『新諸国物語 笛吹童子 第二部 妖術の斗争』
桔梗を刑場から連れ去り、大江山に連れてきた霧の小次郎。苦手とする笛吹童子の笛を桔梗に盗ませようとする小次郎だが、桔梗はそれを拒絶、怒った小次郎に追われた彼女は、今度は黒髪山の堤婆に囚われる。そこで堤婆の養女・胡蝶尼と出会う桔梗だが、彼女こそは小次郎が探す生き別れの妹だった……
満月城を奪った赤柿玄蕃に捕らえられた末、刑場に引き出された家老の娘・桔梗と斑鳩隼人。しかしまさに処刑される瞬間、一天にわかにかき曇り、天空から現れた龍によって二人は奪い去られ――という場面から始まるこの第二部。満月城の残党と赤柿玄蕃の対決という、前作のある意味俗界の戦いから一変、妖術師たちが跳梁する魔界の物語が描かれることになります。
ここで二人を攫ったのは、大江山に潜む妖術師・霧の小次郎(大友柳太朗)。娘を攫っては生き肝を奪うと悪名高き小次郎ですが、彼に言わせればそれは単なる噂、彼は幼い頃に生き別れになった妹を探していたのです。
しかし彼は、(当然ながら)妹ではなかった桔梗を帰そうとせず、逆らえば白骨が転がる間を縮尺のおかしな百足が這い回る谷間に突き落とすと脅し、自分の召使いのように使おうとするではありませんか。
そして偶然山を訪れた笛吹童子、実は侍を捨てた菊丸(今回登場はこの場面だけ)の笛を苦手とする小次郎は、桔梗にその笛を奪わせようとするのですが――当然それに従わず菊丸を逃がした桔梗は、小次郎によって件の谷に放り込まれてしまうのでした。
しかしそこから大鷲に攫われ、麓の刀鍛治・雪山に保護された桔梗ですが、すぐに今度は怪しの黒雲に攫われ、黒髪山で妖術師・堤婆の下で働かされることに。そこには小次郎に放り出された末にこの山に囚われた隼人、そして堤婆の養女であり、天真爛漫な胡蝶尼(高千穂ひづる)がいたのですが……
と、薄幸の桔梗の身を中心に本作ですが、しかしその彼女を完全に喰っているのが、小次郎、そして胡蝶尼の存在感です。
上で述べたとおり、妖術を操り、常人とは異なる価値観で動く小次郎。幼い頃に生き別れた妹を探すことを目的とする彼は、何と(本人は全く知らなかったのですが)実は応仁の乱の混乱の中で行方不明となっていた足利将軍の甥という貴種であります。
それ故か普段はむしろ紳士的に見える小次郎ですが――しかし幼い頃から先代の小次郎に攫われ、山中で妖術の修行を続けてきた彼は、やはり常人ではありません。自分の思い通りにならなければ、相手を傷つけることに全く躊躇しない――今風にいえばサイコパスとでもいうべき人物なのです。
しかし演じる大友柳太朗の存在感もあって、その異様な人物造形がむしろダークヒーロー的と言いたくなる、そんなキャラの立った小次郎。後に彼が主人公のスピンオフが製作されたというのもよくわかります。
そして胡蝶尼の方はさらに強烈であります。幼い頃に黒髪山の堤婆に攫われ、養女とされた彼女は、自らも妖術を操り、のっぺらぼうや唐傘お化けといった妖怪たちと森で戯れる、魔界の姫とも言うべき存在。
その彼女は、小次郎に放り出された末に黒髪山に囚われ、井戸の底に幽閉された隼人と出会うのが初登場シーンなのですが――「出てこい出てこいあがってこい、魔法の糸をたぐってこい」などと可愛らしく歌い(演じる高千穂ひずるは元タカラジェンヌ)、長い黒髪をひょいひょいと引っ張る仕草をすると、井戸の底から隼人が浮かび上がってくるのは、今見ても実に楽しく美しい名場面です。
そしてその彼女が隼人に惹かれてしまい、その隼人が憎からず想う桔梗に嫉妬して――というのは定番の展開ではありますが、しかし彼女の場合、あまりに浮世離れした生活を送りすぎて、こうした人間の感情の何たるかがわからないというのがミソ。
それが隼人と桔梗に接する間に人間性を取り戻した末、堤婆に逆らって二人を逃がす
――というのもこれまた定番ではありますが、しかし自らこの役を演じたいと直訴したという高千穂ひずるの好演のおかげで、実に初々しく、魅力的に映るのであります。
さて、予想通り――というか劇中では小次郎が妹の名を連呼しているのですぐわかるのですが――胡蝶尼は小次郎の妹(つまり本物のお姫様!)。そして本作のラストでは、黒髪山に忍び込んだ小次郎が、胡蝶尼を連れ出し、兄妹の名乗りを上げるのですが……
しかし悪名高き小次郎が血相変えて「お兄ちゃんだよ」と迫ってくるのだから胡蝶尼としては堪らない。一緒に暮らそうと迫るのを拒み、谷の上の橋を渡って逃げる胡蝶尼を見た小次郎は、いつもの癇癪を爆発させて橋を切り落とし、彼女はは谷底へ――(そしてさすがに我に返り、身もだえして後悔する小次郎)というところで、第三部に続きます。
『新諸国物語 笛吹童子』(東映ビデオ DVDソフト) Amazon
|
|
Tweet |
|
| 固定リンク
