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2019.10.04

八房龍之助『宵闇眩燈草紙』五・六・七 激闘シホイガン! そして終わらない日常へ


 三人のアウトローを狂言回しとした連作伝奇ホラー漫画も後半戦。大乱戦となった寄群編も終わり、いつも通りの日常を取り戻したかに見えた三人ですが、(うち一名は)遠くアメリカで再び死闘を繰り広げることに――というわけで、一大スペクタクルのシホイガン編とその他の物語の紹介であります。

 魚人の里・寄群での人魔入り乱れての大混戦の末、京太郎が連れ帰った金髪の少女。
 怪道士・馬呑吐に一族を滅ぼされた末に紆余曲折を経てアタッシュケースに閉じこめられていたところを京太郎に救われた彼女は、成り行きから彼の家の居候2号となり「椎名さん」の名を与えられるのでした。

 かくて一人増えた暇人どもですが、京太郎がヘンな悟りを開いたり、虎蔵が謎の拳銃・サンダラーを巡って怪ガンマンと死闘を繰り広げたり、美津里の冒涜的な美貌の秘密が明かされたり、京太郎と虎蔵と椎名さんが幽霊屋敷でヒドい目にあったり――と、それなりに賑やかで楽しい(?)毎日を送ることに。
 しかし美津里からの貨物の護衛の依頼&サンダラーの調査のために渡米した虎蔵は、そこでとんでもない騒動に巻き込まれて……


 というわけで単行本第6巻から第7巻前半にかけて描かれるのは、長編エピソード、シホイガン編こと「まれびとのうた」です。

 美津里からの貨物が運び込まれたアメリカの地方都市、シーボイガンならぬシホイガンで、以前日本での事件で顔を合わせたからくり人形師の大澤操と出会った虎蔵。さらにこの街の腕利きのガンスミス・ピーターを訪ねた彼は、そこで昔なじみの黒人ガンマン、ムーチー・マーディガン(ムチュ)と再会するのでした。
 ギャングから嫌がらせを受けている密造酒場の母子を守っているムチュを、暇つぶしがてら手伝う虎蔵。しかしこの街を牛耳り、ギャングの背後にいるストダート社では、操が社の技術顧問・黄人戴と何やら怪しげな研究に勤しんでいるではありませんか。

 さらにストダート社は、街で古い歴史を持つサン・マルトレイク教会とも対立。迫り来る嵐の中、それでも表面上は平穏さを保つシホイガンですが――しかしギャングが、そして武装シスターたちが酒場を襲撃したことで一気に均衡が崩れることになります。
 さらわれた酒場の子・マイケルを救い出すため、教会に殴り込みをかけるムチュと虎蔵。しかしその時恐るべき儀式が街を揺るがして……!


 かくてここから始まるのは、修験者・道士・ガンマン・アンドロイド・忍者に巨大ロボットや怪獣までもが入り乱れる大混戦であり、平行して描かれるのが、これまた大仕掛けな伝奇ネタの数々。
 シホイガンに眠る、先住民たちが隠してきた禁断の秘密とは。一連の事件は誰が、何のために仕組んだのか。この混乱を鎮める術はあるのか――これでもかと詰め込まれたガジェットと謎の数々を、ド派手なアクションで流し込まれるのですから、楽しくないはずがありません。

 相変わらず虎蔵を含めた登場人物のほぼ全員が外道ということもあって、繰り広げられるのは惨劇としかいいようのない状況なのですが――しかし散りばめられた伝奇的センスが、アクション描写の巧みさが、それを良い具合に中和しているのも、これまで通りであります。(それでいて、教会に殴り込みをかける前野ムチュと虎蔵のやり取りが抜群に格好良いのも心憎い)

 そしてシホイガン地下で最初に虎蔵たちを襲う怪現象の描写や、サンダラーを狙う怪ガンマン・Mr.ビリー(その正体は何と!)と対決する虎蔵が語るガンマンの怖さ、そしてムチュが見せる破天荒なガンアクションなど――個々の素材の持ち味を殺さず、それでいて一つの世界としてきっちりと成り立たせる様を堪能させていただきました。。
 更に言えば、題材的に比較的展開が分かり易かった寄群編に対して、このシホイガン編は本当に後半になるまで何が起こるかわからない展開だったのには脱帽であります。


 そして舞台は再び日本に移り、これまで唯一謎だった椎名さんの秘密が明かされた末に結末を迎える本作。あっさりといえばあっさり、ひとまず落ち着いたものの根本は何も解決していない、問題先送りといえばそれまでの結末なのですが――それはそれで実に本作らしい、と言うほかありません。

 これまで同様、どんな騒動が起きようと、どんな怪異が起きようとも、この三人+一人はいつも通りに伝奇で怪奇で悪趣味なその日暮らしを送っていくのだろうな――と、ちょっと微笑ましく感じてしまうのは、もうこちらがすっかり染まってしまったということなのかもしれませんが……


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