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2020.04.26

殿ヶ谷美由記『だんだらごはん』第6巻 新たな一歩を踏み出した若者たちの真実と嘘

 「食事」を題材にして新選組を描く異色の青春模様『だんだらごはん』の最新巻であります。これまで芹沢鴨の横暴と攘夷派の暗躍に苦しめられてきた斎藤一と試衛館組ですが、この巻においてついに新たな一歩を踏み出すことになります。「新選組」の誕生、そして芹沢との別れという形で……

 京で浪士組に参加した試衛館の面々と再会し、再び仲間に加わった斎藤一。しかし芹沢一派の暴走は続き、その一方で会津候追い落としを狙う長州や公家たちの暗躍もまた続くことになります。
 そんな中でも会津候を支えるために懸命に奮闘してきた斎藤たちですが、ここで大きく運命が動き出すことになります。尊攘派の公家と長州勢力を御所から排除すべく幕府が兵を動かした、いわゆる八月十八日の政変――ここに壬生浪士組も参加することになったのであります。

 ここでの成果によって新たな名を――「新選組」の名を与えられた壬生浪士組。しかしそれと時を同じくして、会津藩から近藤たちにある命が下されることになります。それは大和屋の焼き打ちなど横暴を極めた芹沢一派の排除……


 というわけで大きな動きが描かれることとなったこの第6巻ですが、ここまで引っ張ったわりには、存外芹沢の退場はあっさりしていた――という印象があります。
 その代わりというべきか、本作においては、ある男の姿を通じて、一つの結末を描くことになります。芹沢とは旧知の間柄であり、そして彼の身を深く案じていた男・永倉新八を通じて。

 神道無念流の同門として芹沢と出会い、明日を考えぬような彼の暴走に心を痛めていた永倉。何とか芹沢を救えないか、一度は斎藤を頼ったこともある永倉ですが――しかしその想いは空しく、芹沢は土方らによって暗殺されることとなります。
 永倉はその企てを知ることなく、そして暗殺は新選組に潜入した長州の間者によるものとされたのですが――その「真実」を前に永倉が取った行動が何であったか……

 「真実」の陰にあるものを知りながら、それでも仲間の「嘘」を信じる道を選んだ永倉の姿には、芹沢という男への手向けとして、何とも言えぬ余韻が残るのです。


 ――と、史実をなぞりながらも、青春ものの色濃い展開が印象に残るこの巻ですが、その一方で本作の最大の特徴である「食事」の要素が薄めになっているのは残念なところではあります。
 もちろん、八月十八日の政変前の待機時に賑やかに焼きおにぎりを食べる場面や、年越しの煤払いが終わった後のくじら汁、そして永倉と芹沢の思い出の――と食事は「日常」の象徴として登場しているのですが……

 新選組が誕生したこの先、彼らに日常がどれほどあるというのか――いや、戦いが日常となっていく中で、食事がどれだけ描けるのか、それはわかりません。
 しかしそれでもなお、本作が戦いだけでない若者たちの姿を描くものであるとすれば、そこに日常の、食事の余地があると信じたいところであります。


『だんだらごはん』第6巻(殿ヶ谷美由記 講談社KCxARIA) Amazon

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