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2020.12.29

『新諸国物語 笛吹童子 完結篇 満月城の凱歌』

 玄蕃一味から逃れたものの、されこうべの面が災いして谷底に落ちた萩丸は、白鳥党を率いる白蓮尼と出会う。一方、霧の小次郎は胡蝶尼を執拗に付け狙い、されこうべの面と対になる白鳥の面を作る菊丸とも対立する。乱戦の果て、ついに菊丸や胡蝶尼も合流して決起した白鳥党は満月城に向かう……

 タイトル通り完結編となる本作は、前二部より体感で倍ぐらいの速度と密度ではないかと思われる展開が連続することになります(以下、容赦なく内容に触れます)。

 第二部の間ずっと満月城の囚われ人となっていたところを、ようやく逃れてきた萩丸。しかし呪いのされこうべの面を被せられていたのが災いして、家老の右門から妖怪扱いされて追い回された末に、崖から転落してしまう羽目になります。ところがその衝撃で面の一部が欠けたために顔から面が剥がれ――って、まさか物理で呪いが解けるとは! というのはともかく、そこで彼が出会ったのは、第二部ラストで同じく崖落ちした胡蝶尼でありました。
 萩丸はかなりのダメージなのにピンピンしている胡蝶尼は、彼のために薬を探しに行くのですが、そこで出会ったのは、萩丸を追って来た玄蕃一行。当然玄蕃たちが美女を見逃すはずはなく――というところで鉄砲をぶっ放した近所の狩人の少年・杢介に助けられ、胡蝶は彼の母・藤江に保護されることになります。しかし、実は彼女こそは赤子の頃の胡蝶尼の乳母だったという奇縁が!

 一方放置された萩丸は、運良く白蓮尼と名乗る美しい尼(こちらは本当に尼)に救われるのですが、彼女こそはかつて玄蕃に滅ぼされた石見判官の娘。彼女は遺臣たちとともに白鳥党を結成、ほとんどオーバーテクノロジーの鉄砲を武器に、復仇の時を窺っていたのであります。
 ――と、こんな感じで完結編に入っても新キャラクターたちが次々と登場、ここまで冒頭からほとんど一気呵成のテンポで来る上に、白黒で結構人の顔が見分けにくいので、以前からのキャラが入り混じると誰が誰やらになるのが困りものであります。

 さて、ここから物語は胡蝶尼と萩丸――というより白鳥党パートの二つに分かれて展開することになります。藤江の口から自分の素性(前作では将軍の弟の子だったのが、いつの間にか将軍の子に……)を知った胡蝶尼ですが、再三にわたり彼女を迎えにやってきた使いがいずれも偽物という不運に見舞われます。一方、萩丸は弟の菊丸と再会し、またも勘違いして襲いかかってきた右門(……)も仲間に入れて決起の時を待つのでした。

 そしてこの両者の間で暗躍するのが、霧の小次郎なのですが――萩丸の顔から外れ、白蓮尼が保管していたされこうべの面を奪い取り、その力でパワーアップ(つけている間は菊丸の笛も耐えられる)したようですが、しかし本作においては前作のダークヒーローぶりはどこへやら、という印象があります。
 将軍家の使者に化けて胡蝶尼を誘い出し、お兄ちゃんと一緒に暮らそう! とかきくどくももちろん拒絶され、杢介に鉄砲をぶっ放されて退散。老人に化けて菊丸のもとにされこうべの面を持ち込み、修復を依頼するも、菊丸にとってはこれは不吉の面、さてはと取り出した笛を吹かれてのたうち回る羽目に。そしてその笛から逃れるために面をかぶれば、ついにその面が外れなくなり――と、基本的に締まらない場面ばかりが続きます。

 そしてクライマックス直前、白鳥党と合流して満月城に向かう胡蝶尼を黒雲に乗って攫ったはいいものの、降りたところに待ち構えていた(というか居るところに降りてしまった)提婆が放った短刀から胡蝶尼を庇って致命傷を負った小次郎。そこに駆けつけた菊丸の白鳥の面の力で面の呪いから救われ、初めて胡蝶尼に兄と呼ばれる――というシチュエーションは、先に物理的に外れてずっこけたされこうべの面の呪いが、ここで解けるのか! という点には感心したものの、本当に提婆がいきなり登場したおかげで感動が吹っ飛んだのは勿体無い話です。
 実は原作ではここでの提婆の役回りは、もう一人の悪の妖術使い・三日月童子が担当していたもの。さすがにこのキャラまで出すと収拾がつかなくなるのはわかりますが……

 なにはともあれ、ついに満月城に乗り込んだ白鳥党は、ほとんど反則の鉄砲連射に勝手知ったる抜け道からの奇襲と、もはや相手をするのがかわいそうな勢いで玄蕃の軍を圧倒。玄蕃も萩丸たちに袋叩きに近い形で倒されて、そのまま「終」となるのでした。


 というわけでまずは大団円の『笛吹童子』、テンションの高さという点では特筆すべきものがありますが、前作であれほど輝いていた小次郎と胡蝶尼がどちらも大人しくなってしまい、完結編としてはいささか物足りなかったのが正直なところであります。
 次の『紅孔雀』が五部作になったり、小次郎のスピンオフが作られたのはこの辺りの影響――なのかもしれません。


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