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2019.09.20

「コミック乱ツインズ」2019年10月号(その一)


 今月の「コミック乱ツインズ」誌は、『公家侍秘録』『江戸の検屍官』の高瀬理恵の連載『暁の犬』がスタート。表紙&巻頭カラーを飾っているほか、レギュラー陣勢揃いのかなりの充実ぶりであります。今回も、印象に残った作品を一つずつ取り上げましょう。

『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 というわけで、作者の本誌初連載作品は、鳥羽亮の初期作品『必殺剣「二胴」』の漫画化という、なかなか意外にして面白いチョイスであります。
 主人公は富田流居合術の道場を営む剣客にして、殺し屋という裏の顔を持つ青年・小野寺佐内。依頼で唐津水野家の藩士を鮮やかに斬ってのけた佐内ですが、その数日後、依頼人が何者かに斬り殺された姿で発見されることになります。
 しかもそれが、四年前に佐内の父が何者かに斬られた時と同じ手口だったことから、俄に不穏な状況に……

 恥ずかしながら原作は未読なのですが、ミステリ味の強い剣豪もので登場した原作者の作品だけに、胴を一太刀で真っ二つに割るという謎の剣の存在が興味をそそる本作。剣戟シーンは冒頭の佐内の殺しのシーン――すれ違いざまに首筋を一撃で斬るという居合ならではの剣――のみですが、さすがこの作者だけに達者な描写で、この先の展開も期待できそうです。
 そしてもう一つ印象に残るのは佐内のキャラクター。金のために人を斬るという裏稼業(しかも父も同じ顔を持っていた)を持ちながら、それを(表面上は)平然とこなし、仲介役との宴席では料理に嬉々として舌鼓を打つ姿が逆に不気味に映るところで、彼のキャラクターがこの先どのように描かれていくのかも気になるのです。


『いちげき』(松本次郎&永井義男)
 薩摩の御用盗に対抗するため、百姓たちを集めて作られた幕府の「一撃必殺隊」を描く本作。本誌に移籍するとほぼ同時に隊の最終作戦――相楽総三暗殺作戦が描かれることとなりましたが、今回でそれもほぼ終結することになります。
 奇襲によって初めは優勢だった一撃必殺隊側でしたが、しかし奇襲の効果が薄れ、薩摩勢が駆けつければ形勢逆転。仲間の半数が斃れた絶望的な状況に、指揮を取っていた元新選組隊士・和田が特攻を仕掛けるのですが――ここでもまた一撃必殺隊側は(そして読者は)絶望を味わうことになります。

 ある者は仲間を逃がすためにその身を捨て、またある者は惨状に狂い(これがまた本当に壮絶な描写)、残った隊士は二人のみ。彼らもまた一般市民からしてみれば御用盗同然のテロリストでしかない状況で、果たしてどのような運命が待つのか――気が重くなる一方なのですが、目が離せない展開です。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 長崎奉行の減員、そして何よりも将軍家後継を巡り、様々な思惑が江戸城内で入り乱れる中、再び新井白石の命で探索を行うこととなった聡四郎。そんな中、これらの状況の中心で糸を引く柳沢吉保は、攪乱のために剣鬼・浅山鬼伝斎を江戸に放ち、道場破りいや道場潰しを繰り広げさせて……

 と、冷静に考えれば(剣豪ものらしい)豪快な手段で江戸市中を混乱させようという企みですが、それが見事に図に当たり、今回の物語は鬼伝斎中心に動いた印象。なるほど、確かに劇中に描かれたように江戸市中の剣術道場には旗本が通っていることもあり得るわけで、それが道場破りで殺されれば大きな騒ぎになることは頷けます。
 そしてその犯人が自分の宿敵であった一伝斎改め鬼伝斎であったと知った聡四郎の師・入江無手斎も覚悟を決めて――ここで江戸の武術界の伝手を辿って対処する無手斎の姿がリアル――という展開となるのですが、無手斎と鬼伝斎、二人の剣客の姿を厳めしさと恐ろしさで描き分けるビジュアルが見事で、この先の激突が楽しみになります。

 しかしそれにしてもおじさん祭りだった今回、特に印象に残るのは、柳沢潰しに奔走する井伊掃部頭の厭らしい表情で――本当に本作はこういう表情を描かせてもうまいと感心いたします。


 まだまだ取り上げたい作品がありますので次回に続きます。


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コミック乱ツインズ 2019年10月号[雑誌]


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