『無限の住人-IMMORTAL-』 十二幕「終血 しゅうけつ」
行き倒れたところを、仇である天津に救われた凜。しかし天津は幕府の罠により、加賀の心形唐流の門弟たちに追われる身の上に破傷風に犯されていた。そんな天津と行動を共にする凜だが、心形唐流の門弟たちに捕らわれ、天津ともども刃を向けられる。が、そこに万次が、凶が、槇絵が現れ……
まだしばらく続くかと思われたものが、急転直下、いきなり今回でほぼ完結することとなった加賀編。いや、実際には加賀の場面は描かれず、天津の口から顛末が語られただけなのですが……
その顛末とは、そもそも加賀の剣術流派・心形唐流が一門を上げて逸刀流の傘下に入りたいと望んだことから始まります。それ自体は当主の純粋な望みであったようですが、しかしそれに目を付けた幕府は、逸刀流壊滅の罠として流派に圧力をかけ、その結果当主とその娘は命を落とすこととなったのでした。それ故に門弟たちは天津を二人の仇として、血眼で付け狙っていたのであります。
と、このアニメ版では天津の口からサラッと数秒で語られたこの部分、原作ではかなり丹念に描かれていたため、この大胆な省略には不満を持たれる方も多いのではないかと思いますが――個人的には他のエピソードに比べれば比較的(あくまでも比較的ですよ)に重要度は低いわりに結構ボリュームがあったため、話数が限られている場ではオミットもやむなしかな、とは思います。
個人的にはむしろ槇絵が白川郷にいる――それも全てに絶望してほとんど自傷行為の形で自分の手を封じ、春をひさいで暮らしていた――理由が描かれていなかったのこそ違和感があったのですが……(かつて母と自分を捨てた父を殺そうとして果たせず死なれてしまった絶望からという流れ)
まあ、このアニメ版では天津は妻帯しなかったので、その点は槇絵にとっては良かったのかもしれない――か?
さて、それはさておき、やはり今回のキモとなるのは、思わぬ成り行きでともに旅することになった凜と天津の姿でしょう。
前回ラスト、自分に救いの手を差し伸べたのが、自分が追いかけていた天津本人だったのに滅茶苦茶驚いていた凜ですが、しかし天津は自分を仇と狙う凜のことを大して気にも止めていない様子であります。
元々、以前出会った際にも凜のことを殺そうとせず、むしろ彼女が精神的に自分たちに近いことを感心して(喜んで)いた天津。今回もそれはあるかもしれませんが、しかしそれ以上にいきなり気弱なことを言い出したのは、信じていた、いやようやく認められたと思った幕府に裏切られたためか、はたまた本来であれば無関係であった心形唐流の娘を巻き込んでしまった悔恨からか……
いずれにせよ、凜にとってみれば全くもって勝手な話で、反撃してこない天津をボコるのも無理はない話であります。しかしそんな凜であっても、天津が病で弱り、そしてかつての自分の両親のように、多勢によって嬲り殺しにされようとしているのを見過ごすことはできなかったのであります。
それどころか、折りよく現れた万次に助けるよう(結果的に)依頼してしまうのは、もちろん彼女の甘さであることは間違いありません。しかしそこには、同時にある種の希望の姿があると感じられます。
剣のために周囲の犠牲を省みない剣士でも、己の楽しみのために殺す獣でもなく、人を殺し殺されることに躊躇い悩む人間であろうとする――これまでの復讐行を辿りながらも、なおその生き方を選んだ凜の姿は、堂々巡りのようでいて、しかし確かに一つの到達点であり、本作の(おそらくは)折り返し地点で描かれるに、まことに相応しいものであったと感じます。
そしてそれこそは、万次が――凜の選択を聞いたときの嬉しそうな姿が印象的であります――凜の用心棒であり続ける一つの理由なのでしょう。
が、その感動的な選択のために、ほとんど当て馬状態となってしまった心形唐流の門弟たちこそいい面の皮。
天津を襲った場所が悪かったか、万次に続いて凶が、さらに槇絵が――と、本作でも最強に近い面子が次々と現れるのにはちょっと笑いがこみ上げていくほどであります。さらに彼ら自身のドラマが省かれたために、そのあっけない散り様に単なる斬られ役以上のものが感じられず、ある意味逆説的に無惨さを感じさせる結果となっているのを何と表すべきでしょうか。
そして、今回のラストが何だか非常に良い感じにまとまったので忘れそうになりましたが、そういえば幕府の役人に招かれて宴会に興じていた逸刀流剣士たちはどうなったのか――まだまだ悲劇は続くようであります。
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