士貴智志『どろろと百鬼丸伝』第2巻 入り乱れる因縁 どろろと百鬼丸と多宝丸と
士貴智志による新たなどろろと百鬼丸の物語――『どろろと百鬼丸伝』の第2巻であります。第1巻の時点では(少なくとも物語の骨格において)原作にかなりの部分忠実だった本作ですが、この巻では人間関係の点において大きく飛躍を開始。あの人物が、この人物が、意外な形で関わりあうことに……
戦国の世を一人彷徨い、各地で死霊と戦いを繰り広げてきた剣士・百鬼丸と、そんな彼の刀を狙うと称してつきまとうバイタリティ溢れる泥棒のどろろ。
怪物・万代が支配する村での死闘の末、万代を倒したものの村人からは石もて追われた二人ですが、突然百鬼丸の体に異変が起きて――という前巻ラストの展開を受けて、どろろは(「女装」したまま)百鬼丸の看病に追われることになります。
そんなどろろと深い霧の中で出会ったのは、百鬼丸とあまり年の変わらぬ、しかし身なりの良い青年。どろろに興味を持ったらしい青年は、去り際に自らの名を告げていきます。多宝丸、と……
そう、ここで登場したのは醍醐景光の息子であり、すなわち百鬼丸の弟である(というのはこの時点では作中ではわからないのですが)多宝丸。原作に比べるとずいぶんとシャープな(特に眉の辺りが)ビジュアルとなりましたが、それはさておき彼がまずどろろの方と出会うことになるとは――意表を突かれた展開です。
しかし真に驚かされるのはこれからであります。どろろの求めで自らの過去を語ることとなった百鬼丸――いかなる理由によるものか、目も鼻も、手も足もない赤ん坊として生まれ、川を流されてきた彼は、火袋という男に拾われ、その妻・お自夜に乳を与えられたというのであります(!)。
そして火袋とお自夜が赤ん坊を医師・寿海に診せたことをきっかけに、三人に育てられることとなった赤ん坊。
ある出来事によって火袋たちが姿を消した後も、寿海は父親代わりとして子供に新たな体を与え、慈しんできたのですが――しかしその前に現れたのは奇怪な死霊。襲い来る死霊から必死に逃れる二人を助けた者は、そして百鬼丸に道を示した者は……
他の部分がそうであったように、この過去の物語においても、本作は基本的には原作の内容を踏まえて展開していくことになります。しかし火袋とお自夜が、そしてあの謎めいた人物が百鬼丸の過去に関わっていたというのは、もちろん本作のオリジナル展開。
もちろん、このアレンジがこの先何を生み出すことになるのか――いや、このアレンジにどれだけの意味があるのかはまだわかりません。少なくとも火袋たちについては単なるスターシステムの可能性が――ないですね、どう考えても。
いずれにせよ、百鬼丸もどろろも思いもよらぬところで、深く結びついていた二人の過去。正直なところ、あの人物の正体を含めて、この辺りの絡め方については賛否があるのではないかとは思いますが――しかしそれが本作ならではの、新たなどろろと百鬼丸の物語の個性であることは間違いないでしょう。
そしてそれはこの先の物語でも同様であります。旅の末、国境の巨大な壁「ばんもん」を越えようとした百姓たちを見せしめに殺す侍たちに、怒りを見せるどろろと百鬼丸。
しかし思わぬ理由から苦戦を強いられることとなった百鬼丸はどろろと引き離され、そして侍に攫われたどろろは、そこで再び多宝丸と再会することとなります。どろろが見た多宝丸の思いもよらぬ姿とは。そして多宝丸が抱えたある秘密とは、それに関わるある人物とは……
言うまでもなく、百鬼丸とはある意味最も深い因縁で結ばれた――その割に原作では比較的あっさり退場した――多宝丸。しかし本作においては、百鬼丸と多宝丸は、原作を遙かに上回る形で結びついている、いや対峙しているといえるでしょう。
そしてその間に挟まれる形となったどろろは、あたかもヒロインのような立ち位置で――というのもあながち冗談ではないのかもしれませんが、何はともあれ、百鬼丸と多宝丸の、そしてどろろの原作以上に濃い関係性が、この先の物語を動かしていくのでしょう。
と思いきや、思わぬところであの妖刀までもが登場。いよいよ原作とは大きく異なる方向に歩み始めた本作が何を描くのか――この先がこれまで以上に気になります。
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