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2021.03.27

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第4巻 ついに主人公参陣! そして二人の新顔

 蒙古軍の緒戦は何とか終わり、何とか一息ついた日本武士団。その前に、ついに博多に上陸した朽井迅三郎が現れました。第4巻にしてようやく参陣した主人公の活躍は如何に――一癖も二癖もある新キャラも登場し、戦いは新たな段階に移ることになります。

 足並みの乱れに苦しみつつも、鳥飼干潟での緒戦を何とか乗り切った日本武士団。異邦の敵との戦いに疲れ果てた彼らの眼前に、海から褌一丁で現れたのは、誰であろう朽井迅三郎――対馬から蒙古軍の船に潜り込んで脱出し、一時期行動を共にした天草の大蔵太子と別れた彼が、単身博多に上陸したのであります。

 やはり鎌倉ではかなりの有名人だったのか、はたまた歴戦の風格によるものか、周囲の武士たちの目を惹きつけつつ、しかあしそれを意に介さず一人進む迅三郎の向かう先にいるのは――そう、この地の軍を(一応率いる)少弐景資。対馬に流された迅三郎に、かつて援軍の派遣を約束した人物であります。
 それが結局どうなったか――今のこの博多での状況を考えれば、この約束に元々無理があったこと理解できますが、しかし、やはり迅三郎ならずとも裏切られた感は当然残ります。

 その景資に対し、迅三郎が何を望んだか――そういえば元々そのために島を抜け出した、いや飛び出したのではありましたが、その一本筋の通った態度は、やはりこの地に集った他の武士たちとは違う、と頷かされるのです。


 そしてその迅三郎の前に、二人の男が現れることになります。

 その一人は、あの対馬の宗家の郎党・船手の小太郎。蒙古が現れた直後、博多に急報する役目を授けられて対馬を去った、去らざるを得なかった彼は、そのことに忸怩たる想いを抱いてきたのですが――そこに、本来であれば全く無縁の身でありながら対馬のために戦った迅三郎が現れたのですから、黙っていられるはずがありません。

 この巻の前半では博多での迅三郎の案内役を買って出た小太郎ですが、日に焼けた禿頭の巨漢で得物は手斧というキャラの立ちぶり。後で述べる戦いでも迅三郎に従い、対馬の仇討とばかりに奮戦する姿が印象に残ります。(ちなみに彼の主人である宗右馬太郎は、兄らしく輝日姫とよく似た美丈夫ながら、対馬が捨て石にされたことに深い屈託を抱いているらしく、こちらも気になるところです)

 そしてもう一人、より気になる存在なのが、ウカガミ藤太なる男であります。荒んだ風貌ながらなかなかの優男の彼は、しかし名うての悪徒・荒蜘蛛衆の頭目。
 悪徒とは武士の下で戦場で暴れまわる破落戸まがいの連中――いわば室町時代に現れる足軽たちの先祖のような連中ですが、それを束ねているのだから只者であるはずがありません。

 この藤太、どうやら迅三郎を見知っているようですが――と思えば、何と彼の一ノ郎党を自称する男。かつて迅三郎が罪を得て捕らえられた際に難を逃れて諸国を流浪、荒蜘蛛衆の頭目に収まったというのであります。
(よく見ると前作の第4巻に、それらしい風貌の男がいるのでした)
 いかにも食えない風貌のこの藤太、しかし迅三郎への心酔ぶりは本物で、荒蜘蛛衆の面々が初対面の迅三郎を舐めてかかっているのとは対照的に、なかなかの郎党っぷりを見せるのも、いい味を出しているのっです。


 そして迅三郎とこの新顔二人、そして荒蜘蛛衆が初陣を飾るのは、息浜の合戦。博多・筥崎に同時に攻撃を仕掛けてきた蒙古軍ですが、二手に別れたといえ博多の日本軍とはまず互角の陣容。中には対馬で迅三郎と戦ったウリヤンエデイ、そして先の戦いで猛威を振るったウール三兄弟も加わっているではありませんか。
 これに対して迅三郎が真っ先に狙うは、ウール三兄弟の首。大軍で以て突出した敵を包み込む得意の雲の陣で迎え撃つ三兄弟ですが、これに対して迅三郎はといえば……

 冷静に考えれば、対馬ではゲリラ戦に徹するほかなかった迅三郎。ここでほとんど初めて、そんな彼のまっとうな(?)合戦を見た気がいたしますが――これが色々な意味でこれぞ鎌倉武士、と言いたくなるような暴れっぷり。これまでの溜飲が一気に下がったと言いたくなるような、そんな戦いであります。


 かくして、ようやく参陣した迅三郎一人の存在で、一気に潮目が変わったやに見えるこの戦。しかしもちろん、蒙古との戦いはこれからが本番です。それでも、迅三郎であれば何かをやってくれる――そんな小さな希望の光が見えてきた、そんな印象があります。


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