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2021.08.02

重野なおき『真田魂』第3巻 本領発揮、上田城の戦い! そして東国武士の厳しい現実

 約2年半ぶりの登場となった歴史四コマ『真田魂』第3巻で描かれるのは、武田家滅亡後も相変わらず続く真田家の綱渡り。そんな中で、真田家の晴れ舞台の一つともいうべき第一次上田城の戦いが勃発、そして時代は秀吉による天下統一に向かうのですが……

 武田家で頭角を現すも時勢には勝てず、武田家滅亡に巻き込まれて、生き延びるための苦闘を強いられる真田昌幸。信幸・信繁とともに辛うじて生き延び、織田家に従属した昌幸ですが、その直後に起きた本能寺の変により、天下はさらなる混沌に叩き込まれることになります。
 そんな中で、昨日は上杉、今日は北条、明日は徳川と、次から次へと頼る先を変える昌幸ですが、ついに徳川と決裂し、上田城で徳川軍を迎え撃つことに……

 というわけで、この巻の冒頭では、戦国史に真田家の名を残した第一次上田城の戦いが描かれることになります。寡兵で多勢を迎え撃ち、散々に打ち破るというのは軍記物の定番ですが、これはそれを地で行くような戦い――迫る大久保忠世&鳥居元忠の脳筋コンビを、昌幸の知略が、信幸の武勇が、気持ち良いほどに打ち破ることになります。
 さらに沼田城を守るチート叔父さんの矢沢頼綱も、この機に乗じて襲いかかる北条軍をこれまたコテンコテンに叩きのめし、本作始まって以来の大勝利を真田家が収めるのには、こちらも溜飲が下がる思いであります。

 もちろん、たった一度の攻城戦の結果で戦いの勝敗が決まるわけではなく、徳川との戦いは続くかに見えたのですが――石川数正の寝返りによって徳川軍は撤退、そしてその数正の寝返り先として登場するのが、いまや天下人となった秀吉であります。

 今度は秀吉に従属することになった昌幸ですが、そのためには人質が必要。そこで、上田城の戦いの間は上杉を味方につけるため人質となっていた信繁は、今度は秀吉の人質に――と思いきや、そこで信繁の才(バトルマニアぶり)が秀吉に気に入られ、馬廻りに抜擢されるのだから、人の運命はわかりません。

 一方、信幸の方は、半分は牽制のためとはいえ、激闘を繰り広げた徳川側に気に入られ、本多忠勝の娘・稲姫を正室に迎えることになり、両手に花という状態に……


 と、戦国時代が終焉に向い、天下が次のフェーズに移る中で、真田家の人々もまた、新たな状況に否応なしに放り込まれる姿が描かれるこの第3巻。

 そしてそれと同時に描かれるのは、徳川・北条といった東国武士の世界でもあります。
 作者の時代四コマは、本書と同時発売の『信長の忍び』も『軍師 黒田官兵衛伝』も、東海から西が中心という印象がありますが(『政宗さまと景綱くん』は東国というより北国なので……)、もちろんその間、東国でも武士たちが戦い続けてきたことは言うまでもありません。

 そしてこの時期、その中心となったのは徳川家であり、北条家であるわけですが――奇しくも(?)真田家とは幾度も干戈を交えた両家の姿も、本作では大きなウェイトを持って描かれることになります。
 特にこの巻の後半では、北条家の現当主・氏直が、ほとんど主役キャラ級の存在感で描かれることになるのですが――そこで描かれるのは、真田家とはまた異なる形ではあるものの、同様に家を残すために苦心する、武士の世界の厳しい現実なのであります。

 一方、そんな東国ににらみを効かせる秀吉の側も、決して戦いのみを望むのではなく、むしろ外交によって――真田の従属もまさにその一環ですが――天下統一を目指していたわけで、そんな秀吉政権の姿を中枢近くにいた信繁を通じて描くのも、また本作の面白いところだと感じます。


 しかし、残念ながら(そして信繁には幸いなことに)まだまだ戦国の気風が残るのがこの時代であります。
 そんな気風が暴発する形で始まることとなった豊臣家と北条家の戦いの行方は、そして思わぬ形で、その戦いのある意味中心となった真田家の運命は――おそらくはまたしばらく次の巻を待つことになるのが恨めしいほど、この先の展開も楽しみなのです。


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