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2020.04.09

伊藤正臣『恋とマコトと浅葱色』第2巻 恋心と葛藤と 現代人が見た池田屋事件の真実!?

 現代の女子中学生・マコトがスマホ(と脇差)越しに新選組の原田左之助と恋に落ちてしまうという奇想天外な漫画の第2巻であります。芹沢鴨粛正の場を目撃した次は、池田屋事件に立ち会う(?)ことになったマコト。しかしそれが思わぬ事態に繋がって……

 修学旅行で行った京都で訪れた八木邸で、偶然落としたスマホに雷が落ちたことがきっかけで、スマホに幕末の情景が映るようになってしまったマコト。
 実はそれは同時に(?)雷が落ちた原田左之助の脇差を通じてのもの。そして芹沢一派襲撃に加わった左之助が窮地に陥ったとき、マコトの言葉で左之助は難を逃れ、二人は互いを強く意識するようになるのですが……

 という奇想天外なラブロマンスの本作ですが、主人公二人の間を阻むのは、時間の壁だけではありません。
 二人が会うことができるのは、それぞれのスマホと脇差を通じてのことですが、その両方の距離が離れたとき――それこそ携帯の電波が途切れるように――スマホに映る像も消えてしまうのであります。

 そのため、東京に帰ったマコトと京都にいる左之助の関係は、そのまま途切れてしまったかに見えましたが――しかし歴女の友達に引っ張られるように、マコトは翌年、6月初旬の京都を再び訪れることになります。
 そう、左之助の時間軸でいえば、芹沢が粛正された次の年の6月――池田屋事件の起きる京都を!


 というわけで、新選組最大のイベントである池田屋事件を、マコトと左之助の二つの視点から描くこの第2巻。

 左之助側の視点は、我々がよく知る池田屋事件の顛末にほぼ近しい内容が描かれるのですが――しかしあくまでも左之助(新選組)から見たものに留まります。
 そこに第三者としてのマコトの視点が加わることにより、さらに俯瞰的に見えてくるというのは、なかなかユニークで、本作ならではの構造であることは間違いありません。というより、読者も完全にマコト視点になって一喜一憂させられたり……

 もっともそうは言っても、(想定読者層の方々はそうではないのかとと思いますが)池田屋事件自体は良く知られている内容だけに、意外性には少々乏しい――という印象もあるのですが、それを補うのが現代側のアクションであります。
 唯一マコトの携帯の秘密を知る、旧前川邸の住人であるおじさん・田部さん(新選組マニア)が、マコトの携帯の映像を見たい、いや見てはいけないと葛藤しまくる場面が実に楽しいのであります。

 特に面白かったのは「階段落ち」のくだり。池田屋事件といえば「これ」だけれども最近はどうもフィクション説が有力であるところの「階段落ち」ですが、これを巡る田部さんのマニア根性と、そのオチには爆笑――させられるだけでなく、なるほどこう描いてくれたのか、と感心させられるのです。
(これは全く勝手な想像ですが、この辺りは歴史監修の山村竜也氏のセンスではないかしらん)


 さて、池田屋というとどうしても先発隊の近藤の活躍や沖田の喀血、後発の土方の格好良い参戦(本作でも……!)が印象に残り、左之助のことは意外と語られることは少ないのですが――その部分を本作は大いに膨らませて描いてみせることになります。
 マコトとの再会によって池田屋に駆けつけ、奮戦する彼の前に現れた吉田稔麿(!)。互角の戦いを繰り広げる二人ですが、それを見つめるマコトの行動が原因で、原田が窮地に……

 そういえば原田討ち死に説というのもあったなあ――などと冷静に考えている場合ではないのですが、いずれにせよ一歩間違えたらそっちの方向に歴史が変わりかねない展開をどう乗り越えるのか、というところで次の巻に続く本作。
 明らかに史実にいなかった新選組隊士が奮戦しているのも気になるところですが、さて……


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