廣嶋玲子『妖怪の子、育てます』 第二部スタート! 弥助、「親」になる!?
全十巻で大団円を迎えた『妖怪の子預かります』シリーズの第二部がいよいよ始まりました。前シリーズから数年後、妖怪の子預かり屋として、そして一人の「親」として奮闘する弥助と、その「子」千吉を中心に、にぎやかでおかしくも、恐ろしい物語が始まります。(『妖怪の子預かります』の結末に触れますので、ご注意下さい)
幼い頃に母親を失い、かつて強大な力を誇っていた元妖怪・千弥に拾われ、育てられた弥助。ふとしためぐり合わせから妖怪の子預かり屋を営むことになった弥助は、大家のドラ息子の久蔵や、千弥と因縁浅からぬ東の妖怪奉行・月夜公と共に様々な事件を経験することになります。
そんな中、ある邪悪の妖怪の呪いから弥助を救うために禁忌を破った千弥は、その代償として全ての記憶を失い、赤子として生まれ変わることに……
という前作の結末の六年後から始まる本作。以来、男手一つで千吉と名付けた赤子を育ててきた弥助は、その傍らで妖怪の子預かり屋を続け、今では立派な青年に成長しています。
前世の記憶を持たない千吉ですが、しかし弥助を慕う気持ちは相変わらず。もちろん弥助の方も千吉には甘く、丁度かつての千弥と弥助が入れ替わったような状態であります。
化蛇族の姫と結ばれ、こちらも立派な大人となった久蔵の双子の娘・天音と銀音も、姉弟同然に育った千吉を引っ張り回す状態。そこに預かり屋を訪れる妖怪たちも加わって、弥助と千吉は騒々しい毎日を送ることに……
というわけで、人間関係に大きな変化が生まれたものの、弥助と妖怪たちを中心とする騒動を描くという基本は変わらない形でスタートしたこの第二部。
もちろん弥助はかつてのような守られるばかりの子供ではなく、これまでのように妖怪の子供たちと騒動を引き起こすこともなく――逆にまだまだ未熟な千吉を、保護者として見守ることになります。
本書ではそんな弥助と千吉の日常(?)として、川から片手が流れてきたのをきっかけに妙な妖怪につきまとわれたり、化け雀の若様を預かってダイエットに奮闘したりと、様々な騒動が描かれるのですが――メインとなるのは、全体の6割近くを占める、奇怪な「神」との対決編であります。
ある日、町に遊びに出かけた千吉と天音・銀音の姉妹。しかし千吉の眼の前で姉妹は不気味な黒い影に飲み込まれ、姿を消してしまったではありませんか。この一件を解決のため、人界を管轄する妖怪奉行所・西の天宮の奉行・犬神の朔ノ宮が捜索に当たるのですが、そこで思わぬ壁にぶつかることになります。
二人を拐った黒い影の正体は、「虚神」――人間の強い想いによって生み出された神。こうした虚神はやがて力を蓄えると自らの存在を維持するために人を支配し、贄を集め出すようになるのであります。
しかし今回双子を拐った虚神は、自分の周りに結界を張り巡らせ、朔ノ宮たちが動けば、それを察知した虚神によって、双子の身に危険が及ぶかもしれないというのです。
かくして、双子を拐った者どもの村に忍び込み、虚神の核を壊すこととなった弥助と千吉。しかし異様な魔所と化した山中のその村で二人は離れ離れになってしまい……
人が自分の欲望を叶えるために超自然的存在に頼り、そしてそこから得られるものを守るため、非人間的行為を行うようになる――それは、作者の『鵺の家』『狐霊の檻』などでも見られたシチュエーションであります。
たとえそこから得られる利が一時のものであり、そして自分たち以外の者に害を為す――いや、自分たち以外の者を犠牲にするとわかっていても、その利にしがみつく者たち。そのおぞましく醜い(そして同時にやるせない)姿は、本作においても強烈な形で描かれることとなります。
そしてそれの対極にあるのが、弥助の姿であることはいうまでもありません。たとえ人であろうと妖怪であろうと分け隔てることなく接し、大切なものを救うためであれば自らの命を賭ける――人間の善性の象徴というべき弥助の姿は、たとえ成長した今でも変わることはありません。いや、千吉の「親」となったことでより強まったその姿勢は、微笑ましくも何とも気持ちよく感じられるのです。
何はともあれ、いよいよ始まったシリーズ第二部。朔ノ宮という気になる新キャラクターもさることながら、今はまだその力を発揮していない千吉がどのように育っていくのか、そんな千吉に弥助や月夜公がいかに接していくのか、気になること、そして楽しみなことは尽きません。
(にしても千吉に頼られた月夜公の嬉しそうな顔が目に浮かびます……大丈夫か本当に)
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