「ねこぱんち もののけ 鬼の怪」から時代ものをメインに
毎年夏恒例のホラー版ねこぱんち、今年は「鬼の怪」と銘打って、猫+鬼の怪談を中心とした新作と、過去の再録から構成された一冊となっています。発売から少々遅れましたが、電子書籍版がようやく発売されたこともあり、今回印象に残った(時代ものの)作品を中心に紹介させていただきます。
『猫に消された村』(胡原おみ)
昔々、鬼と人間がいがみ合う村で、互いの融和を願い、人間を知るために猫に化けて村に入り込んだ鬼の子。そこで一人の娘に拾われ、平和な一時を過ごす鬼の子ですが……
本誌のテーマどおり、猫+鬼を中心とした本作。「猫」の飼い主となった娘の猫好きぶりが微笑ましい一方、彼女に対する村人たちの態度に嫌な予感がしてみれば――結末に待っていたのは、想像以上の地獄でありました。
題名通りの結末が何とも重い一編です。
『閻魔様の猫』(ほおずき)
幼い頃から側にいた二匹の猫を庇い、戦場で死んだ朝比奈三郎義影。目覚めてみれば地獄にいた三郎が、そこで見たものは……
豪勇で知られ、(狂言では)地獄で閻魔をも手玉にとった朝比奈といえば三郎義秀ですが、本作の主人公は三郎義影。まあ似たような名前の別人なのでしょう。
それはさておき、狂言とは違い、本作の三郎が地獄で目の当たりにするのは、あまりに皮肉で、そして無惨な「真実」であります。
それを踏まえての結末は、期待したようには甘くはないものの、しかし実に朝比奈らしいもの。絵の巧さも相まって、個人的には本誌でベストの作品と感じました。
『山姥と猫の里』(須田翔子)
「長い角を生やした山姥が小鬼たちを従えて年寄りを攫い、ばりばりと骨まで喰らう」というある村の伝説の真実を描く本作。
玉の輿を目前に控え、姑と喧嘩した拍子に角が生えてしまった主人公の娘がその山姥なのですが、しかし年寄りを攫うとは――と不思議に思えば、徐々に明らかになっていく真相が苦くもユーモラスな一編であります。
冷静に考えればかなり辛い話なのですが、絵柄の明るさと、突き抜けた結末(伝説の真実を描く画が実に楽しい)が、不思議な爽快感を感じさせてくれます。
『猫又と上手に暮らす法。』(永尾まる)
今回の記事で唯一取り上げる現代ものの本作は、『猫絵十兵衛 御伽草紙』に並ぶ作者の隠れた長寿シリーズ。猫又の一夜と、彼の飼い主(?)の咲耶が様々な怪事件に巻き込まれる連作ですが――今回は「夏は疲れや毒素が溜まりやすいから小まめに水分や休みをとりましょうの段」というサブタイトルとは裏腹に、巫蠱を扱ったかなりヘビーなお話。
一夜が遭遇した不気味なモノが落とした五百円玉を拾った咲耶が突然倒れて――という本作、なにげにホラー度が高い本シリーズの中でも、意外なほどにキツめのゴアシーン(直接は描かれないまでも主人公まで被害者に)があったりと、ちょっと驚かされます。
時事ネタもあったりと、ちょっと浮世離れして飄々とした作風が持ち味の作者には珍しく生臭い印象ですが、それでいて伝奇的な趣向や後味の呑気さは、やはり「らしい」ところでしょうか。
『当世鬼談偐黒塚』(ひのや)
『お江戸ねこぱんち 猫遊びの巻』に収録された公儀隠密・化け猫廻しの又七郎と化猫の紅虎が活躍する『又七股旅忍び旅』の主人公コンビが活躍する本作。今回又七郎たちが潜入するのは、鬼が出るという黒塚の城であります。
城主は乱心し、跡取りは病弱というこの城で又七郎が見たものは――鬼かと思えば、不意打ちのように登場する不気味なモノに驚かされ、さらにその先の無惨な真実に息を呑みと、なかなかユニークな伝奇ホラーでした。
一件落着の後のドンデン返しも不気味で、なるほど確かにとんだ「安達ヶ原」であります。
と、想像以上に時代ものが多く、猫好き的だけでなく、このブログ的にも嬉しい一冊でしたが、一つだけ不満は、電子書籍版は目次がないこと。
確かねこぱんち系の電書は以前も目次がなかったように記憶していますが、特に本誌のようなアンソロジーには結構大事な部分なので、何とかしていただきたいところです。
「ねこぱんち もののけ 鬼の怪」(少年画報社にゃんCOMI) Amazon
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