トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』第3巻 一攫千金!? リアルでシビアな「海賊」たちの姿
実在の海賊にして『最新世界周航記』を記した博物学者、ウィリアム・ダンピアの旅を描く、ちょっとユーモラスで、しかしだいぶシビアな歴史漫画の好評第3巻であります。流れ流れて私掠船に乗ったダンピアが出会った同好の士・リングローズとの別れと再会。そして一行は一攫千金を狙うのですが……
学者を志しながらも環境が許さず、船乗りとなったダンピア。その後、水夫になったり海軍に加わったり、新大陸で働いたりと様々な職を転々とした末に、南海行きの私掠船に加わった彼は、そこでリングローズ青年と出会うことになります。
博物学という共通の興味を持ち、そして海賊らしからぬ穏やかなリングローズと意気投合するダンピアですが、残忍なシャープ船長とは反りが合わず、他の面々と共に船を降りることに。しかし身体を壊していたリングローズは同行できず……
という過去の物語から舞台は再び「現在」に戻り1684年。デーヴィス艦長に率いられ、南米周辺で活動するダンピア一行は、プラタ島で私掠船長スワンの船団と出会うのですが――そこには何とイギリスに帰ったはずのリングローズの姿があったのです。
何故足を洗わなかったのか腹を立てるダンピアに対して、複雑な表情を見せるリングローズ。そんな中、新大陸での収益を積んで、ペルーからスペイン本国に送られるプラタ船が通ることを聞きつけた一行は、パナマ湾内で待ち伏せをすることになります。
しかしプラタ船を待っている最中、リングローズがスペイン軍に捕らわれ、パナマに連行されるという事件が発生。なんとかリングローズを救い出すことはできたものの、それがきっかけで、ダンピアは自分と別れてからリングローズが辿った過酷な運命を知ることに……
食というメインの題材と、デフォルメされた可愛らしい絵柄もあって、ユーモラスでどこか呑気なイメージもある本作。しかしそれはあくまでも第一印象であって、作中で描かれるのは、どこまでもリアルでシビアな私掠船――つまりは「海賊」たちの姿であります。
この巻のメインとなるのは、ダンピアたちを始めとする海賊たちによるプラタ船襲撃計画です。スペイン国王の財宝、すなわち新大陸で一番のお宝を運ぶプラタ船襲撃は、海賊たちにとっても大仕事。
そのために各地の海賊たちがゾロゾロと集まってくる姿はちょっとユーモラスで笑ってしまうのですが、しかしそこから先の展開はなかなかシビアであります。
罠の仕掛け合いと真正面からの海戦、裏切りと助け合い――敵味方が見せる動きは、まさに我々が海賊に対して抱くイメージそのもの。
もちろんその一方で、上で述べたようにゾロゾロ集まった海賊たちが食料のことで喧嘩したり、食料集めに奔走したり――というのも確かに海賊稼業の一面であり、そして本作らしいところでしょう。
しかしそんな中で、リングローズの過去を巡る物語は、まさに海賊という存在の負の側面を描くもの。その内容には、人が負傷する様や生き死にがそれなりに描かれる本作においても、特に生々しく、胸が重く塞がれるものがあります。
いや、それは単に海賊の暴力的側面を目の当たりにしたからというだけでなく、人の運命というものが、どれだけ移ろいやすく、脆いものなのか――それを、運命に翻弄され戸惑うリングローズの姿を通じて、不意に突きつけられたからなのでしょう。
しかしそれでも、人間は前に進むことができる――一人ではなく誰かと手を携えて、今までよりも遥かに大きな、未知の世界へと。リングローズを受け止めるダンピアの姿からは、そんなことも同時に伝わってくるのです。
そして前に進む旅の道は一つではなく、時に二つに分かれることもあります。プラタ船を巡る冒険の後、別の航路を往くこととなったデーヴィスとスワン。はたしてそのどちらと行動を共にするのか――ダンピアの決断の時が迫ります。
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