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2019.09.12

八房龍之助『宵闇眩燈草紙』参・四 呪われた港町で炸裂する超伝奇バトルロイヤル!


 藪医者と荒事師と魔女と――一癖もふた癖もある面々が奇妙な事件や騒動に絡む和風伝奇ホラー、第3巻第4巻の紹介であります。今回収録されているのはシリーズ屈指の長編・寄群編――呪われた港町を舞台に、いつもの三人+これまたとんでもない面々がバトルロイヤルを繰り広げることとなります。

 顔なじみのチャイニーズマフィア・林の用心棒として、裏世界のオークションに参加した虎蔵。首尾よく目当てのものを落札したものの、その晩奇怪な屍人たちの襲撃により、品物の入ったアタッシュケースが奪われることになります。
 ケースはすぐに虎蔵が取り返した――と思いきや、屍人が別口も襲撃していたことから、そちらのケースを取り違えて持って帰ってきてしまった虎蔵。やむなく林と虎蔵は、オークションの主催者と交渉するため、日本のとある港町に向かうことになります。

 一方日本では、美津里が不在の間に彼女の店を虎蔵の宿敵・馬呑吐が襲撃。仕掛けられた防御陣を突破して、まんまとあるモノを奪って去るのでした。
 そして京太郎の方は、患者からの依頼で、遠方に嫁いだという患者の娘を訪ねて、とある港町に向かうことに。

 かくて、港町――寄群に引き寄せられていく三人。奇怪な容貌の住民たちが暮らす閉鎖的なその町で彼らを何が待つのか。奪われたアタッシュケースの行方は、そしてそこに隠された秘密とは……


 魚か蛙を思わせる容貌の人々が暮らす呪われた地、その名は寄群(よぐ)――というわけで、クトゥルフ神話を題材としたこのエピソード。
 しかし何でもありの本作が、普通の(?)神話ものを描くはずもなく、いかにもそれっぽい舞台とガジェットを用いつつも、実に本作らしいキャラクターたちが、それを塗りつぶしていくことになります。

 何しろ、いつもの三人組や、林に馬といったサブレギュラーに加えて登場するのは、いかにも食わせ物の魔術師とその美人助手、同じく魔術師ながら日本刀を操る正義の硬骨漢、ダンディーな忍者、寄群を支配してきた古き血の人々にそれとは別口の海神の使者、そして謎の美少女――と、これでもかの多士済々。
 伝奇ものは、物語に絡む勢力が多ければ多いほど楽しい――というのは僕の持論ですが、これだけの面子が、謎のアタッシュケース×2+α曰く付きの土地で面をつき合わせるのですから、只ですむはずもないのであります。

 かくて展開するのは、超人行者vs不死者vs忍者vs魔術師の助手vs魔術師vs妖人(さらに屍人たくさん)という一大乱戦。「誰が誰の敵なのだッ」という登場人物の言葉も納得であります。
 しかしそこからさらに戦いはエスカレートして、大怪獣vs巨大神vs真・天狗行者が大激突、しまいにはあの神様まで――と、これだけの超伝奇バトルロイヤルを繰り広げられたら、見ているこちらはあっけにとられて、そして顔に満面の笑みを浮かべて見ているほかありません。

 もちろん、ただ出して絡めるだけではこれだけのものになるはずもなく、そこには、体系も、出自も、そしてレベルも異なる様々な魔術道術妖術忍術を実に「らしく」描き分け、活躍させてみせる作者の筆の冴え――そしてその前提となる理解力があることは、言うまでもないのであります。

 それにしてもこれだけの超伝奇バイオレンス活劇を前にしては、作中ほとんど唯一の一般人である京太郎は分が悪いどころの騒ぎではないのですが――しかし彼は彼として、この物語のコワい部分、イヤな部分を存分に目の当たりにするという大事な役目があります。
 息も絶え絶えになり、延々と愚痴りながらも何とか生き延びようと這いずり回る彼の姿は、事件に巻き込まれながらも結局局外者でしかないという、実に彼らしく、そしてある意味実に本作らしい存在感があります。

 あるいはそんな彼の存在が、一歩間違えれば大暴走しかねないこの物語を、ギリギリのところで束ねているのかもしれない――というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが……


 そして京太郎の巨大な鬱屈と幾つかの謎を残したまま寄群での物語は終わりますが――本作はまだ続きます。
 次回の紹介では、寄群編とならぶ長編・シホイガン編とその他の物語をご紹介したいと思います。


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