石川ローズ『あをによし、それもよし』第3巻 面白奈良ライフ漫画から面白奈良歴史漫画へ!?
現代のミニマリスト・山上が奈良時代にタイムスリップし、困惑するどころか当時の暮らしを満喫してしまう――そんな奇想天外な歴史コメディも3巻目。突然妻子ができて官職や屋敷をもらったりと、だんだんミニマルではなくなってきた山上の奈良ライフは、さらに思わぬ方向に……
ある日突然奈良時代にタイムスリップし、下級役人の小野老のもとに転がり込んだ現代人のサラリーマン・山上。極度のミニマリストである彼は、馴れない奈良の暮らしに少しだけ戸惑いつつも、しかし物のない奈良時代の暮らしを大いにエンジョイしていたのですが――そこに意外な人物が立ち塞がります。
それは藤原不比等――何と彼の正体は、山上と同じく現代人でミニマリストのフジワラさん。しかしミニマリストはどこへやら、この時代では権力者として贅沢三昧の日々を送っていたのであります。
ミニマリストの風上にもおけぬと反発する山上ですが、彼も瓜二つで性格までそっくりだという山上憶良と間違えられた末、彼の官位と邸宅を与えられ、さらに妻子まで背負い込むことに……
そんなわけで段々この時代の政治(?)に巻き込まれ、理想のミニマリスト生活から引き離されていく山上ですが、そんな彼に追い打ちをかけるのが藤原の陰湿な攻撃。
ミニマリスト殺すにゃ刃物は要らぬとばかりに不比等が取った行動とは――その手があったか、と冒頭から爆笑してしまったのですが、ついに山上の怒りも爆発、不比等を敵と認識したものの、相手は当時の実質最高権力者であります。
不比等を上回るには帝を味方につけるしかないとアバウトにもほどがある考えで宮中に乗り込んだ山上は、なりゆきで阿閉皇女――すなわち元明天皇と知り合い、長屋王らとともに反不比等に向けて動き出すことになります。
しかしその前に不比等の子の藤原四子が立ち塞がり……
と、面白奈良ライフ漫画から面白奈良歴史漫画に移行してきた感のあるこの巻。
第2巻の紹介でも申し上げましたが、山上憶良といえば貧窮問答歌――というわけで本人もどん底生活の印象が勝手にあったわけですが、本人は歴とした貴族であり、この巻にも登場した首皇子(後の聖武天皇)の侍講も務めたという人物です。
であれば、この展開もむしろ納得なのですが、でも何だか身近にいた人が遠くに行ってしまったようで寂しい――あっ、老ってこんな気分なのか!?――というのも正直な気持ちではあります。
しかしそれでも、本作の基調を成すゆるい雰囲気はどこまでも健在です。この巻で初登場の阿閉皇女や、今までシルエットのみの登場だった藤原四子など、歴史上の素顔はともあれ、実に本作らしく、コミカルに描かれたキャラクターたちの姿が実に楽しいのであります。
(四子は本作の基本ラインから浮いているのが逆にイイ)
そしてこの巻の(特別編を除いた)ラストのエピソードでは、どんな状況になっても山上は山上というのが窺えるのも嬉しい。
考えてみれば山上って、ミニマリストであると同時に滅茶苦茶マイペースな人間だったよね――というわけで、彼が彼でいる限り、本作も本作のままなのでしょう。
この先の歴史も、この先の登場人物たちも、まあ色々あるのですが、それを本作がどのように料理することになるのか――引き続き、楽しみにしたいと思います。
『あをによし、それもよし』第3巻(石川ローズ 集英社ヤングジャンプコミックス) Amazon
関連記事
石川ローズ『あをによし、それもよし』第1巻 ミニマリスト、奈良時代を満喫!?
石川ローズ『あをによし、それもよし』第2巻 ミニマリスト山上、「山上憶良」になる!?
| 固定リンク
