たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第2巻 決戦開始!? あの男が戦場に立つ
奮戦空しく蒙古軍に追い詰められ、蹂躙された対馬。その地獄を生き延び、なおも戦いを続けようという朽井迅三郎の戦いを描く『アンゴルモア 元寇合戦記』のシーズン2とでも言うべき『博多編』の続巻であります。ついに九州本土に蒙古軍が上陸した中、あの男が戦場に立つことに……
多大な被害を与えた末に対馬を離れた蒙古軍。彼らにとっては対馬はあくまでも行きがけの駄賃、真の目標は九州本土にあります。しかし日本の武士たち、すなわち鎌倉幕府の御家人たちも博多を中心に集結、ここに全面対決の火蓋が切られ――ない。
数だけはそれなりのものが集まったものの、。それぞれがそれぞれの士族を代表する彼ら御家人たちには、統一された指揮系統も、協力の意志もなかったのであります。
太宰少弐の威光も及ばず、烏合の衆状態の日本軍を後目に、次々と橋頭堡を築いていく蒙古軍。しかし本隊が動かない中、赤坂山の守備していた菊池家の武士たちが立ち上がり……
と、前の巻での嫌な予感(というよりわかりやすい前振り)は現実のものとなり、いざという時に動かない日本軍の無為無策が描かれるこの巻。この辺りは基本持ち出しで参加、活躍して報奨が得られなければ戦う理由がない――という、御恩奉公のネガティブサイドが出たのかもしれませんが、迅三郎の、いや対馬の人々の苦闘を思えば、腹立たしい限りであります。
そんな中でも菊池家は、幸か不幸かそうした武家間の争いから半ば弾き出されたが故に、武功を上げたわけですが――ここにもう一人、己の武功を見せんとする男が現れます。
その名は竹崎季長――日本史の教科書でおなじみの「蒙古襲来絵詞」を残した人物です。
が――本作に登場する季長は、武士としては底辺の、かなりマズいキャラクターであります。
貧乏御家人ながら妙にプライドが高くて人に頭が下げられず、食うや食わずの生活で実家に寄生中。同年代の周囲の武士たちがきちんとした仕事と家族を持っている姿を前に、思わず身を隠してしまうという――何でこんなに生々しいんですか(どちらかというと『なまずランプ』にいそうな……)。
それはさておき、それでも武士としての最後の誇りは捨てられない季長にとって最後の賭け、一世一代の大勝負の場がこの戦。名だたる名門武家が動かないのであれば俺が行く、と言わんばかりに先駆けを仕掛け、それがついに人々を動かし……
と、このくだりは、どん底のキャラクターの逆転劇としてなかなか良い話にも思えるのですが、やはり彼も鎌倉武士。蒙古軍の首級を掲げて帰ってきた菊池家の姿に「なんとすずやかな姿か…」と感涙する姿には、どうリアクションすればよいのか、現代人の自分としては少々戸惑ってしまうのであります。
さて、そんな新たなヒーロー(?)が誕生した一方で、高麗軍の軍船に密航して九州本土を目指す迅三郎は、思わぬことから発見されて船上で大立ち回りすることになります。
普段はインテリ然としながら、切れると剛力で刀を無茶苦茶に振り回すという高麗軍の偏執狂的指揮官――本作はこういう形で敵方のキャラを立ててくるのが正直馴染めないのですが――相手に死闘を繰り広げる羽目となった迅三郎。
そんな彼の思わぬ救い主となったのは、命知らずにも奇襲を仕掛けてきた地元の海賊、いや御家人衆だったのですが――その頭領というのが、別の作品からやってきたような勝ち気な美少女というのにはさすがに驚かされます。
そして一難去ってまた一難、島抜けした流人扱いで彼女に捕らえられた形で、九州に連行されることとなった迅三郎ですが、彼にとってはまさに渡りに船であります。
このまま九州での戦いに参戦することができるのか、そしてようやく立ち上がった御家人衆たちの戦いの行方は――ここからがようやく本当の戦い、と言うべきでしょうか。
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