士貴智志『爆宴』第3巻 物語の真の始まり 復活! 梁山泊百八の魔星
侵略者たちに奪われたすべてを奪還すべく立ち上がった少女・晶と、あの英傑たちの冒険を描く異世界水滸伝『爆宴』待望の第3巻であります。死闘の末、ついに迷宮の深奥に辿り着いた晶と仲間たち。今ここから、真の物語が幕を開けることになります。(かなり内容に踏み込みますのでご注意下さい)
ある日突然、謎の怪物たちに滅ぼされた地球から、異世界からの越境者・九紋竜史進とともに、新たな世界へのゲートをくぐった女子高生・津村晶。自分を「宋江」と呼ぶ声に導かれて辿り着いたそこは、怪物たちを使役して幾多の世界を滅ぼしてきた徽宗皇帝と高キュウによって支配された都市でありました。
「宋江」として人々を救うため、史進、李逵と皇城の地下に潜入した晶は、そこで地下迷宮に囚われた人々を救わんとする魯智深と対面したものの、その前に死した体を番人として利用された林冲が現れ……
と、刺激的な展開の連続であった第2巻までの展開。しかしそれはまだまだ序の口であったことが、この巻で明らかになります。
林冲の亡骸に別れを告げ、迷宮の奧に進む一行が辿り着いた先にあったのは、「伏魔殿」と記された巨大な碑。そこで晶の前に姿を現したのは、彼女を導いた声の持ち主――公孫勝だったのです(ここで体を再構成する物質が足りないという理由で、少女姿で現れるのが面白い)。
そしてこの伏魔殿とともに封じられた人物こそは、洪信――「水滸伝」の冒頭で、百八星の封印を解いたあの人物だったのであります。
最初に封印を解いた咎でもって、既に敗れた百八の魔星とともにこの迷宮深くに封印されていた洪信。その封を解けば、一度は敗れ、命を落とした百八人も再び蘇るという(そう、林冲も!)公孫勝の言葉に、意を決して封印を解かんとした晶ですが、その前になんと高キュウが現れ……
既に史進・李逵・魯智深・林冲と四人が登場していただけに、既にこの世に解き放たれた後であるように思われた百八人。しかしある意味「水滸伝」とは逆に、本作においては、百八人のうちで敗れた者たちが伏魔殿に再封印されているという設定には、なるほど――と感心させられました。
そして宋江の名乗りを上げた晶によって再び封印は解かれ、魔星が地上に放たれる――まさしく「水滸伝」という物語の始まりをなぞる形で、本作もまた、本当の始まりを迎えたといって良いでしょう。
(世界中に解放された魔星が飛び散る場面の美しさよ!)
そして正体を隠していたもう一人の英傑(また能力のアレンジが格好良い)も現れ、ついに梁山泊に向かう一行。ここで描かれる「水のほとり」の解釈がまたシビれるのですが、しかし……
という、これまた気になる場面で続くとなったこの巻。
それにしても、描かれる内容は変格としか言いようがないものなのに、何故か「水滸伝」としてこちらの胸を熱くさせてくれるのですが――それは、巨悪を倒すために集結していく英傑たちという、最も「水滸伝」らしい部分を、本作が取り出して描こうとしているからではないかと感じます。
(上で触れたように、彼らの存在の不滅性が語られているのも、また泣かせてくれます)
もちろんまだまだ物語の向かう先は見えず、謎も無数にあります。晶の前に幻像として現れた高キュウは、何故自ら封印を解こうとしたのか。梁山泊にあるという全てを取り戻す道とはなにか。そして何よりも、本作における「梁山泊」はいかなる場所なのか……
「水滸伝」ファンとしては気になる要素満載の本作、これから登場するであろう新たな英傑たちの存在ともども、楽しみは尽きないのであります。
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