唐々煙『煉獄に笑う』第13巻 クライマックスまったなし かぶき者還る!
ついにオロチが復活し、最終決戦が始まった『煉獄に笑う』。これまで生き残ってきた者たち全てが安土に終結し、それぞれの立場から戦いに参加する中、安土城に突入する佐吉・阿国・弦月。果たしてかつてない強さで復活したオロチを封印することはできるのか――クライマックス待ったなしであります。
山崎の地に激突寸前の秀吉・光秀の軍勢を収めるため、オロチを装った末の双子対決の末に阿国の銃弾の前に斃れた芭恋。しかしそれと時をほぼ同じくして、安土城ではついに真の織田信長がオロチの正体を現すことになります。
安土城の周囲を奇怪なヘドロ状の物質で浸食し、そしてその口からは地形を変えるほどの光弾を放つオロチ。かつてない規模で復活したオロチを封印するためには、人間たち全ての力を結集する必要がある――かくて、秀吉・光秀・さらに家康の軍勢までもが手を組み、オロチの動きを封じるべく戦端を開くことになります。
その間に、安土城に隠された最後の巻物を奪取すべく、たった二騎で急ぐ佐吉・阿国・弦月ですが――彼らを阻むべくその前に現れるのは、森長可に百地海臣。しかし佐吉たちを行かすべく、大谷紀之介が、百地丹波と生き残りの八咫烏たちが駆けつける……
と、クライマックスに相応しい、オールスターキャストの大決戦に突入した本作。その盛り上がりはもちろんこの巻でも変わらず、安土城に突入した佐吉は信長を守るべく立ちはだかる森蘭丸と、そして弦月は一度倒して術を封じたはずの安倍晴鳴と対決することになります。
特に、事あるごとに陰湿な策で佐吉たちを苦しめてきた晴鳴は――前回倒されたときのセリフからして再登場するとは思っていましたが――もはや人間の身を捨ててまでの大暴走を見せることになります。
そしてこの弦月と晴鳴の戦いの中で描かれるのは、本作においてこれまで様々な形で繰り返し描かれてきたもの――生まれや宿命といった自分の力ではどうにもならないものに翻弄された末に、それに溺れ暴走する者と、それを乗り越えてより善き生を歩もうとする者の対峙というべきでしょう。
そして彼らに代表される戦いの中心に存在するオロチは、まさにこうした「どうにもならないもの」の象徴である――そう感じます。
とはいえ、オロチはこれまでのようにその影だけで人々を狂わせ、走らせるだけでなく、現実に化肉して動き出しました。それも、これまで見たことのないような形で。
それを阻める者がいるとすれば、これまでオロチの影に怯えることなく、自分自身の想いを貫き、そしてそれ以上に他者のために生きてきた者しかいません。
そしてそれは天正曇天三兄弟、すなわち「石田三成」をおいていないはずですが――しかしその一人である芭恋は前巻で退場した状況にあります。
が――もちろん、あれだけのかぶき者が、このオールスター揃い踏みの場を黙ってみているはずがありません。そしてこの巻の終盤において、まさに満を持してという形で、ついに芭恋も戦線に復帰することになります。
それがどのような形であるかは読んでのお楽しみですが、まあ実に彼らしい、そして佐吉さしいやりとりには、こちらも笑顔になるしかありません。そう、まさに「煉獄に笑う」しか……
おそらくこの物語も残すところあとわずか。はたして如何なる結末を迎えることになるのか――しかしいずれにせよ、笑顔に終わることは間違いないと、そう信じる次第です。
しかしこの巻の展開を見て、「えっ、前巻のあの場面は――どっち?」と一瞬焦りました。いや、何となくタッチが変わったなあとは思っていたのですが……
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