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2020.03.07

『無限の住人-IMMORTAL-』 二十一幕「陥穽 かんせい」

 尸良との死闘で力を使い果たした万次に刃を向ける練造。しかし彼の前に立つ凜の覚悟と、周囲の言葉に、練造は刀を手放す。一方、追っ手を足止めするためただ一人残った果心居士を追う杣燎と伴殷六ら六鬼団だが、数で勝りながらも山中に仕掛けられた罠によって次々と討たれていく……

 前回の尸良との壮絶な決着のエピローグとも言うべき練造の物語と、燎・伴殷六組vs果心居士の対決が描かれる今回。物語的にはある意味脇筋かもしれませんが、しかし「父と子」という点から見ると、なかなか興味深い展開ではあります。

 万次と凜、目黒とたんぽぽ、凶という三勢力が呉越同舟のところに、刀片手に殴り込んできた彼は、万次に対し、以前(死を偽装した)凜が持ってきた右手と、江戸城地下で練造が拾った左手、どちらも自分のものだから両腕を斬らせろと、無茶苦茶にもほどがあることを言い出す練造。
 しかし所詮はド素人の練造に対して、目黒も凶もほとんど放置状態なところで、ただ一人彼の言葉を受け止めてみせたのが凜であります。代わりに自分の腕をくれてやる、それでも万次なら自分のことを目的地まで連れて行ってくれる、という凜の啖呵の前に圧倒された練造は、ただ嗚咽するのみであります。

 前回描かれたように万次と尸良の二人が、人斬りという点においてはある意味似たもの同士であり、そして人の情の有無という点では全く対照的な存在であったことを思えば、凜と練造もまた、同様な関係性にあると言えるでしょう。しかしどちらも(自分たちにとっては)理不尽に親を奪われ、その末に人斬りと行動を共にすることとなったにもかかわらず、その歩んだ道のりはやはり全く対照的と言うほかありません。
 その二人を分かったものが、上で述べた万次と尸良の違いであることは間違いありませんが――しかし今回の描写を見ていれば、それ以上に理不尽な現実への覚悟の違い、受け止め方の違いであったと感じます。

 自分を襲った理不尽との戦いの末に引き起こされた流血の落とし前を(文字通り)自らの手でつけようとした凜と、自分を襲った理不尽な現実から目を背け、その真実を知ろうとしなかった練造。もちろん繰り返しますが、それぞれの辿った道のりには運としか言いようがないものが影響していたとはいえ、その先を切り開く覚悟の有無が、大きな違い――例えばそれは今回見られたような万次に対する凜の信頼であり、尸良に対する練造の依存であるわけですが――を生んでしまったのだと感じさせられます
 そして練蔵のその態度の根元にあったものが、過去の所行を隠してきた父・川上新夜の態度にあったとすれば、それもまた練造を想った行動でもあるだけに、何とも言えない皮肉を感じるのであります。


 さて、父との関係性という点で今回もう一人当てはまるのが燎でありますが――その姿は凜たちとは異なる、言ってみれば非常に拗れたなものとして描かれます。吐鉤群の庶子であった彼女にとって、吐は普通の子から見た父がそうである以上に、絶対的に仰ぎ見るべき存在であり――そしてその父のために自らの命を擲つことが、彼女にとっての喜びであり、自分が子である証なのですから。
 そんな彼女の心理が、(結構素顔は気のいいおっさんぽい)伴殷六には理解できないのはむしろ当然というべきかと想いますが――しかし果心居士との対決の中で、正気を維持するために自分の足を打ち抜いてみせるほどの伴の一種のプロフェッショナリズムでも及ばなかった居士の幻覚を打ち破ってみせたのが、その一種狂気めいた父への想いであったというのもまた事実であります。

 しかしこの戦いの後、戦いに身を投じることが自分の子としての務めと思い定めていた彼女は、戦いから離れ女として吐家の血を継がなければならないという運命を突きつけられることになります。それは、鉤群の子でありながら吐家の人間足り得なかった彼女にとってはあまりに皮肉な運命であり――そして彼女が自分に与えていた「父のために死ぬ子」という特別な立場を奪い去るものだったと言えるでしょう(更に言えば、ある意味彼女をそこに追い込んだのは、「父のために死んだ子」である嫡男なのです)。
 そう考えれば、満身創痍の彼女がそれでも戦場に戻ろうとした無謀の意味が、少しは納得できるというものであります。


 と、こういう切り口からは全く触れることができなかったのですが、今回やたらと前衛的な幻覚をまとって大活躍した果心居士というキャラ、山の民という出自はともかく、山中という特定すぎるフィールドでその力を最大限に発揮するその戦闘法で、どうやって逸刀流に加わったのか。そして加わろうと思ったのか。謎が多すぎる人物であります。


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 無限の住人

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