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2021.04.28

陶延リュウ『無限の住人 幕末ノ章』第4巻 集結、人斬りゴールデンチーム!?

 幕末に生きる万次が坂本龍馬と出会い、京の混沌で剣をふるう公式スピンオフも第4巻。池田屋事件をくぐり抜けた万次ですが、いよいよ彼を敵と定めた新選組の暗躍が加速します。その一方、万次の前に新たな仲間(?)が……

 龍馬の依頼で桂小五郎のボディーガードを務めていた関係で、池田屋事件に巻き込まれた万次。藤堂を下し、沖田との死闘に奇手を用いて勝利を収めた万次ですが、いよいよ新選組は万次討伐の意を固めることになります。
 一方、武市を人質に取られ、心ならずも逸番隊の剣士として鉄蔵の名を与えられたと岡田以蔵は、自分の名を騙る御用盗一味を壊滅させ、両親を殺された少女・町を救うことに……

 という前巻の展開を受け、第4巻は、この二人を中心に物語が展開していくこととなります。
 龍馬と合流するため、神戸の海軍操練所を訪れた万次。しかし操練所は閉鎖が決定し、万次と龍馬は京に戻ることになるのですが――ここで登場する勝海舟(目に瞳がないデザインがちょっと怖い)のキャラクターも面白いのですが、強烈なのは、ここで新たに登場する剣士であります。

 女性と見紛う細身細面の、しかし狂的な目つきの剣士――その名は河上彦斎!
 もちろん本作での彦斎はござるなどとは言わず、ある種の合理性を持った、しかし行きすぎたその合理性が傍から見れば狂気の域に達している人物として描かれることになります。……が、佐久間象山殺しの動機があまりにもあまりにもで、やっぱり合理性抜きの狂人かもしれません。

 何はともあれ、成り行きから彦斎と行動を共にすることになった万次は、象山殺しの下手人の一人に間違えられたり、いきなり新撰組に襲いかかった彦斎に巻き込まれたりする羽目にと、相変わらずの受難ぶりであります。

 一方、以蔵の鉄蔵の方は、助け出した町に懐かれ(というか惚れられ)一時の平穏を味わうのですが――しかし逸番隊が「岡田以蔵」を餌に万次と龍馬を誘き出す策を取ったことで、思わぬ展開を迎えることになります。
 二人の前に現れた、山南の腹心として暗躍する怪隊士・大久能。「以蔵」が偽者であることを知る町の口を封じようとする大久能から彼女を守った鉄蔵は、逸番隊から脱退し、万次たちを止めるべく、天王山に向かうことになります。

 一方、まんまと誘き出された万次と龍馬、そして成り行きからついてきた彦斎は、「以蔵」を護送していた京都所司代の兵を蹴散らし、鉄蔵と町に合流するのですが――その時、所司代の兵たちを信じられないような力で惨殺しながら現れた奇怪な影が!
 それこそは、廃人と化して生きていた芹沢鴨を大久野が改造した凶獣・鴨壱號! この規格外の怪物を迎え撃つ万次・龍馬・鉄蔵・彦斎のチームですが……


 と、池田屋事件の後、禁門の変に至る前の短い期間で起きた戦いが描かれるこの巻。正直なところ、正伝以上に万次が傍観者であり、また戦う理由も降りかかる火の粉を払う以上のものはないため、物語が向かう先はまだまだ見えないのですが――彼の目から見た幕末の人物たちの時に等身大の、時にエキセントリックな姿はなかなかに楽しく感じられます。
(立場的に悪役である新選組も、逸番隊と土方以外は「普通の」新選組感が強く、好感が持てます)

 そしてアクションの方は、やはり万次の出番はほとんどないのですが――上で触れた彦斎の新選組襲撃の際に描かれた彦斎vs斎藤一の攻防や、土方と山南が、会話しながら木刀で繰り広げる異様な真剣勝負など、顔合わせの意外性もあって期待以上に楽しめました。(厳しいことをいえば、切れ味はやはり本家並みとはいかないのですが……)


 さて、万次に江戸城地下で対決した鵺一号を思い起こさせた(ファンサービスなのか、はたまた繋がりがあるのか)鴨壱號との決戦はまだこれから。人斬りゴールデンチーム(+龍馬)というべきこの顔ぶれであれば、いかに怪物相手とはいえ、そうそう引けを取ることはないとは思いますが……

 不幸にもこの場に居合わせることになった町の存在が、(名前的に考えて)キーになるようにも思えますが、仮にそうだとしても吉と出るか凶と出るか――気になるところです。


『無限の住人 幕末ノ章』第4巻(陶延リュウ&滝川廉治&沙村広明 講談社アフタヌーンコミックス) Amazon

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