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2021.11.09

手代木史織&手代木正太郎『不死斬り夢一』後編 超伝奇活劇、そして新たな時代を生きる武士の物語

 手代木史織と手代木正太郎による初の姉弟タッグの伝奇時代活劇漫画、その後編であります。人の良さげな西洋絵師、実はその過去は不死斬りと異名を取った洋術同心・玉橋夢一――その前に不死者と化して現れた河上彦斎との対決の行方は、そして夢一の抱えた想いとは……

 明治5年、弟子の琴音とともに西洋画に勤しむ絵師・夢一。しかしある日突然、二人を人間とは思えぬ怪物めいた男が襲い、そして夢一は相手を一撃で焼き尽くすのでした。
 その頃、不死者を使って明治政府転覆を目論む不平士族は、黒魔術によって河上彦斎を復活させて……

 という前編を受けてのこの後編は、琴音が夢一の家で目覚める場面から始まります。悪夢から目覚めてみれば、隣の部屋から聞こえてくるのは夢一と見るからに曰くありげな警官(制帽のデザインが何だかスゴいんですが……)の会話。
 ついその内容を耳にしてしまった琴音は、夢一が元幕府お抱えの洋術同心・不死斬り玉橋であったことを知ってしまうのですが――呆然とする彼女に襲いかかる怪しの影!

 駆けつけた夢一たちの前に遺されていたのは、「小伝馬町ニテ待ツ」とのメッセージ――そう、河上彦斎が夢一を誘き出すために琴音を攫ったのであります。夢一は剣など二度と握らないと言う琴音に、夢一が冷酷な殺人鬼だと告げる彦斎。そしてそこに現れたのは……


 というわけで、ヒロインの窮地に何だかもう日本代表の神の鎧をまとった戦士のような出で立ちで駆けつけた夢一と、彦斎のバトルが繰り広げられるこの後編。
 夢一が黒い西洋剣から放つ不死殺しの炎・地獄(いんへるの)の火を操れば、彦斎は瞬間移動のような勢いで地を走っての抜刀術(ちょっとドキドキ)を放ち――と、超人同士のバトルが繰り広げられることになります。

 が、少々意外だったのは、この先が、舐めていた絵師が殺人剣士だった件――という展開とは少し異なり、夢一の中にあるある種の揺れが描かれることでしょう。
 そう、彼は琴音を救うために昔のように剣を手にしたものの、心までもが昔に戻ったわけではなく、むしろそこには躊躇いと迷いが見られるのです。

 その意味では、夢一は中途半端な存在なのかもしれません。あるいは一度死んでもなお、己の道を曲げず貫こうとしている彦斎の方が、武士としては潔いのかもしれません。
 それでも――本作は琴音を通して、彦斎の「生き」方を肯定してみせます。たとえ過去がどうであれ、それを乗り越え、今を生きようとすることにこそ、意味もあれば価値もあると……


 明治という時代を舞台に、過去の自分の所業を背負いながらも、それでも新しい現在を生きようとする武士を描く時代劇は、これまで様々に描かれてきました。本作は、バリバリの伝奇ヒーローものであると同時に、こうした物語の一つでもあるといえるでしょう。

 そしてそこに、明治まで生き延びながらも結局処刑されることとなった――ある意味、明治の世に適応できなかった武士の象徴ともいえる彦斎が、本作の敵役である意味があったかと、感心させられた次第です。
(まあ、もう一つ意味があるような気もしますが、それはマニアの深読みということで)

 もっとも、不死斬りであった夢一が、何故その過去を捨て、今の道を選んだのか――その理由や葛藤は、十分には描ききれていないと感じます。とはいえそれは、この前後編という分量を考えれば仕方ないというべきでしょう。

 不死斬りの妖剣士が活躍する超伝奇活劇として、そして新たな時代を生きる武士を描く時代劇として――夢一の物語は、これだけで終わらせるのはあまりにも勿体無いというほかありません。
 このコンビによる続編を是非とも読みたいものです。


『不死斬り夢一』後編(手代木史織&手代木正太郎 「週刊少年チャンピオン」2021年49号掲載) Amazon

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