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2021.09.28

叶輝『残月、影横たはる辺』第2巻 多士済済、公儀助太刀人!

 明治の世に至り、禁止となったはずの仇討ちを高額な報酬で請け負う警視庁の「公儀助太刀人」鬼塚千明を主人公とするユニークな明治ものの第2弾であります。仲間たちとともに公儀助太刀人として活躍する千明ですが、ある人物の死が激震を起こすことに……

 川路利良大警視の下、特命を以て仇討ちの助太刀を行うエリート集団・公儀助太刀人――その一人である千明が、同僚の天野一月とともに依頼を受けたのは、華族の令嬢・不二原八重からの仇討。
 彼女の知人の華族の青年が、父親とともに芳町の花魁・高尾に殺され、花魁は焼身自殺を遂げようとするも、辛うじて生き残った――そんな事件の真相を探ってほしいという依頼を、千明は不承不承引き受けることになります。

 敏腕書記官の柊憧子、警視庁の青年刑事・霧島駒之助の協力を得て調査を開始した千明と一月は、高尾が無実であると確信。しかし既に彼女の身柄は移され、弱った体には耐えられぬほどの刑が下されるというではありませんか。
 刑の執行を止めるため、千明たちは破天荒な手段に出ることに……


 ということで、前の巻ではほとんど一人で行動していた千明の仲間たちが登場、チーム助太刀人とでもいうべきメンバーが揃うこの第2巻。
 伊達男で遊び人の人斬りという千明のキャラもなかなか強烈ですが、元は大名家の姫君であるガンマンの(そして酒が入るととてもここでは書けないような状態になる)一月、実は腐女子の憧子、そしてこの巻の途中からの登場となるリーゼントで商魂逞しい薩摩隼人の嵐山龍之進と、何とも強烈なキャラクターたちがここに集うことになります。

 この巻の中盤、千明の「実家」である酒造を舞台にした宴会エピソードのように、この多士済済にさらに川路大警視まで加わっての大騒ぎなど、特にキャラクター面の楽しさは大きく、前巻の重くハードな印象とはまた違った本作の側面を見ることができます。

 もっとも、公儀助太刀人の存在自体は、描かれば描かれるほど首を傾げたくなるのも事実で、設立したばかりで財源不足の警視庁のために高額で仇討ちを請け負うのはアリなのだろうか。と悩まされます。
 必ずしも血腥い仇討だけでなく、後妻討ちの助太刀も務めるというのは、ちょっと愉快な設定ではありますが。(そもそも後妻討ちがそこまで多いのか、というのはさておき)

 またこれはこの巻の終盤の展開ですが、更生施設の受刑者が作った工芸品の卸売りの手伝いにまで、助太刀人が関わるというのも、うーんというところで――いや、確かにそれも一種の助太刀ではあるのですが、第1巻の印象からするとやはり大きくイメージが変わるところではあります。
(もっとも、このエピソード自体、その不審さが一つのキーになっているのですが……)


 何はともあれ、メンバーも揃い、向かう所敵なしという印象になってきた公儀助太刀人ですが、しかしここで彼らに大きな試練が訪れることになります。
 本作の舞台は明治12年――この年、川路大警視は、その任の途中で急死。千明たちは大きな後ろ盾を失うことになるのです。

 川路の後任である大山巌(史実)は、公儀助太刀人にこれまでどおりの活動を認めるものの、その動きに不信感を抱く千明。はたして大山は怪しげな華族と組み、非社会性人格者――つまりは潜在的に犯罪問題行動を起こす可能性のある人間の更生の一環として、彼らを警察組織に迎え入れるというではありませんか。

 色々な意味で仰天の展開ですが、この巻の終盤では、それ以上にさらに意外な展開が描かれることとなります。龍之進たちと共に行動することとなったその元・非社会性人格者・岡本喜一は、千明と出会うや、ある告白をするのですが、その内容というのが……

 内容的にはラスボスになってもおかしくないような相手ですが、しかしその態度を見ていると、単純に千明の敵とも判じ難い岡本。
 この巻では色々と不思議な設定に驚かされましたが、ちょっと先が読めないこの展開は歓迎したいと思います。


 ちなみにこの巻の裏表紙に書かれている「びぃえるノ波動ヲ感ジル」という強烈なセリフは、高尾の事件で憧子が発した言葉。こういう珍推理は外れるのが定番ですが、これが何と……(これもこの巻で驚かされた点の一つではあります)


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