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2021.11.04

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第5巻 まさかの出現!? そして神風吹く……?

 いよいよ朽井迅三郎が参戦し、博多に襲来した蒙古軍を撃退した日本武士団。しかしただでさえ守るに難い地において、限られた戦力を博多と筥崎に分散させている状況では、不利は目に見えています。これに対して迅三郎が取ったとんでもない手段とは何か。そしてついに大風が蒙古船団を襲うことに……

(この巻の内容の詳細に触れますのでご注意ください)
 対馬から大胆にも蒙古船に潜り込み、ついに博多に辿り着いた迅三郎。そこで悪徒・荒蜘蛛衆の頭目を務めていたかつての郎党・ウカガミ藤太と再会した迅三郎は、荒蜘蛛衆を手勢に加えると、蒙古の猛将・ウール三兄弟の首目掛けて一直線に突撃を敢行――ついに三兄弟の一人の首を取ってみせる……

 と、朽井迅三郎ここにあり、といわんばかりの彼の活躍が描かれた前巻ですが、しかしもちろんこれは日本と蒙古の戦においては、小さな勝利に過ぎません。
 久々に本編に登場し、この巻の表紙となった対馬の照手姫の下で、迅三郎が幾度も局地的な勝利を収めたものの、結局は大軍の前に突き崩され――全滅こそ免れたものの――壊滅に近い打撃を受けたことを思えば、博多がその二の舞にならないとは言い難い状況であります。

 しかしそんな状況下でも、互いの勢力争いと牽制のために、博多と筥崎に陣を分け、戦力を分散させている日本武士団。少弐景資が対馬に約束した援軍が結局送られず、今なお苦しむ対馬の人々を救えぬ原因の一つが、そんな武家同士の「政治」にあると聞かされて、迅三郎が面白かろうはずがありません。
 いや、何よりも戦力の分散は、彼が最も求めてやまぬもの――勝利にとっては障害でしかありません。

 この状況を打破するために、迅三郎が打った手とは――筥崎宮を焼く。


 いやいやいや、筥崎宮といえば宇佐・岩清水と並んで三大八幡宮の一つ――八幡宮だけに武家の信仰も厚い神社であり、精神的支柱とも言うべき地。そしてそれ故に(それを口実に)少弐景資の兄・少弐経資と、大友頼康が守りを固める地であります。
 それを焼くというのがいかなる意味を持つか、迅三郎が理解していないはずはありませんが、それでも彼にとっての優先順位は明快であります。

 かくて、大胆にも筥崎宮に乗り込んだ迅三郎は、神職を追い出し、そしてついに筥崎宮に火を……

 が、ここでさらに想像を絶する展開が描かれることになります。筥崎の地で迅三郎の前に現れ、筥崎宮の中にまで付いてきた歩き巫女の女――気触れとも神憑りとも見えたその巫女を媒介としたかのように、迅三郎の前に、巨大な女性の姿が現れたではありませんか。
 それこそは、筥崎宮の祭神の一人・神功皇后(えっ)。かつて攻勢を強めた三韓に対して逆に攻め込み、これを平らげたという伝説の女性――いまの迅三郎にとってはむしろ頼りたい相手のようにすら思えます。

 ……が、そこで安易に神頼みしないのが鎌倉武士。自分は自分の道をいくと言わんばかりの迅三郎ですが、天がそれを嘉したのか、単なる上昇気流のいたずらか、瞬く間に天候は崩れ、そして吹き荒れる暴風!
 そう、ついに神風は吹いた、のですが――その結果を示す見開きのインパクトには、やられた! というほかありません。


 というわけで、筥崎宮を焼くところで驚いてみればそれは序の口、その後も神功皇后は出てくるわ、神風は吹くわと、いきなりとんでもない展開の連続だったこの第5巻。
 これで蒙古を撃退してしまったらさすがにマズいのでは、と心配してしまいましたが、さすがにそれはなかったものの、なるほど天罰覿面というべきか――などと呑気なことを行っている場合ではない危機が訪れることになります。

 はたして迅三郎と日本武士団の運命は、そして久々に登場した、元の義経流の使い手と迅三郎の対決の行方は――いよいよ博多編も佳境であります。


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