白石純『魍魎少女』第1-2巻 魍魎以上の化物師弟の戦う理由
この世に巣くう魍魎を種にして売る「魍魎屋」を営む少女・林檎丸。彼女はその傍ら、数百年前に同業者である八房の手で七つに分けられた師匠・雪之条の体を探す旅を続けていた。時は流れて大正時代、師匠の体を二つ目まで集めた魍魎丸の前に、八房と謎めいた少年・チカが立ちふさがる……
大正時代というのは、明治と昭和という近代と現代の間に挟まれた境界の時代である点が魅力ということか、短い割に様々な物語の舞台となっていますが、この奇怪な物語もその一つと言えるでしょうか。
もっとも事の起こりは戦国時代(実は更にその前から)、幕末を経て大正に至るという、時間的なスケールが大きい物語であります。
本作のタイトルロール・魍魎少女とは、主人公である和装の少女・林檎丸のこと。オッドアイで毒舌家、そしてこの世に蠢く様々な化け物・魍魎を捕らえて丸め、「種」にしてその力を求める人々に売りさばく「魍魎屋」を営む少女という、実に個性的なキャラクターであります。
そんな彼女の真の目的は、戦国時代にバラバラにされ、今は手元に欠片しか残らない師匠・雪之条の体を探しだし、復活させること。幕末に人々を悩ます無頼の侍たちの頭目が鬼の左目を持つという噂を聞いた彼女は、魍魎に取り憑かれた彼らを文字通り粉砕し、ようやく師匠の左目を取り戻して――というのが第1話ですが、これはまだプロローグに過ぎません。
そこから時は流れて大正時代、様々な曰く付きの品を預かってきた寺に師匠の左腕を取り戻すために訪れた林檎丸は、寺の僧たちだけでなく、奇怪な魍魎を向こうに回して乱戦を繰り広げて――と、そこでも繰り広げられる大立ち回り。人間の倫理観などないように暴れ回る林檎丸の戦いは、彼女を上回る戦闘力を持つ少年・チカや、銀座に潜み無数に増殖していく魍魎などを相手に続くことになるのであります。
というわけで、小さい姿で自分の体よりも大きなノコギリを振り回しては敵を解体していくという、剣呑なヒロインの大活劇が繰り広げられる本作。
個人的にはあまりこうしたヒロインには興味がないのと、キャラクター的にもあまり大正時代に似合った絵と思えない(特に預かり寺の住職のビジュアル)のがピンとこないところでしたが、数多くの敵が入り乱れて――というより無双系のバトルを、破綻を感じさせずに描くのには感心いたします。
そしてそれ以上に面白いのは、果たして何を考えているのかわからない師匠・雪之条の存在。林檎丸との情愛があるようなないような関係性もさることながら、バラバラにされて体の大半を失っても妙に明るいその個性が、魍魎以上に化け物じみていて印象に残ります。
そしてその印象をさらに強めるのは、彼の宿敵であり、その身をバラバラにした張本人――すなわち今のところラスボス候補の八房が第2巻で語る、彼らの過去の物語であります。
ともに室町時代から生き続け、不死とも言うべき異常な生命力を発揮するのは何故か。林檎丸とは何者でいつ生まれたのか。そして何よりも、二人の過去に何があって、何故殺し合うことになったのか……
ある意味「信用できない語り手」ではあるのですが、八房の語る内容は、それまで本作で描かれてきたものが裏返るような――それでいて、上に述べた印象を踏まえれば妙に納得がいくもの。こんなところにどんでん返しが用意されていたとは、と大いに驚かされた次第です。
果たしてそこからまたどんでん返しがあるのか、はたまたこのまま突き進んでいくのか――主人公側の方が常人には害のありそうな奇怪な師弟の戦いは、まだ序盤のようであります。
| 固定リンク


