ドラマスペシャル『陰陽師』 瀧夜叉姫、ドラマにて見参
都を騒がす奇怪な事件の数々を調べることとなった安倍晴明と源博雅。蘆屋道満も顔を見せ、謎が謎呼ぶ中、晴明は一連の事件の関係者が二十年前の平将門の乱に関わっていたことに気付く。将門復活の呪法が行われていることを知った晴明たちは、将門を討った俵藤太とともに、企てを阻もうとするが……
ご紹介が遅れて非常に恐縮ですが、3月末にドラマスペシャルとして放送された『陰陽師』――原作は言うまでもなく夢枕獏のあのシリーズ、その中でも最長編である『瀧夜叉姫』のドラマ化です。
この『瀧夜叉姫』、スケールの大きさや史実とのリンクのためか、これまで七代目市川染五郎を晴明役とした歌舞伎版や睦月ムンクの漫画版、さらにはつい先日、伊藤勢の漫画版もスタートと、他メディア化の少なくない『陰陽師』の中でも人気の作品であります。
これに対して今回のドラマ版は、晴明を佐々木蔵之介、博雅を市原隼人というキャスト、そして脚本は山本むつみ、監督が篠原哲雄という布陣。しかしTVドラマということで色々制約はあのでは、と思っていたのですが――しかしそんな中でも奮闘した作品でした。
白い被衣の女に率いられた盗らずの盗賊の跳梁と、平貞盛を悩ます奇怪な瘡。そんな現在の都を騒がす怪事と、俵藤太や浄蔵が語る二十年前の坂東での出来事、そして晴明自身の記憶が絡み合い、やがて平将門復活という巨大な企てが明らかになる……
という物語の流れは(終盤を除き)原作とほぼ同様。さすがに物語のディテールは省略された部分も少なくなく、グロテスクな場面は最小限となっていましたが(首を落とされた貞盛の姿が、不自然なまでに映されないのには苦笑)、想像以上の再現度でありました。
再現度といえば、さすがに特殊効果の点ではチープに感じられる部分もありましたが、終盤の将門や滝子姫のビジュアルなどは、なかなかイメージを捉えていたと感じます。
また、ドラマ版のスペシャルゲストとしては露子姫が登場。初登場エピソードである『むしめづる姫』の内容が描かれるのですが、それが『瀧夜叉姫』の中で大きな意味を持つ「蠱毒」の解説ともなっている構成には感心いたしました。
その一方で、終盤の展開はかなりのオリジナルで、事件の黒幕関連のエピソードや私が大好きだった博雅の言葉(これは睦月ムンク版でもそうでしたが……)、道満の人間味などがバッサリカットされていた上、原作以上にもの悲しい結末になったのは、少々不満が残るところではあります。
とはいえ、(記憶違いであれば恐縮ですが)原作の別のエピソードでの晴明の言葉を引いて結びとするアレンジはなかなか巧みで、一本のドラマとしてはそれなりに楽しめる内容であったと感じます。
そして今回何よりも好印象だったのは、そのキャストであります。
正直なところ、一番不安だったのは佐々木蔵之介演じる晴明だったのですが――確かに白塗りがキツい部分は大いにあったものの、感情を表に出さないようでいてどこか茶目っ気を感じさせる、少しだけ人間味多めの姿はなかなか良かったと思います。
(博雅と過剰にじゃれ合った後の嬉しさを噛み殺したような表情など……)
またビジュアルの時点ではまりすぎていた竹中直人の蘆屋道満は、劇中での出番はさほどでもないものの、夢枕作品お馴染みの小汚らしくてやたら迫力のある爺を体現。
体現といえば、これも夢枕作品ではお馴染みの、情念が高まりすぎて人外になってしまった男を、菅田俊の将門は陳腐になるギリギリのラインで描いていたと思います。
その他、終盤の悪役演技/メイクがなかなか板についていた剛力彩芽の瀧子姫、ある意味『瀧夜叉姫』とは因縁のある市原隼人の博雅、バイタリティ溢れる本田望結の露子姫、歴戦の強者感溢れる国広富之の俵藤太――とそれぞれに印象的だったのですが、個人的には橋本じゅん演じる賀茂保憲が、キャラの俗っぽさをこういう形で描いてきたか、と感心しました。もっともこれは、私が役者さんのファンであるためかもしれませんが……
と、後半の戦いの場面がいずれも妙に明るい屋外だったのが雰囲気的に合っていなかったことを除けば、個人的には楽しめた本作。
ただ、(これは本作に限ったことではなく、映画版もそうだったのですが)あくまでも本作は長編としての『陰陽師』であって、これが普段の短編エピソードであれば、また全く作り方が必要だったのだろうな、と感じたのも正直なところではあります。
考えてみれば連続もののドラマは約20年前、そろそろこちらもお願いしたい――と、蛇足ながら感じた次第です。
関連サイト
公式サイト
関連記事
「陰陽師 瀧夜叉姫」 晴明が晴明で、博雅が博雅である限り
「陰陽師 瀧夜叉姫」第1巻 新たなる漫画版陰陽師
「陰陽師 瀧夜叉姫」第2巻 二人の武人、二人の顔
「陰陽師 瀧夜叉姫」第3巻 ついに語られるその人の名は
「陰陽師 瀧夜叉姫」第4巻 様々な将門の真実に
『陰陽師 瀧夜叉姫』第5巻 奇怪にして美しい将門の乱
『陰陽師 瀧夜叉姫』第6巻 対決 怪僧・浄蔵と魔人・将門公
睦月ムンク『陰陽師 瀧夜叉姫』第7巻・第8巻 「静」から「動」へ……大長編完結!
| 固定リンク
