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2021.10.27

白石純『魍魎少女』第7巻 最後の戦い 交錯する共感と最大の秘術と

 七つに裂かれた肉体を求める不死者と、その弟子の戦いもいよいよこの第7巻にて完結。不死者たる雪之丞と八房、その弟子である林檎丸とチカ――ついに余人を交えず激突する両者のその結末は、そして八房の秘められた想いとは……

 数百年前にともに不死者となりながらやがて道を違え、八房によってその肉体を七つに裂かれた雪之丞。彼が作り上げた魍魎少女・林檎丸の長きに渡る戦いの末、大正時代に至り五つまで体は集まり、そして女学校の地下に埋められていた首も、ついに雪之丞のもとに戻ることとなりました。
 そこに急襲した大陸からの第三勢力・饕餮との死闘も決着し、これまでの戦いを助けてきた協力者たちも遠ざけて、ついに当事者たちの最後の戦いが始まることになります。

 無数の魍魎を、すなわち異能力を自在に操る雪之丞と八房、そして不死身の肉体と凄まじい戦闘力を持つ林檎丸とチカ。師匠同士と弟子同士、それぞれ天敵というべき者たち――いよいよエスカレートしていく人知を超えた者たちの死闘ですが、しかしその戦いには、宿敵同士のそれとは言い難い色合いが交じることになります。

 それはある種の共感――友情とすら呼べるような感情。もちろん、かつては親友同士であった雪之丞と八房の間に、それがあるのは当たり前といえば当たり前ですが、林檎丸とチカは、今の師匠同士の仲を引きずって敵同士でしかないはず。
 しかし、そんな二人の関係性の変化は、これまでの物語の中で少しずつ描かれてきました。最初は純粋な敵として、次にはそれぞれ全力を発揮してやり合える好敵手として。そして今はこの世に二人とない存在として。

 それでも、林檎丸はチカを殺す(「倒す」ではなく)しかありません。何故ならば、チカを不死の存在たらしめている心臓こそは、雪之丞の最後のパーツなのですから……


 そんな複雑な想いを込めた弟子たちの戦いの一方で、師匠たちの戦いも、また別の複雑な様相を呈することになります。

 この戦いが始まる前に、チカが敵であるはずの雪之丞に対して託したもの――それは八房の最大の秘術ともいうべき、魍魎第二千番「落日」を使い続けることを止めてほしいという願い。
 「落日」自体は、以前に米津先生の能力で空高く浮いてしまった家が落下するのを止めるのに使われましたが――その際は時間停止系の能力と思われた、この「落日」の真の能力とは何なのか、そして何故チカはそれを止めるように願ったのか?

 それはここでは伏せますが、まさにそれは本作最後の最後の大ネタ(初登場時に伏線もきっちりと示されていたのに驚かされます)というべきもの。もっとも、それであってもいささか唐突という印象はなきにしもあらずですが――しかしこれは展開的にやむを得ないかもしれません。

 少なくとも、ここに来て、本作の舞台となるのがこの時代である意味を、はっきりと示してみせたのですから……
(逆に言うと、もっと早く明らかになっていたら結末が読めてしまったということでもあるのですが)


 そして物語は一つの終わりを迎えます。その先にあるもの、それは――本作の終わりにある意味相応しいものといえるでしょう。彼らは今でもどこかで賑やかに戦っている――そう思えるのは、なかなかよいものであります。


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