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2019.10.21

伊藤正臣『恋とマコトと浅葱色』第1巻 前代未聞!? 原田左之助と女子中学生、スマホ越しの純愛


 女子学生がタイムスリップして、歴史上の人物と大恋愛――というのは、もはや珍しくはない趣向かもしれません。しかし本作は、あの新選組の原田左之助と、現代の女子中学生がスマホ越しに純愛を交わすという意表を突いた物語。歴史監修を山村竜也氏が務めるという点でも大いに気になる作品です。

 修学旅行で京都に行くこととなった東京の中学2年生・マコト。特に歴史に興味がなかった彼女が、歴女の親友に連れて行かれたのは八木邸――あの新選組の屯所があった地であります。
 が、マコトにとっては新選組も全く知らない過去の人々、特に感慨もなく中を見ていたのですが――庭に落としたスマホに雷が落ち、頭を打って気絶してしまう瞬間、彼女はスマホの画面に映ったイケメンの侍を目撃したのでした。

 幸い体には別状はなかったものの、スマホの画面を見てみれば、そこに映っているのは見知らぬ時代劇風の町並み。それが気になって病院を抜け出し、夜の八木邸に忍び込んだ彼女は、画面の中で斬り合いをしている男たちを目撃することになります。
 そしてそのうちの一人こそは、あのイケメン侍――仲間にサノスケと呼ばれる彼が、強面の侍と斬り合う中で窮地に陥ったのを目撃した時、思わず声を上げてしまったマコトですが、それがサノスケの命を救うのでした。

 思わぬ救いの声に驚くサノスケ。実はマコトのスマホのように、サノスケの脇差の刀身にも、彼女の姿が映っていて……


 というわけで、実際に心身が過去の時代にタイムスリップするのではなく、何故か繋がってしまったスマホと脇差を通じて、現代と幕末に生きる二人が出会うという本作。
 アイテムを通じて過去の時代と交信する――という趣向自体は他の作品にもあったかと思いますが、もちろんそれを現代の女子中学生と新選組とで描いてみせたのは、おそらく、いやまず間違いなく本作が初めてでしょう。

 というより、タイムスリップ時代劇には慣れたつもりのこの身でも、流石にこの展開は全くの予想外ですが――これがなかなか面白い。
 理屈としてどうなのか、という気持ちはもちろんあります(あと左之助、さすがに女子中学生はどうなのか、とも)。しかしスマホの画面に映るといっても、いつでも通信できるわけではなく、ある一定の条件下でしか相手が映らないという設定によって、会いたくても会えない――という恋愛ものにはある意味必須のシチュエーションを、自然に(?)生み出しているのには感心させられます。


 そして個人的に何よりも気になるのは、冒頭に書いたとおり、本書の歴史監修が山村竜也氏であることであります。
 『新選組!』『龍馬伝』『八重の桜』といった幕末ものの大河ドラマの時代考証を担当し、また時代漫画『新選組刃義抄 アサギ 』の原作者――要するに幕末ものの考証では第一人者である氏。同時に『天保異聞 妖奇士』や『活撃 刀剣乱舞』の時代考証を担当していることからも分かるように、フィクションに対する許容度を持ち、それに合わせた考証ができる人物であります。

 それが本作でどのような役割を果たしているのかは、もちろん(?)明確に見えることはありません(考証や監修とはそういうものでしょう)。
 しかし本作ではあの八木邸の鴨居の傷を左之助がつけていたり、本作の冒頭で予告されるラストシーン――台場で倒れる左之助――など、独自の設定を見ても、そこに一定の理由があるのだな、少なくとも全くの嘘ではないのだな、と思えるのは、物語が物語だけに、大きな効果を持つと感じるのです。


 さて、史実では原田左之助が没したと言われるのは1868年。八木邸で芹沢鴨が斬られた1863年から5年後であります。
 すぐ上で述べたように、本作の冒頭で描かれるのは、少し成長したマコトが台場での左之助との別れを回想する場面。本作ではマコトと左之助が別の時代にいながらも、経過する時間は同じという設定のようですが――だとすればこの先5年間何が描かれるのか。

 時間はもちろんのこと、東京と京都という空間的にも分かれた二人が、この先どのように再会し、そして恋を育むのか(あと左之助、妻子のことはどうするのよとか)、大いに気になるところであります。


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