士貴智志『どろろと百鬼丸伝』第5巻 交錯する人々の運命 対決、妖刀似蛭!
原典を踏まえつつも、大きく異なる内容を描き出す新たなどろろと百鬼丸の物語、その第5巻で展開するのは、邪悪な長者と、妖刀の物語――思わぬ形でその両者と関わることとなったどろろと百鬼丸の運命は、そして再び彼の前に現れるあの男の真意とは――さらに新たな物語が紡がれることになります。
ばんもんでの激突の末に多宝丸を倒したものの、鉄砲水に押し流され、育ての親である寿海と離れ離れとなってしまった百鬼丸。彼はどろろともに、ばんもんでの戦いで朝倉を破った醍醐の侵略に怯える、木曽路領に姿を現すことになります。
兵ばかりを狙う辻斬りが出没するなど荒れる木曽路に往時の勢いはない中で、唯一昔と変わらぬ隆盛を誇る荘園主・サンセウ太夫。なりゆきから百鬼丸とどろろは、その賓客として遇されることとなります。
しかし太夫が妖怪――百鬼丸の仇の死霊よりも下等な存在でありながら、文字通り人間を喰い物にしていると知り、退治せんとする百鬼丸。その一方で、辻斬り――妖刀似蛭を持ち、太夫に深い恨みを抱く男・田之介や、木曽路で人々の治療を続ける寿海と共に暮らす多宝丸も、太夫退治に乗り出すのですが……
大幅にエピソードにアレンジを加えつつ、最終的には百鬼丸と妖刀似蛭の対決が描かれるこの巻。しかし原典では妖刀に憑かれた殺人鬼であった田之介を、意外にもサンセウ太夫に姉を奪われた復讐鬼として描くという、安寿と厨子王モチーフの物語が本作では描かれることになります。
そして同時に強く印象に残るのは、木曽路領にこれまで登場した様々なキャラクターたちが集結し、その運命が交錯していくという、一種の群像劇的趣向であります。
琵琶法師・寿海・多宝丸・助六・火袋そして田之介――いずれも原典に登場したキャラクターたちですが、基本的に一エピソードのみで(多くの場合その死によって)退場していった彼らを、本作は生かし続け、後のエピソードまで登場させる形で、一つの巨大な物語を作っているという印象があります。
それは、原典で描かれた悲劇のほとんどを本作が回避しているということでもあり――そこには賛否があるとは思いますが――原典が連作もの的に独立したエピソードを重ねていったのに対し、本作にはそれまでのエピソードも受け継ぎつつ繋げていく連続ものとしての性質があると言うべきなのでしょう。
そしてこれまでに登場したキャラクターたちが一堂に会するこの巻のエピソードは、その一つの集大成であると感じます。
もっとも、それによって似蛭と田之介の怪物性が薄れた感もあり(彼の手を離れた後の似蛭と百鬼丸の戦いはなかなかおもしろかったのですが)、また百鬼丸自身のドラマ――特に徐々に感覚を取り戻していく彼の戸惑いが、いささか見えにくくなっている感は否めないのですが……
しかしそれでも、百鬼丸と多宝丸、そして醍醐景光を中心に一つの大きな物語が――新アニメ版とはまた異なるアプローチで――描かれていくのを見るのは、大いに心惹かれるものがあります。
この巻のラストでは、この地に巣食う死霊(であろう)あのキャラクターも蠢き始め、まだまだ油断のできないこの木曽路編。引き続き、新たなどろろと百鬼丸の伝説を追いかけていきたいと思います。
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