郎の出番は、実はこの冒頭三分の一ほど。それでは残る部分に登場するのは、と言えば――それは蒙古迎撃のために集まった、日本の御家人たちの姿です。
 総大将の少弐資能とその子である経資・景資兄弟(さらに経資の子の資時)そして島津氏に小代氏、宇都宮氏、千葉氏――その名を見ればわかるように、九州だけでなく、関東の御家人たちまでもが集結、まさに日本中の御家人が集結し、蒙古何するものぞ、という意気軒昂ぶりであります。

 迅三郎たちがレジスタンスだとすれば、こちらは正規軍。戦力的にも段違いで、一見頼もしいのですが――こういう時の正規軍が危ういのは、この手の物語の定番と言うべきでしょう。
 はたして、迅三郎に応えて対馬に援軍を送ろうとしたこともある小弐景資の献策――蒙古軍が狙うであろう赤坂山の守備は鼻で笑われ、立場の弱い菊池武房に押しつけられたのみ。どう考えても厭な予感しかいたしません。

 そもそも、景資が援軍を送ろうとした時に、ライバルである大友氏の動きを警戒してこれを止め、結果として対馬の人々を見殺しにしたのは資能その人。その資能が総大将を務める軍が本当に大丈夫なのか?
 というこちらの心配(というよりもここまで増長ぶりが描かれるともはや期待)は早速当たることに……


 というわけで、物語的にはまだまだ始まったばかりの『博多編』。今回初登場の御家人たちも、人物配置である程度役割は予想できる――というよりも史実にちゃんと記録が残っている面々なわけで――のですが、さてそこに、記録に残らぬ者の想いを背負った迅三郎が飛び込んだ時、何が起こるのでしょうか。
 迅三郎の活躍の場には事欠かないこの戦いですが――まだその時は少し先でしょう。まずは、御家人たちの緒戦を見守るとしましょう。


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