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2021.04.25

さいとうちほ『VSルパン』第5巻 謎めいた二人の美女 「緑の目の令嬢」編開幕!

 モーリス・ルブランのルパンシリーズの中でも、ロマンスの香り高い作品を中心に漫画化してきた『VSルパン』の最新巻では『緑の目の令嬢』編がスタート。二人の美女との出会いから事件の渦中に飛び込んだルパンが、タイトル通りの緑の目の令嬢・オーレリーを救うために活躍します。

 冒険家のラウール・ド・リメジィ男爵に身をやつしてパリを闊歩する最中、空色の目の美女・コンスタンスに惹かれたルパン。コンスタンスの後を追ってカフェに入ったルパンは、そこでもう一人の美女、緑色の目のオーレリーと出会うことになります。
 二人の美女を気障なポマード男がつけているのを知り、持ち前の騎士道精神と茶目っ気から間に割って入ったルパン。さらにコンスタンスの後を追って同じ夜行列車のコンパートメントに乗り込んだルパンですが――新聞記者だというコンスタンスは、ひと目で彼がルパンだと見抜くのでした。

 しかしその晩、二人のコンパートメントに賊が押し入り、ルパンは縛り上げられ、深手を追ったコンスタンスは、ルパンの腕の中で息絶えることになります。すぐに賊の一人を追い、その装束を引き剥がしたルパンですが――その下から現れたのはオーレリーだったではありませんか。
 列車に乗り込んでいたポマード男――内務省の国際捜査部警視・マレスカルが捜査を始める中、その向こうを張って動き出すルパン。はたしてコンスタンスは何者なのか、そしてオーレリーは殺人者なのか――様々な顔を見せるオーレリーに翻弄され続けながらも、ルパンは彼女の後を追い続けることに……


 冒頭に述べたように、数多いルパン譚の中でも、ロマンス色の強い――すなわち、ルパンと彼が関わり合う美女たちの姿を描く作品がしばしば取り上げられてきた本シリーズ。その中でも今回の『緑の目の令嬢』は、今まで描かれてこなかったのが不思議なほどの物語であります。
 何しろ開幕早々、青い目と緑の目の二人の美女がルパンの前に現れ、その謎めいた姿で彼を翻弄。ルパンはその謎を追いかけて、彼女たちを――特にタイトルロールのオーレリーを助けるため、神出鬼没の活躍を繰り広げるのですから。

 正直なところ、原作はスケールの大きさやミステリとしての複雑さ、あるいは伝奇性という点では、シリーズの他の作品に比べると小粒な印象があります。しかしある種のルパンらしさ――すなわち美女に対する騎士道精神(とプレイボーイぶり)という点では、これほどその特徴がよく出ている作品もないのでは、という印象があります。

 しかしそれももちろん、ヒロインたちの魅力あってこそであります。
 青い目のコンスタンスは、驚くほどの健啖家で馬車を怒鳴りつけるのも辞さないタフさ、ルパンと知りながら平然と渡り合う度胸――そして何よりもそのあまりに意外な素顔と、出番こそ少ないものの、冒頭で強烈な印象を残す(本当に勿体ないほど!)キャラクター。彼女が物語の中心となっても違和感ないとすら感じられます。

 しかし緑の目のコンスタンスは、それ以上に謎めいて、そして魅力的なキャラクターであります。
 ある時は列車強盗の殺人犯(?)、ある時は地方廻りのオペレッタ歌手、そしてある時は修道院の寄宿生――どれが彼女の真の顔なのかルパンですら悩むほどである一方で、時にひどく優しく、そして儚げな素顔を見せる……。なるほど、何度も逃げられ、もう知るか、と思いながらも、ルパンがついつい彼女を追ってしまう気持ちも、わかろうというものです。

 そして本作はそんなオーレリーの、そして彼女に振り回されるルパンの――二人の表情を、二人の関係性が変わる度に生まれるちょっとした変化まで含めて、丹念にそしていきいきと描き出します。
 そう、本作は物語そのものの面白さはもちろんのこと、この画の力によって、二人の冒険とロマンスを、より魅力的に描き出すことに成功しているのであります。


 さて、そんなオーレリーを守るとルパンが誓った矢先、彼女に迫るマレスカル。果たして彼女の運命は、そして彼女が秘める秘密とは何か――物語は次巻に続きます。


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