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2019.10.23

冬目景『黒鉄・改 KUROGANE-KAI』第3巻 この世に寄る辺なき者たちの交感


 鉄仮面の渡世人・迅鉄と喋る刀・鋼丸の新たな旅も早くも3巻目、第1巻から続いてきたエピソード「底根國の天探女」もクライマックスであります。謎の一団に付け狙われることとなった迅鉄と、彼らに捕らわれた丹――思わぬ厄介事を背負い込むこととなった二人の運命は、そして敵の正体は?

 無頼の人生の末に命を落とし、ある蘭学者によって復活した少年渡世人・鋼の迅鉄。失った声を補う喋る妖刀・鋼丸と二人(?)、旅から旅の暮らしを続ける彼は、奇妙な刺青を入れた三度笠の一団・灰土隊に再三襲撃を受けることになります。
 その途中出会った旅芸人の姉妹とすったもんだあった末、迅鉄は故郷に旅する二人と同行することになるのでした。

 一方、迅鉄とは腐れ縁の少女渡世人・紅雀の丹も、同じ灰土隊の襲撃を受けることになります。怪しげな学者・狩野久作の助けを得た丹ですが、しかしこれまた色々とあった末に、灰土隊の女武芸者・瑠璃との対決の末に傷を負った彼女は、囚われの身に。
 瑠璃に世話を受けながら、脱出の機会を探ろうとする丹。そして迅鉄の前には、丹の行方を知るという渡世人が現れます。かつて灰土隊に潰された一家の仇討ちをしたいという渡世人と行動を共にする迅鉄たちですが……


 というわけで、灰土隊、旅芸人姉妹、久作とそれぞれの思惑を秘めた人々に振り回されてきた迅鉄と丹。その二人が巻き込まれた事件の全貌が、この巻でようやく見えることになります。

 丹が瀕死の役人から手に入れた謎の書状を狙い、襲撃してきた灰土隊。それだけでなく迅鉄のことまで狙う彼らの背後にいる存在が登場、この物語にしては珍しく(と言っては何ですが)大きな時代のうねりが背景に存在することが明らかになります。
 そしてそんな灰土隊にも、彼らなりの戦う理由が明らかになるのですが――これもまた、それまでそれらしき要素は伏せられてきただけに、なかなか意外な展開であります。

 そしてクライマックスには迅鉄の派手な立ち回り(そして暴走)も描かれ、エピソードのクライマックスの印象も強いこの巻。第2巻で気になった物語の展開も、一気と収束に向かった感があります。


 しかしこの第3巻の中で強く印象に残ったのは、実は物語の本筋以上に、丹と瑠璃の不思議な交感の姿であります。

 灰土隊の紅一点として登場した瑠璃。その武芸は丹はおろか、迅鉄と互角以上の腕前の彼女ですが、しかし彼女を最も特徴付けているのは、その異国人のような風貌でしょう。
 実は彼女は長崎の異国人と日本人の女性の間に生まれた娘。それ故に、同じ隊の仲間との間にもどこか溝のある存在であります。

 そんな彼女が、丹の世話役となったことで、図らずも互いのことを知るようになるのですが――仲間からも、そして何よりもこの国からも疎外されてきた彼女と、渡世人としてやはりこの世に定住の場所もない丹、ある種の共通点を持つ二人の間に、一種共感めいたものが生まれていく姿には、何とも言えぬ味わいがあります。

 一つの物語としての展開や、「時代劇」的な要素以上に、この二人の姿に本作らしさ、作者らしさを感じてしまうというのは、穿った見方かもしれませんが――しかし迅鉄も含め、生き辛さを抱えた者たちが、それでも必死に自分の道を歩いて行こうとする姿には、渡世人ものとしての本作の在り方と重なって、物寂しくもどこか不思議な温かみを感じさせるのです。


 と、何はともあれ一つの戦いは終わりましたが、旅芸人姉妹との旅はまだまだ途中、そして久作の意図もまだまだ謎だらけ――まだまだ迅鉄、そして丹の旅はこの先も続くのであります。


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