「サムライねこぱんち 花の陣」(その二)
時代劇版「ねこぱんち」の新刊「サムライねこぱんち」の紹介その二であります。
『勤番侍、猫をかう。』(北見明子)
成り行きで捨て猫を一両で買ってしまった勤番侍・忠次郎の奉公人・平次。生真面目過ぎる忠次郎を心配する平次ですが、ある日、「きんす」と名付けられた件の猫が何者かに盗まれて……
タイトル通りの内容なのですが、勤番侍という、現代人には親しみがあるようでないような題材を用いつつ、いつの世も変わらない若者たちの明るく賑やかな姿が楽しい本作。
主を慮る平次と、しっかりしているようなしていないような忠次郎の関係性も楽しく、一両で買ったことから猫を「きんす(金子)」と名付けたことで騒動が更に大きくなる展開も愉快でした。
そんなわけで個人的に完成度的には本誌で随一の印象なのですが、勤番侍が自分の奉公人をわざわざ連れてきていたのかな――という点は、ちょっと気になりました。
(あと、吉原行って門限破るのは明確に許されない行為かと……)
『自由を駆ける猫』(ひるのつき子)
祝言を間近に控えたより姫から、自分を誘拐して欲しいとせがまれた警護役の伊太郎。請われるままに、森の中にやってきた伊太郎に、姫が告げた言葉とは……
説明が遅れましたが、「刀剣 男の戦い」と「姫と武士」の二つの特集(括り)に分かれる本書の収録作品。
本作はその後者のトップバッターですが、自由に生きる猫に憧れを抱く姫君と、若侍の悲恋ものと思わせておいて――という展開には思わず言葉を失うことになります。
まさか本誌でこのような物語になるとは! とそれまでの二人の言葉・態度が全く別の意味を持って見えてくる展開にはただ脱帽。これはよい時代ものであったと感じます。
『珠と鉄 猫姫活劇譚』(津月薫)
戦国時代末期、城を落とされ、一人落ち延びることとなった武士・壱鉄。彼は今際の際の主から、姫と呼ばれる猫を託されるのですが、実はその猫は、本当に壱鉄の仕える珠姫が変じたもので……
城から落ち延びた姫君を守る忠臣、というのは実に「姫と武士」らしい展開ですが、本作の場合、その姫が猫になってしまうのがユニークなところ。
それを武士の方が気付かないために、終盤二人はピンチになって――というのが面白いのですが、猫の顔がデフォルメされすぎていて猫っぽく見えないのは本作の場合はマイナスと感じます。(あと、途中で登場する馬が有能すぎて……)
なお、本作も「ねこぱんち」164号に続編が掲載されるとのことです。
『はるのゆめ 猫又と妖刀』(まめ)
猫又のまだらを連れた「見える」武士・清十郎。咲き誇る桜の下で、少女の霊と出会った彼は……
これも「姫と武士」の一作。主人公コンビはそれなりにユニーク、怪異の出現や清十郎のアクションの場面も巧みながら、ちょっと物語的にはシンプル過ぎて掌編に感じられるのが残念なところでした。
もう少しページ数のある状態でこのコンビの作品を読みたい――そんな印象を受ける作品です。
その他、『如月の雷猫』(稲垣まこと)は、剣術道場を舞台に、三人の若者の恋の鞘当てが描かれるお話ですが、剣術描写がどうにも――という点でちょっと……
また、『勇将縁猫記』(三浜青梅)は、大坂の陣の後も戦いを求め続け、受け容れられず出奔した武将の物語。戦いだけが存在証明だった彼が、取るに足りない小さな猫に――という展開は良いと思いました。
以上、駆け足で全作品を紹介いたしましたが、雑誌の方向性としては心から大歓迎するものの、必ずしも作家の方向性とあった作品ばかりではなかった――という印象が残ったのが、残念なところではありました。
また、時代ものとしてもう少し気をつければ――という描写も散見され、この点はちょっと勿体ない、と感じます。「ねこぱんち」本誌の方と連動させる作品企画は大いによいと思うのですが……
読者コーナーを見るに、本誌も「お江戸ねこぱんち」誌の一つということになるようですが、さて次はどうなるのか――まずは関連作品の掲載されている「ねこぱんち」163号・164号を読むことといたします。
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