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2021.10.29

『弁慶外伝 沙の章』 日本から大陸へ! 時空を超えた元寇伝奇

 先日紹介した『弁慶外伝』の続編に当たる作品――ハードをスーパーファミコンに移して1992年に発売された本作は、元寇を背景に、その背後で繰り広げられた語られざる戦いを描く物語。日本に始まり、舞台は中国大陸にまで時空を超えて広がる、稀有壮大な物語であります。

 文永11年、大軍で襲来し九州を蹂躙したものの、突然吹き荒れた暴風によって壊滅的な打撃を受けて撤退を余儀なくされた蒙古軍。その背後に日本側の強力な呪術の存在を察したフビライ・カンは、配下の四界将の一人・呪魂を派遣――北条時宗も全国の法力者でこれを迎え撃つも、多くの犠牲を出すのでした。
 そして文永の役から2年後、四国の修門砦で修行を積んでいた主人公・不動(デフォルトネーム)は、帝の命により戦いに加わるべく都に向かおうとするも、その矢先に砦は襲撃を受けて壊滅。不動も窮地に陥ったところを、長門の練武館からやって来た戦士・巳陰(みかげ)と常世(とこよ)に救われることになります。

 呪魂の追撃から辛うじて逃れた三人は、呪魂を倒して元の再襲来を阻むべく、日本中を奔走。数々の冒険の末、かつて源義経の手によって眠りについた不死身の戦鬼・弁慶を復活させ、ついに呪魂に挑むのですが……


 と、文永の役と弘安の役の間の時期を舞台とする本作。そもそも鎌倉時代を舞台としたゲーム自体(前作のような義経・弁慶を題材としたものを除けば)珍しいのですが、元寇を題材にしたものは、それこそ本作のほかは昨年の『Ghost of Tushima』くらい――というのは大げさかもしれませんが、それくらい希少であることは間違いありません。

 さて、冒頭に述べたとおり本作は『弁慶外伝』の続編ですが、物語自体は直接の繋がりはなく、前作で何処かへ旅立った義経と弁慶のその後が語られる程度であります。
 とはいえ、前作で伊勢三郎が率いていたかすみの一味が、ほとんど忍者集団のかすみ一族になっていたり、前作の主人公・鬼若が法眼に育てられた林省寺が廃墟となっていたりと、前作を知っていればニヤリとできる場面がいくつかあることは間違いありません。

 そして物語的には前作以上に奔放に、如何にも伝奇的な陰の歴史が語られていくわけですが――しかし本作は中盤で思いもよらぬ展開を見せることになります。

 弁慶とともに呪魂を倒し、日本を救ったかに見えた不動たち。しかしこの戦いの根源が、単なる元による日本侵略というものではなく想像を絶するほど根深いことを知った不動たちは、中国大陸に渡り、伝説の地・崑崙を求めて旅をすることになります。
 その前に立ちふさがるのは残る三人の四界将たち。そしてやがて物語は時空を超え、邪馬台国まで遡る奇怪な因縁が語られることになります。一度は義経が身を以て封印した魔を滅ぼすため、不動と弁慶たちは死闘を繰り広げることになって……

 と、鎌倉時代の日本を舞台とするだけでも珍しいのに、本作はこの時代の中国大陸を舞台にするというさらに珍しい展開をすることになります。フビライだけでなく、バヤンや古源邵元といった実在の人物まで登場する一方で、ほとんど既存の神話伝説を用いないオリジナルの伝奇世界が展開されるのに驚かされます。
 ――が、個人的にはオリジナルになりすぎて(そして中国に渡ってからは舞台に馴染みがなさすぎて)もう伝奇ものというよりファンタジーじゃないかな、という印象があるのも正直なところではあります。

 また、冷静に考えると物語の処々に矛盾というか不明点があったり(結局、メインキャラの一人・鳴沙にまつわる設定が今ひとつ未消化だったり等)、ちょっとすっきりしない部分もあって、ゲームとしては前作よりもはるかに完成度が高いにもかかわらず、賛否が分かれているのも、理解できるところです。

 ちなみにゲーム性でいえば、前作の高すぎるエンカウント率やバフデバフがほとんど役に立たない点などは解消されているのですが、敵味方ともポンポン連続攻撃やクリティカルヒットを出すので、戦闘が安定しないのがストレスが溜まる点。
 いや、一番ストレスが溜まるのは、タイトルロールであり物語的にも重要な位置づけのはずなのに、戦闘ではNPC扱い、しかもランダムにしか攻撃しない(攻撃しない時の方が多い)弁慶の存在なのですが……


 と、最後に一点言及すべきは、本作のイメージビジュアルでしょう。前作は本宮ひろ志が担当していましたが、本作では何と山形厚史が担当。
 説明書や攻略本で見ることができるイラストは実に見事で、これだけでも何とかしてご覧いただきたい逸品であります。


『弁慶外伝 沙の章』(サンソフト スーパーファミコン用ソフト) Amazon


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