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2019.09.15

琥狗ハヤテ『メテオラ』伍 彼女が殺す理由 そして意外すぎる「宋江」登場!?


 その身を獣に変える力を持つ魔星(メテオラ)と混沌の戦いを描く獣人水滸伝『メテオラ』――媒体を電子書籍に変えても内容は変わらず好調の第5巻では、武松の物語の後半と、そしてついに登場する「宋江」の姿が描かれることになります。意外な真実を知った林冲の胸中は……

 生まれながらに様々な動物の姿に――獣人に変じる力を持つ魔星・メテオラ。彼らこそは、かつてこの世に災いを齎す「混沌」を封印し、以来、復活せんとする混沌と戦い続けてきた者たちであります。
 その戦いに巻き込まれた末、育ての親である王進将軍と仲間たちを失い、同じメテオラである魯智深とともに都から落ち延びた林冲。彼はメテオラたちを集める柴進から、メテオラたちが集結するための聖域探索を依頼されることになります。

 その旅の最中に、二人が出会った隻眼の青年・武松。二人の眼前で巨大な人喰い虎を屠ってみせた彼もまた、虎の獣人に変じるメテオラでありました。
 仲間たちとの出会いに喜ぶ武松に案内され、彼の家を訪れた林冲と魯智深は、病床の武松の兄・武大とその妻・潘金蓮と出会うのですが、潘金蓮は怪しからぬ振る舞いをみせて……


 というわけでこの巻でも続く林冲と魯智深の二人旅。その向かう先がどこであるか、水滸伝ファンであれば言うまでもありませんが、その途中で様々なメテオラ――すなわち百八星と出会っていくというのは(すなわち原典の宋江の役割も果たすことになるのは)、面白いアレンジと感じます。
 そして前巻に引き続き描かれるのは、武松、そして武大と潘金蓮の物語。いうまでもなく原典の人気エピソードをベースとした展開ですが――武大に毒を盛る潘金蓮と、彼女に対する武松の復仇という物語の骨格自体は、原典から大きく離れるものではありません。

 しかし本作において強く印象に残るのは、そして大きく原典と異なるのは、潘金蓮の行動の理由であります。原典では、簡単に言えば浮気相手の存在から邪魔になった武大を毒殺した潘金蓮ですが――しかし本作にはその相手は存在しないのですから。
 それでは彼女は一体何のために……? その理由は、まさしく毒婦としか言いようがない、身勝手かつ異常なものではあります。ありますが――しかし、彼女自身の背負った深い悲しみとどうにもならない捻れを感じさせるそれは、共感はできないものの、理解できるものと感じられます。

 出番自体は多くないものの、これまで様々な物語で描かれてきた潘金蓮像に負けぬ彼女の姿。それを本作は描いてみせたと感じます。


 そして本書の後半では、新たなメテオラ――それも超大物が、ついに林冲たちの前に現れることとなります。
 その名は宋江――いうまでもなく原典では梁山泊の首領、百八星の筆頭。その類い希なカリスマで、数々の豪傑たちを惹きつけ、梁山泊に誘った人物であります。

 しかしこの宋江、原典では特に武術が出来るわけでもなく、言動が優れているわけでもなく――むしろ色々と困った人物。その宋江をどのように料理するかが、水滸伝リライトの一つの鍵とも言えるほどであります。
 それでは本作の宋江はといえば――

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 こんな展開ありか!? と言いたくなるような、極めて意外な人物。いやはや、これまで色々な水滸伝を読んできましたが、このような「宋江」は初めてであります。

 初めてではありますが、しかしこれはこれで実に面白い宋江像。豪腕ではありますが、原典での謎の一つが解決しているのにも感心させられます。

 そして本作の宋江は、メテオラの設定――混沌と戦い続け、斃れるたびに新たに転生して戦い続けるものの、そのたびに記憶を薄れさせていくという過酷な設定――において、極めて特筆すべき独自性を持っていることもまた、大いに納得させられるところなのです。


 もっとも、いくらこちらが納得したとしても、絶対に納得できないのは林冲であります。彼がこれまでどのような想いで旅を続けてきたかを思えば、それも頷けるところではありますが――しかしいずれは彼も理解することでしょう。

 そして再び始まる魯智深との二人旅。その先に現れる新たなメテオラとは――今後の展開もいよいよ楽しみになるというものです。


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