スエカネクミコ『ベルサイユオブザデッド』第5巻 怒濤の完結 断頭台のマリーが遺したもの
18世紀後半のフランスを舞台に繰り広げられる人間と不死者と悪魔と神の物語、怒濤の最終巻であります。神と悪魔の戦いがひとまず終わりを告げ、残されたマリー・アントワネットとバスティアン。しかし暴走するアントワネットは人々の怒りと狂気を煽り、ついに物語はカタストロフを迎えることに……
不死者が徘徊する中、フランスを救うため、ベルサイユ宮殿の地下に眠るジャンヌ・ダルクを復活させたルイ16世。しかし復活したジャンヌの中から現れたのは、その身の中で眠っていた大天使ミカエルでありました。
マリーことその弟・アルベールの中に潜む「悪魔」を、その身もろともあっさりと粉砕し、天国に帰還せんとしたミカエルは、その魂に欠落があったことから天使たちに拒まれて地に墜ち、大混乱の中、ひとまず戦いは終結したかに見えたのですが……
その身から悪魔が去り、首から下を失いながらもなおも生き続けるアルベールは、姉の亡骸の首から下を繋いで全き女性として復活。一方、バスティアンはミカエルを探す天使の襲撃を受けたところを、その身から現れた悪魔の眷属に救われるのでした。
果たして自分の身に何が起きているのかわからず、困惑するばかりのバスティアン。その一方でマリーは放蕩と暴走を続け、民衆の怒りは一身に彼女に向けられることになります。
そして革命を求める民衆がバスティーユに詰めかける中、事もあろうにバスティーユを悠然と訪れるマリー。ついに暴発し、監獄を襲撃する民衆と、軍隊の間で戦闘が始まる中、その場に不死者たちまでもが出現、その混乱は頂点に達することになります。
人間と人間、人間と不死者、さらに天使と悪魔の戦いが続く中、断頭台にかけられてもなおも生き続けるバスティアンは、恐るべき真実を知ることに……
マリー・アントワネットといえば、言うまでもなく思い浮かぶのはフランス革命で断頭台の露と消えたその最期。当然ながら本作の結末もそこに辿り着くことは、それこそ物語が始まった時からわかっていたのですが――史実よりもおそらくは20年近く早く訪れたその結末は、いやそこに至るまでの過程は、こちらの想像を絶するものでありました。
前巻で登場し、その因縁の一部が語られたミカエルと「悪魔」。その対決はバスティーユで再び繰り返され、そこで神と魔、生と死の境も曖昧となったかのような、まさに地獄絵図というべき戦いが繰り広げられることになります。
そしてその最中でサーベルを片手に、全身朱に染まった姿で荒れ狂う者こそはマリー・アントワネット――おそらくはこれこそが本作が描きたかったものなのだろうな、という印象を強く受ける、凄まじいビジュアルであります。
……しかし物語的にはいささか結末を急いだ感があり、大方の描くべきものは描かれたようでいて、細かい点は曖昧のまま残されたのは(ヒントはあるかと思いますが)、やはり違和感は否めないところであります。
特に、第4巻で「マリー」の体から去った悪魔がクライマックスで再び、という辺りは、どうにも遠回りに感じられたところで――はたしてマリーの乱行を引き起こしたものが何だったのか、誰だったのかという点は考えさせられるものの、まさしくアルベールのように「一体なんだったんだ」と思わなくもありません。
それでも文字通りバスティアンの中のとんでもない秘密が明かされ、そして断頭台のマリーがこの世に遺したものから、何とも人を喰った結末に繋がっていく展開はそれなりに楽しめましたが――やはり神と悪魔の間に立たされた人の子としては、何とも居心地の悪さを感じてしまったことは否めません。
もちろん、その後味もまた、本作の目指したところなのだとも感じますが……
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